令和7年度市政運営の所信と主要施策の概要(音声読み上げ用ページ)

更新日:2025年02月13日

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令和7年度市政運営の所信と主要施策の概要

令和6年第2回つくば市議会定例会 令和7年2月定例会議の開会に当たり、令和7年度の市政運営に対する所信を申し上げます。

はじめに

世界には多くの共通課題があります。少子高齢化、気候変動、農業と食料安全保障、働き方改革、ジェンダー平等、そして貧困と格差、これらの問題をすべて解決している都市はまだありません。だからこそ、つくばには、市民とともに新たな挑戦をしながら、市民生活の課題を解決し、市民が幸せに安心して暮らせるまちへ進んでいく使命があります。つくばで市民が幸せになるモデルを作り、世界にヒントをもたらしていくことが、私たちが掲げる「世界のあしたが見えるまち」というヴィジョンです。
このヴィジョンを実現するため、これまで「誰一人取り残さない」という強い思いを胸に、市民、事業者、議会そして職員と対話を重ね、「ともに創る市政」に全力で取り組んできました。
つくばエクスプレス沿線地域を中心とした児童生徒の急増に対応するため、小学校・中学校の新設をはじめ、新たな給食センターの整備、待機児童解消に向けた保育施設や児童クラブの拡充を進めています。また、環境省の脱炭素先行地域に選定されたつくば駅周辺地区においてはカーボンニュートラル実現に向けた事業を推進するとともに、安全・安心で持続可能なインフラの整備・維持管理を実施しています。
加えて、地域やコミュニティにおける多様な「つながり」をつくるため、既存の公共施設等を利活用し、誰もが気軽に立ち寄り、交流し、居心地よく過ごせるたまり場や居場所の拡充に力を入れるとともに、周辺地域やクラフトライフなどつくばの魅力を積極的に発信することで、市内全域に新たな人の流れとつながりを創出します。
さらに、スーパーサイエンスシティ構想が目指す社会の実現に向け、先端科学技術の市民生活への応用や、障害者・高齢者支援、子育て環境の充実など、市民が「今」必要とする様々な施策を展開し、「市民の多様な幸せづくり」を推進しています。
そして、令和5年に発表された「人口増加率全国一位」に続き、令和6年に実施された民間の研究所等による調査やランキングにおいてもつくば市は「選ばれるまち」として高く評価されるに至っています。
今後もつくば市が「選ばれるまち」であり続けられるよう、たまり場や居場所づくりをはじめとする、市民の幸せにつなげるための施策をさらに充実させていくとともに、次世代によりよい環境を引き継いでいくため、さらに先のつくばの未来を見据え、つくばのまち全体の価値を最大限に高めるための施策運営を力強く推進していきます。
令和7年度は、市長3期目として掲げた 99 項目の公約とその土台となる「全世代・ 全市民の幸せ」、「科学技術を使った課題解決」、「持続可能な 15 分都市」、「変革し続け、市民と共創する市役所」、「『緑』への転換(グリーン・シフト)」という5つの考え方に基づき、「世界のあしたが見えるまち」の実現に向け、市民第一の市政に全力で取り組んでいきます。

令和7年度当初予算(案)の概要

それでは、令和7年度当初予算案の概要について説明します。
令和7年度当初予算は、「価値ある未来へつなぐ予算」をテーマに掲げました。
予算編成に当たっては、つくば市未来構想に掲げる未来像の実現に向け、つくば市戦略
プランにおける施策及び「市長公約事業のロードマップ」における6つの柱に、重点的かつ優先的に対応しました。
一般会計 1273億2500万円
特別会計 369億5761万4千円
水道事業会計 115億2851万4千円
下水道事業会計 175億6304万1千円
合計 1933億7416万9千円 としました。
一般会計は、前年度当初予算と比較し、155億2100万円、13.9%の増と過去最大規模の当初予算額となりました。
歳入のうち市税については、人口増加等に伴う市民税や固定資産税の増加により、7.8%の増を見込んでいます。
歳出については、地域と連携した学校施設の在り方の検討、給食レストランを含む地域のコミュニティ拠点や児童発達支援センター、陸上競技場の整備、道の駅の整備検討、気候市民会議からの提言の実現に向けたロードマップの推進などを通して、まち全体の価値を高めるための施策運営を進めていきます。

令和7年度の主要施策

次に、令和7年度の主要施策について説明します。

(1)徹底した行政改革 さらに市民第一の市政へ

まず、「徹底した行政改革」としては、地域の困りごとを新しい技術を使って解決することを目指し、科学的根拠に基づく「たしかなデータ」や「やさしいテクノロジー」で政策を立案・実行し市民の幸せを創ります。また、常に市民が必要としていることを掴み取り適切な施策を生み出せるよう、職員のさらなる意識変革と組織開発を進めます。
具体的な取組としては、公共交通機関の利用時に、IC カードをタッチすることなく運賃等の事後決済を可能にするハンズフリーチケッティングの実証実験を行うとともに、公職選挙でのインターネット投票導入に向け、市民が様々なインターネット投票を体験する機会を増やし、その信頼性や使い勝手を高めていきます。
それらを下支えするため、スマートフォンを保有していない、または使いこなせない高齢者に対して、引き続きスマホ教室を実施し、情報格差を解消していきます。
また、デジタル化による書かない、待たない、回らないワンストップ窓口を導入するとともに、法令や業務の性質上職員にしかできない業務に注力するため、税務に関する定型業務を外部委託し、市民サービスの向上を図ります。
さらに、コーチングの手法を活用し、自ら考え行動できる主体的な職員の育成と、心理的安全性の高い組織を目指します。

(2)安心の子育て・教育 こどもとママパパにもっとやさしい子育て環境

次に、「安心の子育て」としては、こどもや保護者の多様な居場所の創出や、一人ひとりのニーズに合わせた学びの支援など、こどもと保護者を包括的に支援する事業を拡充します。
また、若い世代への新たな施策も開始します。
具体的な取組としては、筑波北部公園をインクルーシブ遊具が充実した公園にするために、利用者の声を聴きながら整備内容を検討することで、様々な人が集い交流できる居場所を創出します。
また、学校や教員への伴走支援や授業研究を深めるための人的支援の拡充により学校現場での教育大綱の実現を加速させるとともに、不登校児童生徒への継続的な支援や放課後に多様な体験や活動ができるアフタースクールモデル事業の本格運用を通して、児童生徒一人一人が幸せな人生を送れる環境を整えます。
さらに、データに基づいた施策として、共働き世帯が増加していることから、一部の公立幼稚園での平日預かり保育の試行的な実施やこれまで政策の空白に近かった若者政策として中高生や若者が健康や悩みを相談できる場や体制の整備を進めます。

(3)頼れる福祉 すべての人が自分らしく生きる社会

次に、「頼れる福祉」としては、高齢の人や障害のある人、困難を抱えるこども、子育て中の人、病気がある人など、様々な世代の市民が、住み慣れた地域で自分らしく生活し、すべての人が幸せを実感できる社会の実現を推進します。
具体的な取組としては、高齢者の積極的な外出や社会参加を促進し、人生 100 年時代をすべての人が元気にいきいきと暮らせるよう、地域のたまり場となる施設をさらに充実させていきます。令和7年度は、茎崎老人福祉センター入浴施設のリニューアルを進めます。認知症の高齢者に対しては、市が個人賠償責任保険に加入することで、安心して暮らしていけるよう支援します。
また、障害者の自立した生活を支援し社会参加を促進するため、視覚障害や聴覚障害のある人が情報にアクセスしやすくするための条例を制定するとともに、市内の大学や専門家とも連携し、市民への理解を広げる取組を進めます。
発達に不安があるこどもたちについては、成長過程に応じ、切れ目なく支援を行うための児童発達支援センターの開設に向けて、春日庁舎の改修工事を進めます。さらに、医療機関の開いていない休日や夜間のこどもの急な発熱などに対応するため、アプリを活用したオンライン診療を実施します。
がん患者及びその家族に対しては、支援を行う団体に対する活動費補助を拡充し、病気を有する人や家族が住み慣れた地域で安心して自分らしい生活を送ることができるよう支援します。

(4)便利なインフラ 快適で持続可能なインフラ整備

次に「便利なインフラ」としては、安全・安心で持続可能な生活環境の実現を目指し、公共交通の課題解決に向けた取組を進めます。また、交通需要への対応や道路網の整備を進め、市民の生活を支える強固なインフラを構築します。
具体的な取組としては、より利便性の高い持続可能な公共交通の実現や地域公共交通が抱える路線バスの減便対策・運転手不足の解消に向け、自動運転バスの社会実装に向けた取り組みや地域連携公共ライドシェアの運行を行います。
また、公共交通網を補完し、健康や快活に繋がる楽しい近距離移動手段として、シェアサイクル「つくチャリ」の利便性を向上させることで、通勤時間帯を始めとした道路渋滞の緩和など、市民の移動手段として自転車への転換を後押しします。
さらに、市内の渋滞対策として渋滞発生個所の交通量等の調査を行い、課題解決に向けた検討を進めるとともに、都市の生活基盤を支える道路網を構築し円滑な交通を確保するため、台町萱丸線等をはじめとする都市計画道路の整備や新規工事着手に向けて調整を着実に進めていきます。
そして、持続可能な都市の発展に向けて、都市のヒートアイランド現象を緩和する街路樹、緑地や公園、また、洪水リスクの低減や水質改善の役割を果たす雨水を自然に吸収させるための透水性舗装や雨水ガーデンなど、都市の機能を向上させるグリーンインフラを充実させるため、緑の基本計画改定を進めます。

(5)活気ある地域 つながりを力に活気ある地域へ

次に、「活気ある地域」としては、地域経済の活性化や地域雇用につながる施策を着実に進めるとともに、多世代の活動・交流の場となるコミュニティ拠点の創出や、地場産物の活用拡大を推進することで、地域の特色を生かした活気あるまちづくりを進めます。
具体的な取組として、農業に関しては、地場産物を使用したメニューや市内で醸造されたお酒を提供する地産地消店などの情報を効果的に発信するとともに、農産物イベントの開催や直売所のPR等を行い、地産地消の機運を高めていきます。
また、貯蔵庫及び加工施設、市民向け給食レストラン、学校ランチルーム等を備えた複合的給食施設の整備を進めることで、地場産物の活用拡大やフードロスの防止、新たなコミュニティの場の創出を図ります。
市内の森林に関する取組としては、森林を適切に管理し都市の中での自然環境を保全するため、森林の所有者と活用希望者をマッチングする制度の運用を開始します。
市内経済の活性化に向けては、地域の雇用創出や税収増加を図るため、不足する産業用地を確保し、新たな産業集積拠点を形成するための誘致活動や調査を進めていきます。
また、地域の特色を生かし、新たな仕事や活動を生み出す人材である「クラフトライファー」を伴走型支援により育成し、事業終了後も持続的に人材育成が行われる体制を構築することで、周辺市街地の活性化を進めていきます。さらに、区域指定の追加を行い、住宅等の建築需要に応えていきます。
つくば市を代表するイベントの一つであるつくばマラソンについては、まちなかを走り沿道で応援しやすいコースへの変更や、交通規制による一部地域の封鎖状態を解消するとともに、良い記録を狙えるコース設定を行うなど、ランナーを大切にしながら、より市民に愛されるシティマラソンにリニューアルします。

(6)誇れるまち つくばの魅力をともに創る

次に「誇れるまち」としては、つくばの魅力ある地域資源や豊かな自然を未来へ引き継ぎ、将来の世代も安心して暮らせるまちを実現するために、人や環境を軸にした持続可能な社会に変革する取組を進めます。
具体的な取組として、環境・地球温暖化に関連する2つの計画を合わせることで、内容を充実させつつ実効性・効率性の高い計画に改定するとともに、気候市民会議の提言書に対するロードマップを着実に進めます。また、脱炭素先行地域として環境省に選定されているつくば駅周辺のモデル地区では、先進的な事業を進めることで、2030 年までのエリア内の脱炭素化を目指します。
さらに、生物多様性に関する施策を戦略的かつ計画的に進めていくため、「生物多様性つくば戦略」をもとに、市民、事業者、研究機関等との連携を図りながら豊かな自然を未来へ引き継いでいきます。
更なるまちの魅力を高める取組としては、新たな観光拠点や市民の生活拠点として道の駅の整備検討を進めます。また、既存の資源や個性をいかし、魅力ある芸術文化を創造する場として旧田水山(たみやま)小学校を芸術文化創造拠点として整備します。さらに、つくば駅前の顔となる中央公園と隣接した中央図書館はリノベーション工事を実施することで、市民ニーズの高い「滞在型図書館」として具現化していきます。
以上、令和7年度の市政運営の所信の一端と主要施策の概要を申し上げました。

むすびに

これまで、議会の皆様にご指導をいただきながら、様々な変化を生み出すことができました。数字による変化は 12 月議会で申し上げた通りですが、常々申し上げてきているように、まちづくりにおいて最も大切なのは市民の声です。
その一例として、不登校支援の取り組みがあります。全国的にもあまり例がない、すべての小中学校への校内フリースクール設置、民間フリースクール利用者や事業者への手厚い補助、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの大幅増員を実施してきました。ある保護者の方からは「昨年はほとんど登校できなかったこどもが、校内フリースクールのおかげで学校に通えるようになった。自信をつけて、普通教室にも行ってみようかなと考えている。不安があっても、うまくいかなければまた校内フリースクールに戻れるからと、前向きな気持ちでいる」というお話をいただきました。当事者である児童生徒からも「辛くなったときにいつでも行ける場所があり、居心地よく過ごせる」「安心して過ごすことができている」という声が数多く寄せられています。
小児夜間救急のオンライン診療も同様です。昨年末の開始以来、多くの方々にご利用いただいています。「休日緊急診療所に電話すら繋がらない中、自宅にてオンラインでスムーズに診察していただけ、寒い中ぐったりしたこどもを連れ歩かずに済んで大変ありがたかった」「病院が開いていない時間帯での不安な中、医師の診断を受けることができて安心でき 、その後の適切な治療につなげられた」といった声が届いています。
また、先月開始した地域連携公共ライドシェアは、複数の自治体にまたがる全国初のモデルとなりました。深刻なドライバー不足の解消にも貢献できる可能性を秘めています。国土交通省の規制により、残念ながら現時点ではごく一部の地域での実施に限られていますが、利用者の皆様からは感謝の言葉をいただいております。
これらの取り組み―不登校支援のモデル、小児夜間オンライン救急、ライドシェア―は、いずれも全国のモデルケースとなり得るものです。すでに多くの自治体から問い合わせをいただき、実際に取り組みを始めている自治体もあります。この事例以外にも、RPA の活用や窓口時間短縮等、すでにつくばの施策をモデルにしている事例が増えてきています。
このように、議員の皆様のご理解とご協力により、つくばは、変革の象徴のモデルのひとつになっていると捉えています。そして、それこそがつくばの使命であると考えています。
以前も申し上げましたが、選挙期間中にも「ようやくつくばが研究学園都市にふさわしいまちになってきた」というお声をいただきました。そして、「弱い立場の人に冷たい市政に決して戻さないでほしい」という切実な声を各地でいただきました。
このような声こそが、つくばの変革の力です。
しかし、当然、まだまだすべてを変えることができているわけではありません。そして、変化の実感を市民に届けられているとも思っていません。選挙期間中、「変革以前の市政を知る方と、引っ越してこられて変革後のみを知る方では受け止め方が異なる」という指摘を受けました。まさにその通りだと感じていますし、もちろん長年お住まいの方々も、まだ解決できていない問題があるとお話をしてくださります。
眼の前には多種多様な、困難な課題があります。つくば固有の課題もあれば、全国共通の困難な課題もあります。しかし、容易には解決できない課題だからこそ、新たなチャレンジを始めているのです。15 分都市も、グリーンシフトも、新たな挑戦なくして、持続可能な未来の実現はありません。
新たな挑戦は、すべてがうまくいくとは限りません。引き続き、ご提案や建設的なご批判をいただきながら、議会の皆さまや市民と対話を重ねていきたいと思います。
皆様のご理解と指導を賜りますよう、心よりお願い申し上げるとともに、令和 7 年度も、試行錯誤を重ねながら、全身全霊をかけて、「世界のあしたが見えるまち」へ市政を前進させる強い決意を持って市政運営に邁進することをお誓い申し上げ、所信とします。
令和7年2月13日 つくば市長 五十嵐立青

この記事に関するお問い合わせ先

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電話:029-883-1111(代表) 

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