認知症への不安や悩みを共有、学び支えあう場づくりを

更新日:2026年03月30日

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vol.66 公益社団法人 認知症の人と家族の会茨城県支部 さん

安心して年を重ねられる社会を目指して

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みなさんは、「認知症」と聞いてどんなイメージを持ちますか。

 

本人も家族も、多くのものを諦めなければいけない――そんなイメージはありませんか。しかし、その人その人の尊厳を保ちながら、本人も家族も安心して暮らし続けられるよう支えてくれる人たちが地域にはいます。

 

「誰でも安心して歳を重ねられるように」そんな思いで、認知症に関わる様々な悩みを抱える人たちに長年寄り添うのが、公益社団法人「認知症の人と家族の会」(以下、家族の会)です。

 

家族の会は、全国組織。1980年に「呆け老人をかかえる家族の会」という名称で始まりました。

 

当時、認知症は「痴呆」と呼ばれており、症状に関わる情報もほとんどない状況でした。そんな時代に、戸惑いや悩みを共有し、家族同士で励まし合い・助け合う活動は、徐々に全国に広がり、現在は全国47都道府県に支部があります。

 

茨城県支部が設立されたのは2003年。現在の拠点は牛久市にありますが、当初はつくば市にあったそうです。

 

家族の会の主な活動は、「つどい」「会報発行」「電話相談」の3つ。

 

茨城県支部の「つどい」には、「本人交流会」や「介護者のつどい」「男性介護者のつどい」を牛久市で開催しているほか、つくば、土浦、龍ケ崎、古河の4市でも「つどい」を行っています。

 

「つどい」は、基本的に居住地に関係なく誰でも参加することができます。ただ、独身の介護者や若年性認知症の当事者など、参加者の家庭の事情や症状は人それぞれ異なります。また、配偶者への介護と親への介護では熱量が違うこともあるそう。

 

茨城県支部代表の牧野さんは、どんな人でも安心して参加できるよう、じっくり話すときはグループ分けをするなど工夫をしているそうです。「ぴったり同じ状況の人はいない。その人の今の悩みを共有できる場を探してほしい」と話します。

 

また、茨城県支部では「オンラインのつどい」も昼の部と夜の部に分けて開催しており、時には海外から参加する人もいるそう。気軽に、安心して参加できるよう間口を広げています。

 

つくばの「つどい」は、イーアスつくば内にあるカフェの一角で開催しています。カフェでの開催は、「通りすがりの人にも偏見なく集まりを見てもらえるし、参加者が楽しめる空間でもある」と牧野さんはメリットを話します。

マフ会
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茨城県支部では、2024年から「マフを編む会」(マフ会)も開催しています。

 

マフは「朝日新聞厚生文化事業団」が2016年、イギリスから日本に紹介した筒状のニット製品です。認知症の人たちが両手を入れることで、あたたかさや安心感を得られるそうです。

 

ボランティアの編む人にとっても、認知機能の維持を感じたり、没頭できる作業になったり、癒しを感じたりしているそう。マフ会では、作って届けるだけではない価値が生まれています。

 

牧野さんは、マフを普及する取り組みをしている「特定非営利活動法人認知症サポートグループONBOARD」が育成するリーダークルー(認定講師)にもなっています。

マフを編みながら、認知症への理解を深めてみませんか?

居心地の良い『お出かけ先』を見つけて

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家族の会の茨城県支部では、行政の委託を受けて「オレンジカフェ」も行っています。開催場所は、つくば(茎崎交流センター)、牛久、龍ケ崎、土浦の4カ所です。

 

オレンジカフェは、認知症当事者やその家族でなくても、興味があれば誰でも気軽に集える場所です。専門家やボランティア団体の人たちのほか、夏休みには子どもが参加することもあるそう。

 

記者は、茎崎交流センターで茨城県支部が企画・運営する「オレンジカフェinくきざき」に行ってきました。

 

この日は、グループに分かれて自己紹介や今年の抱負を語ったのち、ハーモニカの演奏に合わせて合唱、手話にチャレンジ、体操や、頭・体を使う企画が続きました。最後には、認知症を学ぶ時間もあり盛りだくさんの内容でした。

 

「自分たちが楽しいと思えること」を大切に企画しているからこそ、参加者も楽しめるんだそう。

いろいろな立場の人たちがいるにも関わらず、リラックスした様子で対等に関わりあっている様子でした。ここでの交流を通じ、誰にも話せなかったことを話せたという人や、相談や支援に繋がった人もいるそうです。

 

参加者の一人は「いろいろな体験をしている人の話を聴くと参考になるし、励みになる。私のことも共有できる」と笑顔を見せます。

 

茨城県支部が主催するイベントだけでなく、行政などが実施するオレンジカフェや任意団体によるイベントも各地で開催されています。

 

「定期的に集えるところや出かけるところが地域にたくさんあって、自分にフィットするところを見つけられたら良い」と牧野さんは多様な会が広がることの意義を語ります。

 

認知症の人と家族の会が運営するウェブサイト「てとてなび」は、全国の支部が開催するイベントや相談窓口などを探すことができます。

 

ぜひ活用してみてくださいね。たくさんのイベントの中に、居心地が良いと思える場所があるはずです。

社会資源として存在を知って

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家族の会が46年蓄積した当事者や家族たちの声と、そこから積み重ねてきた調査は“社会資源”でもあります。牧野さんは「家族の会の存在を知って、活用してほしい」と声に力を込めます。

 

「『おかしいな』と思ったら、認知症を勉強してみてほしい」と牧野さんは早めの行動を勧めます。

 

茨城県支部代表の牧野さんは、義母を介護し看取った経験があります。

牧野さんの場合は子育てと介護の時期が重なり、「先が見えない不安感があった。義母に何が起こっているのか分からないまま請求書の対応に追われていた」と時間的にも経済的にも追い詰められていたといいます。

 

歳を重ねれば、誰もが認知症になる可能性はあります。

そんな将来を暗く考えるのではなく、支えてくれる人たちの存在を知り、認知症を正しく知ることで、今から予防や備忘(忘れるなど認知症の症状への備え)を始めましょう。

 

認知症予防のために食事や睡眠、運動に気を配ること以外にも大切なのは、家族との話し合いです。

キャッシュカードの暗証番号やマイナンバーカードを持っているかどうかなど「お金」や「身分証明」に関わる情報を共有することは、いざという時に役立ちます。

 

このほかにも家族の会では多くの“気づき”が得られるはず。

 

ただ、家族の会がつくるのは、“正解”を教えてくれる場所ではありません。「自分なりの答えを見つけるためのヒントを得る場所」です。

 

「つどい」などで参加者に寄り添う牧野さんは「私たちが聴けることは、一部に過ぎない」と“簡単には話せない思い”にも注意を払います。

 

「その人の意思決定を阻害してしまうと、後悔につながってしまう」と牧野さん。聴くプロセスの中では、考えを押し付けたり、誘導したりしないよう心掛けており、「自分の答えは、自分で見つけてもらうしかない」と話します。

 

自分や家族のことで不安がある、聴いてほしいことがあるという人は、家族の会の催しに訪れてみてはいかがでしょうか。

▼「つどい」「カフェ」などの開催情報はこちら

社会の動きにも目を向けてみよう

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近年、認知症を取り巻く状況が大きく変わりつつあることをご存知でしょうか。

 

2024年の元旦に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、認知症の人とその家族がその人らしさを維持しながら安心して暮らせるような社会の実現を目指した取り組みが動きつつあります。

 

各自治体では、「認知症施策推進計画」の策定に向けて動き出しています。

 

また、MCI(軽度認知障害)の時期の一部の人に使える新薬が登場したことで、早期診断・早期発見の重要性がさらに高まっています。

*MCI:認知症の一歩手前の状態

 

「社会は知らないうちに動いている」と牧野さんは、国や各自治体の動きに目を向ける大切さを訴えます。

 

家族の会は介護保険制度のない時代に始まり、「介護の社会化」を国に要望してきました。現在も介護保険制度などに関わる署名や要望活動を続け、国で行われている議論について情報発信もしています。

抱える悩みを共有し、支え合うことで、少しずつ社会はより良い方向へ進んでいくはずです。

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