TX沿線地域のコミュニティづくり、テーマで繋がる「けんがく地区」
vol.54 けんがく活動団体連絡会 さん
TXの開通で拡大するまち、コミュニティづくりの動きが活発化

つくばエクスプレス(TX)が開通して20年。
沿線沿いの地域では、「まち」が大きく変化し続けています。
しかし、目覚ましい発展の一方で、まちで暮らす人々のコミュニティの形成については課題が山積している状況。
「つながりという横軸、歴史という縦軸もない。ここで活動している人たちは悪戦苦闘していた」と話すのは、けんがく活動団体連絡会でまとめ役を務める島田さんです。
けんがく地区には、引っ越してきてからまだ間もなく、地域に「ツテ」がない人が多くいます。
地域活動を開始しても、地元のことを良く知っている人からのアドバイスをもらう機会がなく、各活動団体は「どうやって活動を続けていけば良いのだろう」と悩みを抱えていたそうです。
そこで、けんがく地区の活動団体で集まってつながる場をつくろうと、2021年に「けんがく活動団体交流会」を開催。各団体が抱えている悩みや地域の課題を共有し、解決に向けた話し合いをする中で、けんがく活動団体連絡会が生まれました。
また、交流会からは、各団体が同じ目標を持って力を合わせるイベントも生まれました。
長年けんがく地区で暮らす一人のシニア男性が、交流会で「桜祭りをやりたい」と打ち明けました。TXの開通で新しく引っ越してくる人たちを歓迎しようと、地元では桜並木をつくってきたそう。桜並木が完成したので、桜の下で交流するイベントを開きたいと言うのです。
この意見を聞き、同連絡会ではさっそく「さくらまつり」の実現を決意。「一つの目標に向かってみんなでやろうという雰囲気になった」と島田さんは振り返ります。
翌年の春には小規模ながらも、さくらまつりを開催。メンバーの特技を持ち寄った企画で、地域の憩いの場をつくり出しました。
同連絡会では、この「さくらまつり」を皮切りに、様々は活動が生まれます。
島田さんは「イベントは、つながるためのツールなんです」と話します。
けんがく地区とは
同連絡会が考える「けんがく地区」は、学園の森義務教育学校、研究学園小中学校、葛城小学校、春日学園義務教育学校の4学区を合わせた地域を指します。
空きがないまちで、集える場や活動拠点をつくる

「わぁ、久しぶり!」「やっと来れました~」
ゆったりとした時間が流れる午前中、カフェの一角に和気あいあいとおしゃべりを楽しむグループがあります。
けんがくさんが、スターバックスと協力して開催している「ふらっとカフェ」の一つです。初めてでも気軽に参加できる場で、初対面の記者も心地よく迎え入れてくれました。
この日訪れたのは、けんがく地区の若い世代が中心に集まる「がくもりふらっとカフェ」(つくば学園の森店)。子育てに関する悩みやけんがく地区で暮らす中で感じていることなどをフラットに話していました。
「ここに来れば誰かに会える」とカフェの世話人さん。家庭でも職場でもなく、何でも話せる場所になっている様子です。
ふらっとカフェは「集える場がない」という地域課題から生まれた活動です。
研究学園駅周辺には地域の人たちが集まれる公的施設がありません。また、空き店舗や空き家が少ないので、新しく集いの場をつくるのも難しい地域です。
そこで出たアイデアがスターバックスとの連携。比較的にお客さんが少ない時間帯に店内の一角を借りることで、地域の集いの場を創り出しました。
スターバックスは地域貢献活動に力を入れており、快く協力してくれているそうです。
「空いていない空間の空いている時間を使う」と地域の店舗でお客さんが少ない時間に場所を借りるのがポイントです。
イーアスつくば店で開催したところ、当初から盛況。多い日は20人ほどが集るそう。同店ではシニア層が多かったことから、若い人が参加しやすい場をつくろうと、つくば学園の森店でもスタートしました。
「集いの場」はできたものの、活動拠点はありませんでした。
そこで目を向けたのが古民家の「つくばスタイル館」。ただ、利用時間や空調設備面での課題もあり、行政と相談しながら、活動拠点として活用していけるよう「アップデート」に取り組んでいます。
テーマでつながるまちづくり

同連絡会では、地域にどんな団体があるのかも調査。設立当時は、健康や環境美化、子育て、文化活動など様々な分野で30を超える団体がリストに並びました。現在は、約20団体が連絡会に登録しています。
けんがくさんの組織構造は、登録団体でつくる連絡会の下に、「けんがくまちづくり実行委員会」「ふらっとカフェ」「古民家のアップデート」「活動団体交流会」「広報」といったプロジェクトチームがぶら下がっているイメージです。
「連絡会がつくっているのは『テーマ型コミュニティ』。地縁コミュニティが成熟するまでの『つなぎ』だと思っています」
島田さんは、連絡会の立ち位置をそう客観的に捉えます。
地縁ではないコミュニティだからこそ、自由度の高さもあるそう。「やる気さえあれば、なんでもできる。自分たちがまちをつくっているという感じ」とゼロからつくるやりがいを滲ませます。
2021年以降、次々と出会いの場や集いの場をつくってきた「けんがく」さんですが、島田さんは「これからスピードが増していきそう」と語ります。
一方で悩みの種となっているのが人手不足。
活動の原点である「交流会」の開催にもっと力を入れたいと考えていますが、さくらまつりやけんがくハロウィンといった大型イベントの準備に追われている状況だそう。「初心に戻って、古民家の活用や交流会の開催も大切にしたい」と島田さんは話します。
これからやりたいことは「まちづくりカレンダー」。けんがく地区のイベントをカレンダー形式で発信する構想です。また、ハロウィンイベントでお披露目する「トレーディングカード」にも地域のリソースとして期待を寄せます。
島田さんは「なるべく孤独を抱えている人がいないように、誰かが困っていたら声をかけられるような、そんな地域になっていけば」と地域の将来に思いを馳せます。地縁が薄い地域でも、ゴミ拾い活動や交流イベントで仲良くなった人がいれば、いざという時に助けを求められます。
「テーマでつながることは、他の沿線地区でも一つの手だと思います」(島田さん)
さくらまつりでは、学校との連携も深まってきているそう。
テーマでつながってきたコミュニティに、多様な機関も合流し、深みが増しています。
地域課題ややりたいことについて共有する「定期ミーティング」は、基本的に毎月第3月曜日に開催しています。
けんがく地区で在住・在勤・在活(活動している人)であれば、誰でも参加可能。「参加メンバーが段々と固定化しているので、もっといろいろな人に関わってほしい」と仲間を募集しています。
今のけんがく地区では、同じ興味を持った人たちでつながっていますが、数十年経ったころには、同じ「ふるさと」を持つ人同士の豊かな地縁コミュニティに生まれ変わっているのではないでしょうか。
ご興味のある方は、まずはイベントや交流会に参加してみてはいかがでしょうか?
将来の地域の基盤となるコミュニティづくりに加わるチャンスです。
この記事に関するお問い合わせ先
市民部 つくば市民センター
〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
電話:029-855-1171 ファクス:029-852-5897
 
       
             
           
             
           
           
           
           
       
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更新日:2025年10月27日