命をつなぐ骨髄バンクドナー登録、若者への呼びかけ強める

更新日:2025年08月29日

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vol.48 骨髄バンクを支援するいばらきの会 さん

2ミリリットルの採血が誰かを救うかもしれない

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「骨髄移植は、生きているうちにできる唯一の臓器移植なんです」

そう語るのは、骨髄バンクを支援するいばらきの会のつくば支部長・伊井さん。

 

骨髄バンクを支援するいばらきの会は、骨髄バンクドナー登録の啓発活動や登録をサポートする「登録会」の活動をしている団体。骨髄移植や*末梢血幹細胞移植を望む全国の約2千人の患者さんをサポートしようと活動しています。

 

骨髄移植は、白血病など重い血液の病気と診断された人たちの命をつなぐために欠かせない選択肢です。

 

血液の病気になると、血液をつくる細胞(造血幹細胞)の異常や機能低下で、健康な血液を体に供給することができなくなります。骨髄移植は、抗がん剤治療ではこの病気を克服することができなかった患者さんが元気を取り戻すための治療法。健康な人から造血幹細胞をもらうことで、正常な血液をつくる力を取り戻します。

 

この移植を成功させるには、患者とドナーの白血球の型(HLA)が適合していなければなりません。HLAは両親から受け継ぐことから、まずは適合する確率の高い兄弟姉妹のHLAを調べます。

 

そして、ここで一致しなかった場合に、骨髄バンクに登録している他者からの骨髄提供に頼らなければならないのです。

ただ、他者で一致する確率は「数百から数万分の一」と決して高くはないのです。

 

骨髄バンクの登録に必要なのは、2ミリリットルの採血。

2ミリリットルは、小さじの半分弱の量です。

 

採血と血液の保管が必要なことから、ドナー登録は献血と一緒に行われることが一般的。このため、骨髄バンクを支援するいばらきの会さんは、献血バスに同行して「献血併行型登録会」を行っています。

 

「骨髄移植ができる人を増やすためには、献血に行く人も増やしていかないといけない」(伊井さん)

骨髄バンクの登録から提供までを経験、命を救えた感動が原動力に

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「適応通知が来たときは、感動しました。医者でもない自分が誰かの命を救えるんだと」

骨髄バンクを支援するいばらきの会でつくば支部長を務める伊井さんは、骨髄ドナーの体験者。骨髄提供の経験が、今の活動を支えています。

 

ドナー登録のきっかけは約30年前、日本の骨髄バンク普及の立役者として知られる大谷貴子さんの活動を知ったことでした。

「もし自分のこどもが骨髄移植を必要としたら」と想像し、誰かのこども救えるのならと登録を決めたそうです。

 

当時は、民間団体による骨髄バンクの活動が公的活動に先行して行われており、ちょうど公的な骨髄バンクが立ち上がるところでした。

 

公的な活動が始まるタイミングで登録。約3年後に、ドナーを必要とする患者と白血球の型が一致したことを伝える適合通知が届きました。

 

「やったー!」

 

伊井さんは誰かの命を助けられるということに高揚感を覚えました。

ただ、その際は伊井さんよりもさらに適合する方が見つかったようで、実際の骨髄提供までには至りませんでした。

 

それから5年後。適合通知が再び届き、このときは骨髄提供まで行いました。

 

伊井さんに知らされる提供した患者の情報は、その後の生活を守るためにも、関東圏内に居住していること、性別、年代のみだったそうです。

それでも「どこかに自分の骨髄移植で生きている人がいるはず」と思いを馳せます。

 

その後、骨髄バンクの設立10周年を記念した大会に出席したことを通じ、全国のサバイバーやその家族、ドナー経験者と知り合います。そこで初めて、骨髄バンクを支援するいばらきの会の存在を知り加入しました。

 

伊井さんは骨髄提供後、患者の家族から手紙を受け取りました。命を救えた実感で、涙が止まりませんでした。

 

「一人でも多くの人が登録してくれたら、ありがたい」

伊井さんは、同じ空の下で生きる「誰か」を想像し、強く語りました。

若者の骨髄バンク登録を、一人でも多くの患者を救うために

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骨髄バンクに登録できる年齢は、18歳以上、54歳以下で健康な方(提供ができるのは20歳を過ぎてから)です。

全国で登録者は約56万人に上ります。

 

既にたくさんの人が協力しているように感じますが、骨髄バンクの新たな登録を必要としている人がいます。

 

骨髄移植を望む患者とドナーの白血球の型が適合するのは、数百から数万分の一の確率。

完全に一致する人が見つからない場合もあるそうです。

 

また、骨髄バンクの登録者は40~50代が約半数を占めます。

提供できる年齢は55歳以下。骨髄バンクのホームページによると、5年以内にドナーを卒業する人は13万人にもなるそう。

このため、若者の登録が求められているのです。

 

さらに、県内の骨髄バンクの新規登録者は減少傾向にあるそう。

これまでは年間で200~300人の登録がありましたが、近年は「100人を超えれば良い」と伊井さんは肩を落とします。

 

献血バスに訪れる人はリピーターも多く、既に骨髄バンクに登録しているという人も少なくありません。

 

一方、「登録者が増えればもちろん良いけれど、無理にはすすめない」と伊井さんは、登録するかどうかについては本人の意思を尊重することを大切にしています。

 

献血への一歩が、誰かの命を助けるかもしれません。

ぜひ献血バスのスケジュールをチェックしてみてください。

骨髄バンクの登録窓口は、水戸献血ルーム(水戸市宮町)とつくば献血ルーム(つくば市吾妻)にもあります。

登録にご関心があるかたは、まずはドナー登録のしおり「チャンス」をご覧くださいね。

*)末梢血幹細胞移植

健康な人に白血球を増やす薬を注射すると、骨髄中の造血幹細胞が増えて、全身を流れる血管(末梢血)にも流れ出します。この状態で採血した血液成分から造血幹細胞を分離して採取し、患者に移植する治療法です。

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