こどもの「やりたい」から始まる新しい学びのカタチ

更新日:2025年08月25日

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vol.45 こどもとつくる学校 でんでん さん

こどもの興味関心からスタートする学び、新しい学校のカタチを求めて

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「いらっしゃいませ!かき氷ありますよ~!」

その学び舎に入るなり、こどもたちから元気な声が飛んできました。

 

この日、開催していたのはこどもたちの手作り「夏祭り」。

このこどもたちは、「こどもとつくる学校 でんでん」(以下でんでん)さんで学ぶメンバーたち。

 

でんでんさんでは、こどもたちの自由に生きる力を育むことを目指すオルタナティブ・スクール(従来の公立や私立学校とは異なる理念や手法を用いる学校)です。

「プレイパーク」「イエナプラン教育」「シュタイナー教育」といった、こどもの主体性や体験学習、個性を重視した新しい学び場づくりをしています。

 

こどもたちが主役となって企画・運営した「夏祭り」では、かき氷やドリンクバー、ボーリングなどこどものアイデアを詰め込んだ出店が並び、こどもたちがテキパキと切り盛り。

 

サービスの紹介や両替をスムーズにこなす姿を見せたかと思えば、「作るのに失敗したら割引します」というこどもらしい一面も見られました。

 

そんな一生懸命なこどもたちの姿を大人たちは見守ります。

 

この一風変わった“学校”で行われている活動は、「遊び」に見えますが、しっかりと教育の一環。

 

祭りが終わると、こどもたちは会計の作業を開始。材料費や機械の購入費と売り上げを見比べ、計算した結果を大人に伝えていました。

準備から片付けまでの活動を通じ、こどもたちは算数や社会、図工などを学んでいるのです。

 

テキパキと動き回るこどもたちの姿だけでなく、のんびり寝転がったり、大人と話したりしている姿から、こどもたちが安心して学んでいることが伝わってきました。

こどもたちのペースで確実に学びを進めていく

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でんでんさんの活動場所は、平日のうち4日は竹園の民家敷地内にある「テラ子屋つくば」。残りの1日は「流星台プレイパーク」で活動しています。

 

テラ子屋内の壁には、時間割のような紙が貼ってあり、ひときわ目を引きます。

よく見ると、そこには「でんでんプロジェクト」「計算・ことば」「哲学サークル」などと見慣れない科目があります。

 

でんでんプロジェクトとは、イエナプラン教育で「ワールドオリエンテーション」と呼ばれる手法。こどもたちの興味があるものから問いを広げていき、調べて発表し合うそうです。

 

代表の阿部さんは「発表でほかの子の得意なことを知ったり、学びを共有したりする経験を経て、世界と自分がつながっていることに気づいていく」と話します。

 

今年度は「うずらを飼う」というテーマに取り組んでいました。

テラ子屋の外には手作りの鳥小屋。こどもたちによると、自分たちで大きさを計算したり、木材を買いに行ったりして小屋を作ったそうです。

 

卵の孵化にも取り組んでいるそうですが、せっかく育てたウズラの子がケンカなどで亡くなってしまうこともあります。

取材の日は、亡くなってしまったウズラの子がいました。こどもたちは、その子のために木の下に大切そうにお墓をつくっていました。

 

イエナプランを取り入れた手法では、ウズラの育成のように、こどもの興味から始まった探求学習に対して、大人があとから「その学びは国語にあたるよね」「ここで掛け算を学べたね」と学習指導要領に当てはめていくそうです。

 

このほかにも、潮干狩りやスペイン語が話せる人との交流、文化祭での演劇など、学びに繋げているテーマは多種多様。このような企画で、こどもたちは学習指導要領にある国語や図工、外国語、社会、家庭科など多くの教科を学んだことになるそうです。

 

修学旅行も、こどもが主役となって決めていきます。

行先から始まり、予算や交通機関、食事の予定などこどもたちが話し合って決めます。

「大変だった~」とこどもたちは当時を振り返りますが、自信に満ちた表情です。

 

体験を通じて、こどもたちは各学科の知識を得るだけでなく、心も育んでいるようです。

公立の小学校でつまづいても、ほかの学び方の選択肢を増やしていきたい

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「森のようちえん」に通っていた長男が、それまでに培った良いものをそのまま伸ばしていける小学校はないだろうかーー。

そう考え始めたのが、代表の阿部さんがオルタナティブ・スクールについて考え始めた最初のきっかけだったそうです。

 

森のようちえんは、北欧諸国ではじまったとされる自然体験活動を軸にした幼少期教育の総称です。日本でも、国内の自然環境を活用した様々なスタイルの森のようちえんが広がっています。

 

阿部さんが森のようちえんで見たのは、「自然体験を通じて、その子のやりたいことで成長して、自主性も育む」教育だったそう。

 

一方、長男がその後進学した小学校では、友だちづくりは得意なものの、苦手な分野の学習で自信を失っていく長男を様子を見ていました。

 

「学校は弱点の克服を重視していて、ちょっとずつでも成長しているのに『できない子』というレッテルを貼られてしまう。画一的な教育になり過ぎているのではないか」阿部さんは、そんな疑問を感じました。

 

「公立の学校へ通うのと同じように、もう一つの選択肢としてその子に合った学校へ通うことができれば」

そんな想いに共感したメンバーが集まり、2019年に新しい学校を考える会が発足しました。阿部さんたちは、シュタイナー学校やイエナプラン学校、きのくに子どもの村など国内で行われている様々なスタイルの教育について学習。阿部さん自身も、教員免許を取得しました。

 

そして、でんでんが2021年、週1回の居場所づくりのボランティアからスタート。

2年目からは毎日開催に。当時は、手探りの“学校づくり”。最初は、通いに来ている3人のこどもたちに笑顔で帰ってもらうことを目指して活動していたそうです。

そのうち、「暇だな」というこどもに「勉強もしてみる?」と声をかけたり、「午前中にお菓子を食べるのはやめてみようか」「カードゲームばかりしないように」など話し合ったりしながら、少しずつルールをつくっていきました。

 

4年目の現在は、小学3~5年生のこどもたちが毎日10人程度来ます。

こどもたちが自分で学びの計画を立てて、仲間とともに学習を進めます。問題が起こったときは、こども同士で仲裁するなど人間関係も学んでいるそう。

 

阿部さんが、こどもとの付き合い方で大切にしているのは「対等であること」。強く注意するときもあるが、そのときは理由を必ず説明します。

また、主体性を重んじていますが「放任するのではない」と強調します。「自由だけど、相手の自由を尊重しないといけない」

 

当初は大人への不信感を持っていたこどもも、今では大人の話もよく聞いてくれるようになったといいます。

 

「やはり、公立ではないということに負い目を感じている子もいる」と阿部さんは思いを巡らせます。

阿部さんは公立学校との連携や、関わる人の規模を大きくするなど活動を広げていくことを見据えます。

 

つくばでもイエナプランの考え方を参考にした小規模特認校を来年度から導入します。

こどもたちの学び方の選択肢が増えつつあります。

 

でんでんさんに興味がある方は、まずはホームページを覗いてみてくださいね。

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