手話を学ぶことが、思いやり溢れる社会をつくる

更新日:2025年07月14日

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vol.42 ちびっこしゅわサークル さん

友だちと遊びながら手話を使えるように

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人さし指で自分の胸を指した後、相手の方に見せた片手の手のひらを、もう片方の親指で母印を押すイメージで――。

 

「わたしの名前は――」

 

毎月第一土曜日に開催している「ちびっこしゅわサークル」。この日は体験を含めて、小学生8人が参加。サークルは自己紹介から始まり、参加者同士で教え合いながら、みんなの前で手話を使って自己紹介をしました。

 

「おばあちゃんの手帳に手話のやり方が書いてあって興味をもったの」「ドラマで手話を知って」「聴覚障害者と話してみたい」

こどもたちの参加理由はさまざまですが、新しい意思疎通の方法を手に入れた高揚感で、どの子も顔を輝かせます。

 

この日のテーマは「都道府県」。

まずは、東西南北を表す手話を学んでから、各都道府県の名称を手話で表現する練習をします。

 

都道府県の表現は、名産品や歴史にちなんだものもあります。

例えば、山形県はさくらんぼ、沖縄県は踊りの際に頭に巻く帯を指で表現。そして、我が茨城県は、なんと水戸藩士が羽織っていた「蓑(みの)」で表すそう!

 

こどもたちは、動作を楽しみながら、友だちと一緒に和気あいあいと練習していました。

 

一通り覚えたら、ゲームで復習。

都道府県が書いてあるカルタを使ったゲームで、先生の手話を見て札を取り合います。

 

こどもたちの笑い声が響く、あっという間の1時間30分でした。

 

参加したこどもは「もっと(手話の)仲間が増えてほしい」と語ります。

「だって、耳の聞こえない人に道案内をしてあげられるようになるんだよ」

 

手話を知ることが、思いやり溢れる社会づくりにつながっていきそうです。

日常に手話が溶け込む社会を目指して

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こども向けに手話を教える「ちびっこしゅわサークル」代表の大城さんが活動を始めたのは、二人の保護者との出会いがきっかけだったそうです。

 

大城さんは生後6か月で病気により聴覚を失い始め、物心がつく頃から聴こえないそうです。お家ではこどもと普段は手話で会話をしているそう。

 

ある日、小学2年生のこどもの友だちの家へ、梨のお裾分けを持って訪ねて行きました。すると、こどもの友だちが手話で「ありがとう。私、梨が好き」と伝えてくれたそうです。

 

「その瞬間、私は驚きと感動でいっぱいになりました」と大城さんは当時を振り返ります。

 

大城さんはこどものころ、習い事をする機会がほとんどなかったため、「こどもたちには自由に手話を学べる場をつくりたい」と思い始めたそうです。

 

また、ほかの保護者から「こども向けの手話サークルはないのですか?」と聞かれることもありました。

当時、つくば市にある手話サークルは大人向けが多くて開催時間も遅いため、こどもが参加しづらい状況でした。

 

この保護者の声かけをきっかけに、こども向け手話教室の開設を決意したそうです。

 

サークルを立ち上げたのは、2024年1月。年齢や性別に関係なく、楽しく学べることを大切にしています。

参加しているこどもたちは、自己紹介や趣味について自然に会話ができるようになってきています。今ではサークルの外で会っても手話で話しかけてくれるそう。

 

こどもたちの日常的に手話が根付きつつあります。

 

大城さんは「この教室で学んだこどもたちが成長し、つくば市内外のさまざまな場所で聴覚障害者と出会った際に、自然に会話ができるようになれば嬉しい」と話します。

対面で学んでほしい手話の表現

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サークルのスタッフは、コーディネーター、講師、通訳担当と役割分担して運営しています。

通訳担当がいるので、手話を使えなくてもメンバーになれます。

 

手話を教える中で課題に直面することもあるそう。

手話には、使う地域によって「方言」のような違いがあるそう。標準語のように統一した表現がないので、どの手話表現を教えるか、慎重に選んでいるそうです。

 

また、一方的な講義にならないように、色探しやビンゴなどのゲームも交えて進めます。

 

手話は手の向きや動かし方が複雑だったり、表情の使い方で意味が変わったりします。

近年は、YouTubeでも手話を学ぶことができますが、

「実際に手話で会話すると、その場の空気や相手の表情を含めたコミュニケーションの違いに気づくと思います」と大城さん。対面で「対話」を体験する雰囲気を感じてほしいそうです。

 

手話を学ぶことで、新しい視点を持つこともできます。聴覚障害がある人の情報の受け取り方や工夫を知ることで、共生社会を実現するにはどうすれば良いのか理解が深まることでしょう。

 

「単に助けるのではなく、お互いに自分の言葉で伝えあえる関係を築くことが大切だと考えています。聴覚障害のある方々は少数かもしれませんが、どこにでも存在しています。手話を学んだこどもたちが社会に出て、それぞれの場所で活かしてくれる未来を願っています」(大城さん)

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