技術系災害ボランティアを育てる拠点、つくばから全国の被災地へ

更新日:2025年06月30日

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vol.39 日本財団災害ボランティアトレーニングセンター さん

3月に開所、災害現場で活躍するボランティアを育成する施設

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「災害現場では、重機の操作が普通と全く違うんです」

巧みにショベルカーを操って流木や岩を超え、救助物資や救助隊を届けるための道を切り拓く――。

 

災害発生時、迅速な救助活動を実現するためには、確かな技術を身に着けたボランティアたちの存在が不可欠です。

 

そんな専門技術を学べる施設が、つくば市にあるのをご存知でしょうか?

それは、公益財団法人日本財団ボランティアセンター(日本財団ボラセン)が、今年3月に開所した「日本財団災害ボランティアトレーニングセンター」(略称・VTC)です。

 

開所してから初めての研修が4月末、開催されたので取材に行きました。

 

同センターは、平時には「技術系災害ボランティア」の人材育成を行っています。

 

「災害ボランティア」は、被災地の復旧・復興や被災者の暮らし、心身のケアを支える活動を行います。その中でも「技術系災害ボランティア」は、重機やチェーンソーなどの専門技術を用いて支援活動を行うボランティアだそう。

 

この日の研修は、災害現場で活動した経験のある県内外の消防士たち15人が、座学や実技に臨みました。講師は被災地で活躍する災害ボランティア団体のメンバーが務めました。

 

施設内には、座学を行う研修棟のほか、重機操作のトレーニングができる訓練フィールドがあります。

 

実技では、講師陣が「災害現場で障害物を超えるために車体を持ち上げる方法」や「急な坂道を登り降りする方法」などを指導。受講生たちは映像に記録したり、質問したりして学んでいました。

 

VTCでは平時における人材育成だけでなく、災害発生時には重機・資機材の貸し出しやボランティアの派遣も行います。

 

施設内の倉庫には、16台の重機や資機材を配備。これまでに、豪雨災害に見舞われた奥能登(石川県珠洲市と輪島市)や山形県酒田市に駆け付けた技術系災害ボランティア団体に重機を貸し出したそうです。

 

ブロック塀や土砂が崩れている災害現場では、大型重機の活動は困難のため、まずは小型のショベルカーやダンプカーが入ります。消防や自衛隊で配備している重機は大型の場合があるため、VTCは災害初期で活躍する小型重機を中心に配備しているそうです。

災害の激甚化・多発化でボランティア不足、増す重機の必要性

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「大工さんのように家の構造を知っている人でないと、床下の泥をかき出すための床板剥がしができない。災害現場には専門知識のある人が必要なんです」(日本財団ボラセン広報担当者)

 

近年は、豪雨災害の激甚化や頻発化によって、毎年各地で甚大な被害が発生しています。また、昨年は能登半島地震が発生。大地震はいつどこで発生するか分かりません。

 

このため、災害現場で迅速な救助活動に従事する技術系ボランティアのニーズが高まっています。

 

災害現場での重機の存在は、まさに「百人力」。「100人の男性よりも、重機を使える女性が一人いる方が作業を進められる」と広報担当者は例えます。

 

消防では、重機の操縦訓練を行う環境が十分に整っていない場合も多く、VTCは、そんな訓練をしたい人のためにも研修を開催しています。

また、訓練フィールドを練習場所として提供することも検討しているそうです。

 

VTCの研修受講生で、能登半島で地震や水害の救助活動に参加した経験がある消防士は「能登では手作業だったため、重機が使える必要性を感じた」と受講を決めたそうです。研修を振り返り「被災地で活きる内容だった。人の役に立てる第一歩になる」と話しました。

 

つくば市は土地が広くて交通の便が良いため、全国から研修の参加者を募ったり、全国の被災地に出動したりしやしやすいそうです。

 

これから“つくば”に、志の高い災害ボランティアたちが集まってきそうで、ワクワクしますね。

ボランティア育成の機運醸成を、市民とも連携へ

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「災害に限らず、ボランティア活動全体の機運を上げていきたい。そのためにも、VTCがあるつくば市の市民団体やNPO、市民の方々とも連携していきたい」と語るのは、日本財団ボラセンの常務理事の沢渡さん。

 

VTCでは、消防士だけでなく「知識ゼロ」の一般の人に向けた研修の実施も見据えています。

 

また、つくば市の近隣住民たちとの交流イベントも企画しているそうです。

 

災害支援拠点が身近にあることで、住民の日ごろの心構えや備えも変わっていきそうです。

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日本財団ボラセンでは、ボランティアプラットフォーム「ぼ活!」を展開しています。

 

「ぼ活!」の会員登録(無料)をすると、日本財団ボラセンがピックアップしたボランティア活動やセミナー、イベントの案内が届くそう。また、ボランティア仲間の活動の様子を伝えるレポート記事も見ることができます。

 

日本財団ボラセンでは、対面とオンライン形式で様々なレベルの研修を実施。初心者向けの研修や工具の使い方研修、被災者との接し方など災害現場で必要な知識や技術を学ぶ研修を実施し、2021~25年度2月までに延べ6千人以上が受講しているそうです。

 

災害支援のほか、スポーツボランティアや手話の学ぶセミナーなど多様なボランティアがあります。

 

広報担当者は「まずは『ぼ活!』に登録してほしい」と呼び掛けています。

 

ボランティアは「人のため」になるだけでなく、自分自身の成長や新しい出会いにもつながるはず。勇気を出して、一歩踏み出してみませんか。

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〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
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