暮らしの中の手仕事に目を向けるコミュニティマーケット
vol.37 まめいちさん
豊かさってなんだろう?手仕事や生活の知恵に触れるマーケット

鮮やかな新芽のトンネルの下で楽しげな声が聞こえます。
声の主は「まめいち」の出店者と来場者たち。
新鮮な野菜や手作りジャム、淹れたてのコーヒーなどの店が並び、集まった人たちはお買いものだけでなく、そこで出会った人との会話を楽しんでいます。
「まめいち」は毎月第三日曜日に開催している「暮らしを豊かにするヒントと出会う場所」
主催者の小池夫婦が営む「つくば草の根はりきゅう院」(大角豆2012-43)の敷地内で開いています。
“作り手”の顔が見える、旬のものを味わうーー。
忙しい日常でちょっと立ち止まり、大量生産・大量消費の世の中で見過ごしがちな「豊かさ」に気づくきっかけがここにありそうです。
「まめいち」では、出店だけでなく月替わりの体験企画もあります。衣食住といった暮らしに関わるテーマで企画が練られており、取材した日は「餅つき体験」を開催していました。
かまどで蒸したもち米が臼に移されると来場者や出店者たちが集まってきました。
「よいしょ、よいしょ」「重力を使ってつくんだ」
実家で餅つきをしていたというベテランから初めて餅つきをする子どもや若者たちまで一緒になって餅をつき、掛け声やアドバイスをし合います。
餅つきは2回開催。1回目はあんことイチゴを包んだ苺大福、2回目はヨモギと一緒についたヨモギ餅に。出店者たちが連携して手際よく参加者たちに振る舞われました。
この一体感も「暮らし」を感じる瞬間です。
「主催者だけでは起こらない様々な事が起こります」と小池さん夫婦。「私たちも『まめいち』がないと考えないことに出会います」と笑顔を見せます。
小さく始まり多様な暮らしの知恵が集まる場に

「出店者とお客さんの距離が近くてアットホーム」「遊びにきている感じ」
まめいちは2012年2月にスタート。主催者の小池さん夫婦と農産物販売など4件の出店者さんたちから始まったそうです。今では毎月10件ほどが出店するまでに輪が広がりました。
「私たちが場をつくるけれど、出店者さんたちのパワーで独特の雰囲気がつくられている」と小池さん。「こんなに広がると思っていなかったので、『まめいち』は自分たちのものという感じではないんです」と振り返ります。
出店者の中には、小池さん夫婦が予想していなかった企画もあります。
「暮らしの保健室」さんは看護師や薬剤師、ケアマネたちが滞在しており、来場者の健康面の悩みや不安を気軽に話せる場。
「週末のデイサービスのような場があるといいね」という来場者のアイデアで形になりました。
近隣の竹林で開催している「SONORAプレイパーク」は、申し込みの必要なく休日に誰でも遊べる場です。
その場にあるものを使った遊具が特徴。竹で作った滑り台のような遊び場や竹にロープを張り巡らした遊び場、木工のおもちゃなど。こどもたちは興味津々で遊び始めます。
運営は牛久市でフリースクールを展開している「こどものSONORA」さん。「学びよりも遊びの手伝いをしている。学びは結果でまずは楽しい体験をしてほしい」と話します。
集まる人たちの様々なスキルや一面が地域に生かされていく様子に「そんな風にもこの場所を使えるんだ」と小池さんは驚きます。
また、来場者の中には、なかなか会えない人との待ち合わせの場所として「まめいち」に来ている人もいるそうで「居場所としても思ってくれていたら嬉しい」と話します。
予想外のものが生まれるのは、「みんなで形づくっていける」という“ゆとり”がこの場所にあるからかもしれませんね。
みんなのアイデアが形に、手間と知恵をかけた企画

まめいちが終わると、自然とお茶の時間に。
出店者や来場者たちがお茶を飲みながら井戸端会議を始めます。
お茶を飲みながら、次の体験企画のアイデアが練られることもあるそう。これまでに、出店者のおすすめの本を紹介する企画や藍染め・コーヒー染め体験、畜産を知る展示などユニークな企画が生まれてきました。
「お金をかけずに知恵と手間をかける」のがポイント。「それが暮らしの豊かさのヒントになる」と小池さんは話します。一緒に参加する中で見えてくる人となりが見えてくるのも楽しいそうです。
実は、知恵を出しているのは大人だけでなくこどもたちも。
小池さんたちが苺大福作り体験で余ったイチゴを「どうしようか」と悩んでいたら、こどもたちが「イチゴをかけたじゃんけん大会」を提案。こどもたちが先頭に立って実施したじゃんけん大会が大盛り上がりでした。
また、とある出店者の隣では「キッズショップ」を営む小さな商人たちの姿もありました。出店者のこどもたちで、親の姿を見て模擬店を開いていたようです。
「こどもたちをのけ者にしない」のも「まめいち」のこだわり。
こどもたちは遊びの中で、暮らしを学んでいました。
身近な人たちとのつながりや自然の恵を大切にすることが、豊かに生きることにつながるのではないでしょうか。
今一度、足元の小さな芽に目を向けてみたいと思いました。

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更新日:2025年06月30日