家からちょっと出かけて語らう場を、貸しスペースを運営
vol.36 ふれあいサロン みどりの風 さん
築90年の納屋が「憩いの場」に

スズランやフジがほころぶ庭にたたずむのは、築約90年の納屋を改装した貸しスペース「ふれあいサロン みどりの風」さんです。
地域の人たちが集うサロンや定期的に開かれる教室、イベントの活動場所を提供しています。
来訪者を温かく迎える焼き物や看板などは、代表の高野さんが手作り。磨かれた味噌樽や馬車の車輪など懐かしい品もあり、古民家の風情を醸し出しています。
室内は約30畳のフローリングで、梁や柱から昔の納屋の面影が伺えます。プロジェクターや机、イスも整備されており、自由に利用することができます。

取材の日は「映画&お楽しみ会」の日で、貸しスペースは小さな映画館に早変わりしていました。
今回みんなで鑑賞したのは終活の映画。上映後は参加者で感想を共有。「夢を持つのは大切」「百年時代を前向きに」などと立ち止まって考える時間となっていました。
最近の趣味についておしゃべりをする場面も。この日は参加者の一人がハーモニカを披露し、みんなで音楽も楽しんでいました。
映画鑑賞会の参加が3回目という女性は「観るだけでなく、みんなで語り合えることが楽しい」と笑顔を見せます。
映画のほかにも、この場では健康体操や書道教室、英語で歌う会など様々な企画が展開しています。
講座参加をきっかけに場づくりを決意、半年で実現へ

「思いついたら覚悟を持って、結果を出すまでやっていく」
代表の高野さんは、この言葉を胸に活動を続けているそうです。
“農家の嫁”として長年その務めを果たしてきた高野さん。
60代でサロンや貸しスペースの運営という全く新しい挑戦をする決意を固めたのは、東京生活で通った生涯学習センターの講座がきっかけだったそうです。
東京へは、娘さんの出産の手伝いのために通ったそうです。その際に出かけた生涯学習センターの講座で「元気な人もそうでない人もいたけれど、その場にいるだけで連帯している気持ちになった」と新鮮な体験をしました。
それまでの“嫁”としての立場で「家に籠っているとネガティブな気持ちになるけれど、家から出ると前向きな気持ちになる」と感じてきたそう。
長年蓄積してきたそんな想いもあり、生涯学習センターでの経験から、「つくばでも、家から出掛けて人とコミュニケーションできる場所をつくりたい」という気持ちが沸々と湧いてきたそうです。
そんな想いを講座の先生に伝えると「やってみなさい」と背中を押され、高野さんはさっそく行動を開始します。
しかし、当初は夫から反対されたそうです。反対を押し切る形で、これまでは夫に任せていた銀行や行政での手続きを自分でこなし、納屋のリフォームを進めました。
納屋のリフォームでは、床や壁の材質など細かく業者に指示し、家具もそろえました。「『なんとか形にしないと』と次へ次へ進めていきました。不思議と怖さはありませんでした」と振り返ります。
反対していた夫も、そんな高野さんの一生懸命な姿を見て、次第に応援してくれるようになりました。
そして、2017年9月末にオープン。思い立ってから約半年後の実現でした。
「自分で外に向けて役に立つ生きがいを持ちたい」
高野さんの挑戦は、揺るがぬ覚悟で立ち向かう大切さを伝えてくれます。
使い方の自由度の高さが魅力

「部屋が空いていれば、前日の予約でも貸し出しています」
代表の高野さんはそう朗らかに話します。
行政などが運営する施設よりも柔軟に貸し出しているのが、みどりの風さんの特徴。利用料金も使いやすいよう設定されており、一人でも団体でも利用料金は、1時間500円となっています。
書道教室などといった定期活動への貸し出しだけでなく、単発イベントへの貸し出しも行います。そのため、演奏の練習会場として借りる人たちもいるそうです。
平屋で階段がないのも定評があります。活動道具を持ち込むのが楽なんだそうです。
69歳でみどりの風さんを立ち上げた高野さん。
当初は10年活動を続けて「みんなで憩い、コミュニケーションがとれる場を形づくれれば」と志していました。80歳になったら区切りをつけようかとも考えていたそうです。
しかし、8年活動した今となっては「もう少し長くやっても良いかな」と笑顔を見せます。
60代の「最後の一年」で踏み出した一歩は、次の一歩につながっていきそうです。
メモ:ご利用に関するお問い合わせ
電話☎ 029-856-1381(高野さん)

この記事に関するお問い合わせ先
市民部 つくば市民センター
〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
電話:029-855-1171 ファクス:029-852-5897
更新日:2025年05月26日