自立支援につながる前段階から関われる居場所づくりを
vol.33 つくば「こどもの家」食堂 さん
わいわいガヤガヤ、でも落ち着く!

テキパキとお弁当を準備するボランティアさんたち
国道408号から一本入ると、ポツンと建つ大きな洋風のお屋敷が目に入ります。このお屋敷が、つくば「こどもの家」食堂の会場です。
わくわくした気持ちで門をくぐると、お屋敷の入口でこども食堂のメニュー看板とのぼり旗がお出迎えしてくれました。
キッチンの壁に貼ってあるメモを見ると、この日の予約は123個!!
ボランティアさんたちが慣れた様子でテキパキと準備したお弁当が、キッチンにズラリと並んでいました。
提供開始の時間になると、こども達が続々とやってきて、受付には列ができます。やって来るこども達の年齢は幅広く、ほかの食堂ではあまり見かけない中学生の姿もちらほら。このほかにも、孫と参加したり、家族全員で訪れたりとアットホームな空気感です。
スクールカウンセラーの紹介で数年通っているというお母さんも「スタッフが悩みを聞いてくれ、寄り添ってくれる。気の合う友達もできてここで会えるのを楽しみにしている」と笑顔を見せます。
たくさん人がいるにも関わらず、同食堂は終始、落ち着いた雰囲気。ボランティアさんたちは、みんな忙しいはずなのにピリピリとせずに、にこやかに話しかけてくださいます。
初めて参加した記者も穏やかに過ごせて、ゆったりと色んな人と交流ができました。
高校生が考える“地域のためにできること”、社会参加への一歩

こどもたちと一緒に遊ぶボランティアさん
つくば「こどもの家」食堂のボランティアには、近隣の高校生も参加しています。
年下のこども達と一緒に卓球をしたり、ボール遊びをしたりしていて、「やさしいお兄さんお姉さん」という感じです。
取材した日は、3人の高校生ボランティアがいました。
3人は全員3年生。「教育関係に進みたい」「公認心理士になりたい」とこどもや大人たちと関わり合いながら将来を見据えます。
高校生のひとりは昨年から参加し始め、こども食堂を通じてフードロスについて考えるようになったそう。
フードロスを減らすために、自分でもフードバンクを実施できないだろうか――。
その想いを高校の担任に相談したところ、校長先生にも掛け合ってくれ、全生徒に寄付を呼び掛けることができたそうです。
最終的に数百品もの食品が集まりました。「みんなが喜んでくれるところや笑顔になっているところを直接見られたり、感謝してくれたりして嬉しかった」と達成感を滲ませます。
この高校生ボランティア、数日後には大学入試を控えていたそう。会場のみんなで彼にエールを送ろうと、サプライズでウクレレの伴奏とともに合唱して日ごろの感謝を伝えました。

未就学児を連れたお母さんは「高校生がこどもと遊んでくれて、その間にほかの人とお話できたりしてとても助かる」と高校生を頼りにしています。
ボランティアにとっても、同食堂は居場所になっています。長く関わっている人や一度活動を離れても戻ってくる人もいるそうです。
「支援する」「支援される」という枠組みを超えた、関わり合いが見られました。
家庭に居場所がないこどもたちに安心できる場所を

中央が宅間さん
つくば「こどもの家」食堂を運営しているのは、こどもの自立支援や居場所づくりをする「NPO法人マナーズ」さんです。
同NPOの理事長を務める宅間さんは十数年前、教会のユース担当として、育児放棄や虐待などで苦しい思いをしているこども達がいることを知りました。
そこで、家庭に事情があるこども達を自宅に迎え入れる支援を夫婦で始めたそうです。当初は手持ち資金で行っていたそうですが、活動を本格化するために、制度化されている自立援助ホーム「ハレルヤ・ファミリー」を設立。現在は児童相談所とも連携し、家庭の事情を抱えている15~20歳までのこどもの受け入れや、社会へ出て行く準備の支援をしています。
「ホームでは15歳以上の子を受け入れているけれど、もっと早く会って関わっていたかった。安心できる場所をつくってあげたい」
そんな想いから始まったのが、こども食堂の活動です。
活動は口コミで広がり、今では希望者が多いために参加は月1回までとお願いをするほどになりました。
取材した日も、一時保護で受け入れたこどもが参加していました。「いろんな大人と関わって、社会勉強をする機会になれば」と宅間さんは見守ります。
実は同食堂、市内で1カ所目のこども食堂なんです。
当初は補助金もなく、市内外からこども食堂を始めたい人や行政職員が視察にやってきたそう。そのときのご縁で、色んなこども食堂とのネットワークができたり、ボランティアが集まったりしています。
宅間さんは「行政と連携しているので、支援が必要だったらつなぐ役割もできる。“ケア付きこども食堂”とも言えるかもしれない」と話します。
同食堂には、赤ちゃんから一人暮らしのシニアまで、本当にたくさんの人たちが関わり合っています。
“貧困”という線引きはなく、お母さん同士が困りごとをシェアしたり、こども達が遊んだりしています。
こども食堂の立ち上げ当初から参加している子は22歳になり、今度は手伝う立場になったそうです。
あたたかな地域の循環もはじまっています。
こども食堂メモ [5]
つくば「こどもの家」食堂
【日 程】第1、第3水曜日 17:30~19:30
【場 所】つくば市北中妻399-2
【対 象】幼児から高校生以上(一般)
【参加費】幼児無料、小中高生100円、大人300円
【問合せ】電話:029-838-5366
メール:tsukubakodomonoie@gmail.com
*ご参加する場合は、前日17時までにお電話で予約してください。

この記事に関するお問い合わせ先
市民部 つくば市民センター
〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
電話:029-855-1171 ファクス:029-852-5897
更新日:2025年03月28日