子どもも大人も「個性」が光る学びのかたち

更新日:2025年02月17日

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vol.24 むすびつくば さん

多世代の学びの場、「ライズ学園」と「市民大学」がコラボし誕生

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つくばセンタービル1階にある「むすびつくば」=つくば市吾妻

 

「むすびつくば」さんは「子育ち・子育て・学び合いの場」。

つくば駅からほど近い「co-en」(つくばセンタービル内)にあります。

 

運営するのは、子どもの学びを支援している「NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所」さんとつくば市民大学などを運営している「ウニベルシタスつくば」さん。

 

子どもと大人の学ぶ機会をそれぞれ育んできた二つの団体が融合することで、多世代が「ふわっと『結びつく場』」がつくられています。

 

二つの団体は、平日と休日で施設を使い分けています。

 

<平日>は、不登校と言われる状態にある子の育ちと学びに寄り添う「むすびつくばライズ学園」を、<休日・祝日>は、世代と地域を超えた対話で市民が学びあう「むすびつくば市民大学」を開催しています。

 

このほか注目したいのは、私設図書館「リブラリウム」の存在。市民が一箱本棚のオーナーとなり、好きな本やほかの来場者に読んでほしい本を並べられる図書館です。

 

図書館の開館時間は、土日祝日の12:00~16:00です。むすびつくばの館内のほか、館外にあるつくばセンター広場やつくば市民センターでも自由に本を読むことができます。

 

この本棚が、ライズ学園と市民大学に訪れる人たちを結び付ける装置になっているそう。

 

このような私設図書館の取り組みは、全国で広がりつつあります。その中でもリブラリウムの特色は、平日と休日の主な利用者が異なること。

 

平日に来る子どもたちは、この本棚を見て、本棚オーナーがどんな人物なのか想像します。

 

子どもと大人が本を通じて交流を深める一場面もあるそう。

ある日、ライズ学園の子どもが、本棚オーナーに向けて「本を借りていいですか?」と本棚に置き手紙をしたことがあるそう。オーナーも手紙で返事をしたそうです。

 

――このまちにはどんな生き方をしている人たちがいるんだろう。

お互いの立場や考えを想像し、歩み寄る場所がここにあります。

十人十色の個性に向き合い『航海』をサポート

NPO法人 リヴォルヴ学校教育研究所 さん
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「鏡を見ながら迷路を解いてください」。そう指示されてゲームを開始すると……思い通りの線が引けない!!思考と手の動きが嚙み合わない感覚に、ストレスが募ります。

 

これは「読み書きの困難を疑似体験」です。記者は大苦戦しましたが、難なくクリアする人もいるそう。

 

このような得意不得意を「個性」と語るのは、不登校といわれる状況の子どもたちの学びと育ちに寄り添うNPO法人「リヴォルヴ学校教育研究所」の理事長・小野村さんです。

 

同NPOのスタッフも「子どもの個性に応じて学び方が違っていい。一人一人に寄り添うことを大切にしてサポートしている」と話します。

 

中学校教諭だった小野村さんたちは2000年、“学校”での学びが苦手な子どもたちが、その子たちのペースで学び直せる場をつくろうと、「ライズ学園」を立ち上げました。

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NPO法人「リヴォルヴ学校教育研究所」の理事長・小野村さん

 

関わる中で気づいたのは、不登校状態になる子どもたちの多くが“書くこと”にストレスを感じているということ。「会話をしていると納得させることを言うのに、アルファベットのbとdの区別が難しい子もいる」(小野村さん)

 

ライズ学園には一方的に教える授業はありません。まずは、子どもたちの苦手やつまづくポイントをスルーしながら学習をどんどん前に進め、自信を持ってもらいます。

 

「自信がつくと『もっとやりたい』という循環に入っていく」と小野村さん。このように子どもたちから自信ややる気を引き出すのが、同NPOの真髄です。

 

「押し付けるのではなく、子どもが自分で気づいて上手く『航海』していけるようナビゲートする」と自分たちの役割を表現します。この技術は「ファシリテーション能力」とも言えるそうです。

 

同NPOは、子どもたちと向き合う中で生まれた独自の学習法をまとめた教材を作成しています。また、子どもたちが社会を知るきっかけとなる畑体験などを実施する「むすび場」や保護者たちが気軽におしゃべりをする「親カフェ」など幅広い事業を展開しています。

 

同じ「不登校」と言われる状況でも、子どもたちの抱える悩みは十人十色。同NPOのスタッフさんは、それぞれの悩みの根本に目を向け、子どもたちが一歩踏み出せるよう支えています。

地域で活躍する市民が「育て」「育つ」場所

ウニベルシタスつくば さん
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むすびつくばで「市民大学」と私設図書館「リブラリウム」を運営するウニベルシタスつくばさんは、つくばで長年、市民大学を運営してきました。

 

市民大学は当初、中央労働金庫のCSR事業(企業が倫理的観点から事業活動を通じて行う社会貢献)として市民の学び合いの場をつくろうと始まりました。2009年から2018年までの9年間、1300講座のべ約1万2500人もの人が関わりました。

 

市民大学の<市民>は、その土地に在住している者という意味ではなく、その地域で活動する人たちと対話しながら活動する者をさすアクティブな意味合い。

 

市民大学として開講するメイン講座は当然あるものの、<市民>受講生の「こんな新しい講座をやりたい」という提案を実現していった結果、講座数がどんどん増えていったそう。

 

「講座をやる側になった方が学びがある。経験を通じて実際に任意団体を設立した人もいる」と話すのはウニベルシタスつくば代表幹事・徳田さん。市民大学を発端にNPO法人や災害ボランティアなどが発足した例もあるそうで、市民大学が社会課題に取り組む人材育成の場にもなっています。

 

契約満期により市民大学は一度休眠に入りましたが、2024年春、場所を「むすびつくば」に移して復活。「地域の未来を自分たちで考える」をコンセプトに、再び世代や立場、地域を越えた学び合いの場をつくっています。

 

また、「リブラリウム」では<市民>がつくる本棚が並んでいます。本棚オーナーたちは、ライズ学園で学ぶ子どもたちに思いを馳せた本を並べます。そんな本棚には「こんな風に生きてもいいよ」と枠にはまらない生き方を伝える本や人と人との関わりを意識している本が見られるそう。「こういう形で支える場もあるんだと知ってもらいたい」と徳田さんは話します。

 

現在はウニベルシタスつくばが主催する講座とともに、リブラリウムの本棚オーナーが企画する講座も展開しています。講座のテーマは、以前の市民講座を受け継いで「コミュニティ&デモクラシー」「ダイバーシティ&インクルージョン」「サステナビリティ」。

 

新型コロナウイルスの流行を経て、オンラインと現地参加のハイブリット形式で開催することも増え、県外の関係者も参加しやすくなりました。

 

これからどんな講座や活動がこの場所から誕生するのか、ぜひ皆さんも注目してくださいね。

この記事に関するお問い合わせ先

市民部 つくば市民センター
〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
電話:029-855-1171 ファクス:029-852-5897

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