異文化交流と相互理解を後押し、研究者たちが設立した“つくばらしい”組織
vol.23 特定非営利活動法人つくば日中協会 さん
研究者たちが設立、留学生と市民の交流を深め続ける

代表の唐さん=2024年,つくば市吾妻
「筑波大学に毎年来る新しい留学生たちに日本を好きになってほしい。また、現在の中国についても日本人に知ってもらいたい」
特定非営利活動法人つくば日中協会の唐さんは、地域での歩み寄りの尊さを訴えます。
同NPOはつくば市内の研究者が中心となって1993年に設立。中国人留学生が講師となって活躍する「中国語講座」や日中文化の交流イベントなどを通じて、中国人と日本人の相互理解と交流を深めてきました。
唐さんは約30年前、筑波大学の博士課程で学ぶ中国人留学生として同協会に参加し始めたそうです。筑波大学中国人留学生学友会を通じ、友好交流イベントに招待されたのがきっかけ。それから、中国語講座の講師を務めるなどして、同協会を支えてきました。
同NPOは講座以外にも、水餃子(中国では家族団らんをする際の定番料理)を一緒につくるパーティーや筑波山登山などを通じてお互いの文化への理解を深めるイベントを行っています。
「つくばらしさ」を感じるのは、役員メンバーたちの顔ぶれ。多分野の研究者たちが名を連ねているほか、中国人も役員に加わっています。また、監事には日本人と中国人が一人ずつ選出。このような組織は全国にある日中友好協会の中でも珍しいそう。
中国人留学生が講師となり国際交流、約30年続く中国語講座

つくば日中協会さんの目玉事業「中国語講座」は、今年で28年目になるそうです。
現在の受講生は13歳から80代までと幅広い世代。全く中国語を話せない人向けの講座「入門コース」や旅行へ行けるくらいの語学習得を目指す「基礎コース」などがあります。
同協会の設立当時は、市内で中国語を学ぶには個人にレッスンを依頼しなければならなかったそう。そんな時代に、中国人留学生たちが講師となる講座が始まりました。個人に依頼するよりも安く中国語を学ぶことができる機会ができたのです。
語学学校の場合は語学の習得を目指しますが、同協会の講座の本懐は国際交流。一方的に中国語を教えるのではなく、中国の文化や歴史、習慣、観光名所を紹介しながら、先生と生徒が異文化理解をする内容になっているそうです。
開講当初、生徒は主に大学関係者だったそう。生徒側が「教育者」だったこともあり、講師役の中国人留学生が逆に日本語や日本文化を教わることも。「講師(留学生)の日本語力の方が伸びた」と唐理事長はおかしそうに話します。
このような事業の中で、留学生たちは日本の生きた知識を吸収します。
留学生たちの中には帰国後に大学教員となる人もいるそうで、講師経験で鍛えた「教える技術」を卒業後にも活かしているそうです。
国籍や立場を超えて、歩み寄ることのできる場づくりが育まれています。
NPO法人へ、運営継続のために新規事業立ち上げ

「若い人たちにつくば日中協会に参加してほしい」と唐理事長は組織の課題を指摘します。
また、活動を継続させるための財源確保も課題。交流イベントでは留学生から参加費を徴収しないため、これまでは足りない予算は役員が出すことも。「ポケットマネーだけでは続けられない」と危機感を持ったそう。
このような課題を解決する一歩として乗り出したのが、NPO法人になることでした。
法人化したことで、同協会の人脈を生かしたつくばの研究者の派遣や中国の企業からの依頼受注といった事業を始めることができたそう。
日本の研究者は中国でニーズが高く、定年を迎えた人材を中国に紹介し、研究者の働く機会の創出や人材活用に貢献しています。
「日中の国際関係は山あり谷ありだけど、個人レベルではお互いの違うところを理解し、同じ目線で助け合うのが大切」と唐理事長は語ります。
唐理事長によると、つくば市内の中国人の人口は、30年前と比べて約4倍に増えているそう。相互理解の重要性は、ますます高まっています。
NPO法人として新たなステージを迎えたつくば日中協会さんのご活動に興味がある方は、ホームページもぜひ覗いてみてくださいね。
この記事に関するお問い合わせ先
市民部 つくば市民センター
〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
電話:029-855-1171 ファクス:029-852-5897
更新日:2025年02月21日