医療福祉介護の多職種つどい「もやもや」共有
vol.16 医療と介護と福祉でつながる会@つくば さん
医者の視点を知る,考える,行動する

医師による講和会が開かれた=つくば市東新井
地域の医療・介護・福祉について多様な立場の人が集まって、日々の「もやもや」を話したり聞いたりする「医療と介護と福祉でつながる会@つくば」が9月27日(金曜日)、ASHITAE-Lab(つくば市東新井)で開かれました。
集まったのは、医師や看護師、ケアマネジャーなど専門職の方々のほか、医療・福祉・介護に関わる市民活動団体や当事者の方々など計約60人。
今回はゲストとして「医療法人社団 悠翔会」の理事長の佐々木淳さんが登壇。「10年後の地域医療と介護 これから目指すべき道とは」と題して講話をしました。悠翔会は首都圏を中心に24時間対応の在宅医療ネットワークを展開し、患者さんの人生観を大切しています。
佐々木さんは守谷市出身。医師として駆け出しのとき、医療を施しても亡くなるがん患者さんを前に「本当に役に立てているのか」と自問したそうです。そんな中、在宅医療に携わり「人間は病気を治せなくても幸せに生きていけるんだ」と気づき、18年前に開業しました。
現在は全国24カ所の拠点があり、常勤医師は61人で在宅患者数は常時約9千人いるそうです。
老いれば当然、身体の機能が低下して複数の病気を持つことがあります。この病気を全て治療すると医療の「やりすぎ」で悪循環に陥ることもあるそう。このため佐々木さんは「患者さんにとってベストの医療は、必ずしも医療に依存させることではない」と指摘。人生の最期をどう過ごすかは本人が決めることだと訴えます。
また、国民皆保険制度でない国では、日本のように保険の適用範囲内で医療を提案するのではなく、患者さんのニーズにそったヘルスケアビジネスが発展しているそうです。
社会保障の財源確保が課題となっている日本にとって、消費者として医療サービスを受ける海外の実情は、将来を考える一助になります。
また、佐々木さんは在宅医療の普及度や自宅での看取り経験についても地域差が顕著にあることを指摘しました。東京では家で看取る経験をしたことがある人が増えており、最期に関する文化が変わりつつあるそうです。
「医師や看護師、患者はどうあるべきか、考えていかないといけない」と役割やあり方を見つめ直す必要性を訴えました。
今回は国内外のデータや実例を交えながら、専門的な話を分かりやすくご紹介いただきました。医師の視点で、医療・介護の最前線を直接聞くことができるのは、貴重な機会ですね。
佐々木さんの講話を聴いた来場者でディスカッションもしました。
いろんな立場の人たちで考えてみよう

円卓んを使ってディスカッションする参加者=つくば市東新井
丸い板に白い紙を貼り付けたこの物体は??
その名も「円卓ん(えんたくん)」だそうです。
グループに分かれて円形に座り、この円卓んをみんなの膝に乗せます。すると、即席のテーブルができるだけでなく参加者の距離も近くなっちゃう優れもの。
イベントでは、この円卓んを使って来場者が対話する時間もありました。
対話の前に「みんなが何かのプロフェッショナル」と語ったのは発起人で医師の上野友之さん(筑波大学医学医療系)。会場には専門職の人だけでなく、子育て中の人や車いすユーザーもいて、誰もがその立場について良く知るプロフェッショナルです。そこに上下関係はありません。「自信を持って話してほしい」と上野さんは呼び掛けます。
そして、円卓んはこのフラットな場づくりに一役買っているのです。
高齢化による多死社会が到来するものの、医療・介護資源は限られています。これからの暮らし方や地域医療・介護はどうしていくか――。多様な立場の人が円卓んを囲い、各々の思いを出し合いました。
普段の生活では、じっくりと考えることはないかもしれないテーマです。参加者の方々は、自分の中にある不安や想い、疑問といった「もやもや」を解きほぐしながら言葉にしていました。
すぐに答えを出すことは難しいですが、自分の中の「もやもや」を話すこと、他者の「もやもや」を知ることは、小さな一歩を踏み出すきっけになるはずです。
心にくすぶるモヤモヤを形に

医療と介護と福祉でつながる会@つくばのみなさん=つくば市東新井
「医師には何ができるのか、何が求められているのか」。働く中で生まれた上野さんの「もやもや」から始まったのが、「医療と介護と福祉でつながる会」だそうです。
同じ「もやもや」を抱えているのは自分だけではないのではーーとカフェ形式で想いを言葉にする場を開きました。
「医師は病院にいると健康な人と話す機会が少なく、健康な人は病院に行かないので医師と話す機会が少ない」と意外な盲点を指摘する上野さん。病院を出て対話する大切さを訴えます。
テーマは医療に寄り過ぎないようにしているそう(今回はたまたま医療がテーマでした)。「専門職だけでなくいろんな人に来てもらうことが大切」と上野さんは話します。
また、上野さんは「生涯現役スマイリストでいられるまちへ」と呼び掛けています。笑顔は、言葉でなくても誰にでも伝わるコミュニケーションの第一歩です。
どんな状況であっても、笑顔を忘れずに過ごすにはどうすればいいのか、同会は多様な人とつながる中で問い続けています。
多様な立場の人の考えを知るだけでなく、新しいアイデアも浮かぶ場だと思います。上野さんも「ここでできたつながりから新しいプロジェクトが生まれるとうれしい」と胸を膨らませます。
ぜひ気軽にふらっと参加してみてはいかがでしょうか。
≪こぼれ話≫会場を提供するASHITAE-Labさん

常設マルシェ
医療と介護と福祉でつながる会さんは、新型コロナウイルス流行の影響で、一時活動の中止を余儀なくされていました。再開したのは2023年からでした。
それまではBiViつくば内で開催していましたが、再開と同時に会場を「ASHITAE-Lab」さんに移しました。
このASHITAE-Labさんは、福祉事業所とカフェを併設している施設。利用者さんは建物内で軽作業をするだけでなく、カフェでも働いています。
医療と介護と福祉でつながる会では、カフェを利用してイベント後に懇親会も開催していました。
1階の入口付近では、市内の福祉事業所さんで作っている作品や農産物を販売している常設マルシェのコーナーがあります。市内で福祉関係の常設マルシェは珍しいそう。
カフェもマルシェもおしゃれな雰囲気でした。
医療と介護と福祉でつながる会さんのような活動団体もイベントを展開しているので、訪れてみてはいかがでしょうか。
この記事に関するお問い合わせ先
市民部 つくば市民センター
〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
電話:029-855-1171 ファクス:029-852-5897
更新日:2025年01月31日