多分野が交差するイベント展開、豊かなネットワーク育む
vol.7 MSO(エムエスオー) さん
『つながり』作りに苦労する人たちのために

MSO代表の山崎さん=つくば市下平塚のにれ工房
大工、音楽イベント、木工教室――。
市民やアーティスト、職人、農家などが集まったり、繋がったりするイベントを手掛ける「MSO(エムエスオー)」代表の山崎さんは、いくつもの顔を持っています。
山崎さんに団体の想いを聞くため、ご自宅にお伺いしました。
大工として住宅のリフォームや家具作りなどもする山崎さん。ご自宅は木材や竹、工具が並ぶ「にれ工房」の隣にあります。元気なワンちゃんがお出迎えしてくれました。
「いろんな活動をやっているが、どの活動でもやっていることは本質的に同じ。人と人がつながる場をつくっている」山崎さんはそう活動を振り返ります。
MSOは2021年の秋ごろに立ち上がった団体で、当初は「夢創(むそう)」という名称で活動を開始したそうです。
大工やコンサート主催者として築いてきた人脈を活かし、音楽など多様な分野で活躍する人たちや市民が交流する祭典を展開しています。
MSOを立ち上げる以前から、山崎さんは多様な人が交わる場づくりに取り組んできたそう。
そんな山崎さんが“つながり”作りの必要性に気付いたきっかけは、孤独を抱えるママさんたちとの出会いでした。
音楽好きの山崎さんは、TX研究学園駅前でコンサートも主催していました。そこで、一人で赤ちゃんを抱えずっと音楽に聞き入るママさんを見つけました。話しかけると「夫の仕事でつくばに来てから友人が一人もいなくて寂しかったけれど、今日は音楽を聴けて楽しかった」と感謝を伝えられたそうです。
「まだまだ“つながり”を作れなくて苦労している人がいる」と痛感したそうです。
思い立ったら直ぐに行動する山崎さん。
自宅を解放し、ママさん向けのコンサートを企画しました。4年間で開催は約100回に上り、多様な地域のママさんが集い交流する機会になったそう。
このコンサートで初めて出会ったママさんたちが一緒に買い物へ行くような関係になったという報告を受けることもあり「こんなに嬉しいことはない」と山崎さんは目を細めます。
未知の分野や土地で“つながり”を作るには勇気が要りますよね。そんなときに架け橋になってくれる存在がいると、安心して一歩を踏み出せると思います。
市民の「やりたい」を発揮する場を創り出す

にれ工房のワークショップで作られた作品=つくば市下平塚
MSOに関わっているメンバーは、なんと100人を超えるそうです。メンバーは音楽家や木工作家、学生など、多才な顔ぶれ。しかも、日々増えているそう。
音楽祭など新企画の立ち上げに際し、山崎さんがメンバーに協力を呼び掛けると、関心を持った人たちが手を挙げるそうです。
自分の「やりたい」を発揮する機会に対し、しっかりとアンテナを張っているメンバーが揃っているのだと記者は驚きました。
そんな同じ熱量や目線を持った仲間をいかに集めているのか、山崎さんに聞きました。
「自分の考えていることをとにかく話す」と山崎さん。その対話はときに3~4時間にも及ぶそう。
お互いの力を生かすためにも、心から打ち解けて一緒に挑戦していける人かどうか、しっかりコミュニケーションを重ねるそうです。
山崎さんは、多様で優秀な人材が集まっていることがつくばの魅力だと強調。一方、「つくば市は移り住む人も引っ越す人も多いからこそ、つながりが作りにくい土地でもある」と指摘します。
つくばでは、自発的にボランティア活動を始めるものの「たいへんさ」や「よろこび」を分かち合う仲間がいない状況のため、なかなか活動を継続できない方々も見られるそうです。
「そういった活動をやめないでいてもらうためにも、“ここ”に来れば誰かとつながれるとういう場をつくりたい」と山崎さんは語ります。つくば市社会福祉協議会とも連携し、市内で活動している人同士でつながる機会づくりに力を入れています。
新旧の住民がいる中でつながりが希薄化しやすい一方、コミュニティの「自由自在さ」もあるそうです。
多様な人の自由な発想で、これまでにないネットワークがつくばに生まれつつあるのだと感じました。
国際色豊かなつくばの芸術家と交流しよう

2023年にMSOさんが開催したイベントの様子=つくば市吾妻
「パフォーマンスをしたら帰るのではなく、他の出演者や出店者とつながってから帰ってほしい」と期待を込めるMSO代表の山崎さん。
ただ人が集まる機会を作るのではなく、「音楽」や「アート」「木工」など多分野が混ざり合うのもMSOが展開するイベントの特徴です。
2023年は、音楽家と職人たちがコラボレーションした企画「つくば音楽祭×つくばな匠」をつくばセンター広場で開催しました。
マリンバの演奏や海外の民族音楽といった国際色豊かな音楽家のほか、つくばを拠点に活動する木工作家や刀剣作家たちが集い、つくばの文化が色濃く現れました。作家同士が交流を深める姿も見られたそうです。
2024年10月12日(土曜日)は、つくばセンター広場で「音楽」と「匠」に加え、「つくばの子ども」「食べ物」にも焦点を当てた祭典「つくばな祭2024 匠と子どもと音楽と」が開かれました。
この記事に関するお問い合わせ先
市民部 つくば市民センター
〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
電話:029-855-1171 ファクス:029-852-5897
更新日:2025年01月26日