どの国にいても自分らしく生きるために、日本語教室を開いて40年
vol.5 国際交流ボランティア「虹の会」 さん
寄り添う日本語教室、日常で使えるように

虹の会さんが開催する日本語教室=つくば市天王台
木々に囲まれた筑波大学の学生宿舎近くに「虹の会」さんの活動場所はあります。
宿舎には留学生や海外から来た研究員たちとその家族も入居しています。同会は、その方たちに向けて日本語教室を行う国際交流ボランティアです。
日本語初心者向けに3クラスあり、1981年に設立してから約2千人以上が卒業。これまでの生徒さんの出身地は、なんと50ヵ国以上に上ります。
「文法だけでなく、日常で使える表現を意識して教えています」と話すのは日本語指導を務めるボランティアさん。多様な国籍の方が参加されるため「宗教などによるタブーに配慮する」ことにも注意しているそうです。
実は、つくばで暮らす外国人の方は、日本語が話せなくても英語で不便なく生活ができる人も少なくありません。
職場では英語で問題なくコミュニケーションができ、各国のコニュニティにつながることで十分に生活できるからだそうです。
しかし、子育てしているとそうはいきません。
病院や子どもの学校では、手続きや配布物の理解に日本語が必要になります。ボランティアさんは「ご家族が生活に困らないように手助けしたい」と力を込めます。
同会は日本語教室のほか、「個人日本語指導」と「文化交流」も展開しています。
個人日本語指導では、「留学生たちのご家族が家でポツンと孤立してしまわないように」と乳幼児などの子育てで教室に通うのが難しい方に対して家庭訪問をします。
「『同じ住民』として、一緒につくばで暮らしていることが当たり前になれば嬉しい」とボランティアさんは語ります。
虹の会のみなさんは「先生」「生徒」の枠組みを超え、同じ地域に住んでいる者同士、当たり前に助け合う関係をつくり出しているなと感じました。
日本を楽しんで、着物や季節の行事を体験

虹の会メンバーと着付け体験をする留学生たち=つくば市天王台
虹の会メンバーには、海外経験のある人が少なくありません。慣れない土地で暮らしていたとき、助けてくれたのが現地の方々だったそうです。
そんな海外生活での「嬉しかった経験」「楽しかった経験」が、つくばでの外国人支援の原動力になっています。
同会では、留学生たちに「日本での楽しい思い出をつくってもらいたい」とお花見や着物の試着体験といった文化体験イベントを年に4回程度行っています。
筑波大学のグローバルビレッジ学生宿舎で2024年6月30日、文化交流会「夏に着物にチャレンジ」が行われました。
同宿舎の和室などにボランティアさんが用意した着物がずらりと並んでおり、参加留学生たちは好きな柄の着物を選択。全員の着付けが終わると笑顔の輪が広がり、撮影を楽しんでいました。
イベントではこのほか、着物に関するレクチャーと七夕についての紙芝居もあり、参加者は日本文化の「背景」についても理解を深めていました。
ボランティアの中には、日本舞踊や茶道、華道などをたしなむ方がいるそうで、特技を活かした文化交流となっています。ボランティアの着付けの手際の良さに驚きました。
逆に、留学生から母国の文化について教えてもらうこともあるそう。
「世界各地の慣習や、テレビでは知れない海外の人が抱えている問題、国の事情を教えてもらうこともあります」と異郷の地に思いを馳せています。
日本語指導や文化交流を通じ、日本を堪能した留学生たちは、その経験をしっかり母国に持ち帰っているそう。
メンバーの方々は「『日本を好きになりました』『国に帰ったら皆に教えます』と言ってくれる方もいます」と笑顔で活動を振り返っていました。
虹の会さんの想いは、生徒さんの帰国後にもつながっています。
40年超の歴史をつなぐ

虹の会のみなさん=つくば市吾妻
「『日本に来てよかった』と思ってもらいたいと活動を始めた先輩たちの想いを途絶えさせてはいけない」と代表の市村さんは先を見据えます。
1981年に設立し、40年以上もの月日を重ねてきた虹の会さん。
活動を継承していくためにも、新しいボランティアを募集しています。
入会のために必要な資格はありません。
しかし、外国人への日本語指導に慣れるまでには時間がかかるそうです。
ボランティアで学習会を開き、先輩の日本語教室を見学して、「やさしい日本語」や指導方法などを学んでいきます。
苦労もあるそうですが、日本語が「分かった」瞬間や日本社会に安心感を得ていく瞬間に立ち会う喜びがあるそう。「気持ちが触れ合った瞬間はすごく嬉しい。他では味わえない喜びがあります」とやりがいについて教えてくれました。
現在の会員は30人超。活動の雰囲気についてボランティアさんたちは「(活動について)言いたいことがあれば言うし、周りの人もその意見を受け止める」「違う意見も面白がっている人が多い」と振り返ります。
海外の方々と時間を共にしてきたからこそ、多様な意見に耳を傾ける姿勢が身についているのかもしれませんね。
また、活動が長く続いている秘訣について「できる人ができる時にできることを無理せずにやっている」と声をそろえます。
どの国で暮らしていたとしても自然体で生きる――。
そんな生き方を実践してきた方々だからこその「続ける秘訣」だなと感じました。
ご活動に関心がある方は、ぜひ「虹の会」さんのホームページをご確認ください。
この記事に関するお問い合わせ先
市民部 つくば市民センター
〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
電話:029-855-1171 ファクス:029-852-5897
更新日:2025年01月31日