医療的ケアを必要とする子どもたちの視点を持とう、緊急事態でいきる繋がりを

更新日:2025年01月26日

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vol.3 医療的ケアを必要とする子どもの親のネットワーク 非営利活動法人かけはしねっと さん

車いすの目線でまちを見よう「つくばでWheeLog!」

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コリドイオ周辺でバリアフリーを探す「つくばでWheeLog!」が行われた=つくば市吾妻

 

お出かけするとき、ずっと快適で気分良くいられることって大切ですよね。

車いすでも楽しくお出かけできる街づくりを考える街歩きイベント「つくばでWheeLog!」が2024年6月8日に開かれました。

 

主催したのは、医療的ケアを必要とする子どもの親のネットワークづくりをする「非営利活動法人かけはしねっと」さん。イベントには普段は車いすを押しているご家族や医療従事者、自治体関係者が参加し、車いすに乗ってコリドリオ周辺を巡りました。

 

いざまちへ出発してみると......

「腕が重くなってきた」

「ガタガタ道の振動でかゆくかってきた」

「ちょっとした傾斜で身体が傾く」

と苦戦。歩きとは感覚が全く違うそうです。

 

通勤や通学で多くの人がスタスタと歩いている道ですが、車いすで進んでみると小さな段差や傾き、道幅がとても気になります。

 

かけはしねっとの根本さんは「介助の不便と車いすに乗ってみての不便が違うという発見ができて良かったです」と手ごたえを感じていらっしゃいました。

 

教育の中でも車いす体験は行われていますが「やはり教室や体育館で乗るのと、街なかで乗るのでは違う」と根本さん。「街なかでどんな不便さがあるのかと意識することが大切。一人でも多くの人に伝わってほしい」と話されていました。

バリアはあちこちに、視線で変わるまちの景色

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つくば市内外で医療的ケアを必要とする子どもの支援に関心のある人が集まった=つくば市吾妻

 

街歩きイベント「つくばでWheeLog!」を詳しくリポートします!

 

街歩きは、5~8人の3グループに分かれてスタート。

記者は「コリドリオ~日航ホテル~つくば文化会館アルス」コースに同行しました。

 

行政の福祉担当者たちが車いすに乗り、車いすユーザーとともに気づいたことをバリアフリーマップアプリ「WheeLog!」につぶやきました。

「WheeLog!」には目的地のバリアフリー情報が記録してあり、初めて行く場所に不安を抱えている参加者の助けになっていました。

 

参加者たちは「ちょっとした段差でも上がるのに苦労するね」「毛足の長い絨毯は走りづらいね」「ペデストリアンデッキの坂は、タイルの種類によって走りやすいね」と気づきを投稿していきます。

 

また、介助者からバリアフリーについても教えてもらいました。

エレベーターの鏡は車いすでそのまま入って、出る時に後ろを確認するためのものだそうです。多目的トイレでは介助を実演してもらい、介助者のスペースが十分に確保されているかどうかも確認することができました。

 

ちなみに、コリドリオ内のエレベーターについては「施設の案内表示が下にあって車いすの人にも見やすい」「エレベーター内を確認できるモニターが外にあって良い」「エレベーターを待っている間に座れるところがある」など褒めていただきました(^^)

 

このほか、記者は駅周辺のグルメを巡るグループにも同行しました。

坂道になっている歩道橋は、車いすで上るには一苦労。逆に下る際は、スピードが出過ぎてしまって怖そうでした。

 

狭い歩道は車道側に傾いており、真っすぐ進もうとしても自然と車道に向かってしまい危険を感じました。

 

たった5センチの段差も車輪が空回りして超えられません。

グルメにありつく前にたくさんの「バリア(障害)」がありました。

 

歩き方が変わるだけで、これほど街の景色が変わるとは......。

今まで見えていなかったものを痛感する一日でした。

いざという時に助け合う繋がりを求めて

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笑顔を見せる「つくばでWheeLog!」の参加者たち=つくば市吾妻

みなさんは「医療的ケア」と聞いてイメージが浮かびますか?

呼吸を補助する「人工呼吸器」や喉にたまる唾液や痰を吸い取る「吸引」、チューブで胃に栄養を送る「経管栄養」などがあり、障害の程度や医療への依存度によって必要なケアは異なります。

 

こういったケアで使う「医療デバイス」は、電化製品。

災害発生などによる停電は命に直結するのです。

 

いつ発生するのか、被害がいつまで続くのか分からない--。

ケアを必要とする本人も家族も見えない不安を抱えていらっしゃいます。

 

非常時に避難する際は、医療デバイスを車に積み込んで移動し、様々な人が集まる避難先でも使える環境を確保しないといけません。このため、福祉避難所はあるものの、避難をためらう人も少なくないそうです。

 

そんな困った時に「うちに来て大丈夫だよ」と言い合える関係づくりに取り組んできたのが「かけはしねっと」さんです。

 

親の会として2016年にスタートし、2020年には特定非営利活動法人となりました。

年1回のシンポジウム開催やオンラインミーティング、イベント企画などを展開。助成金を活用しながら活動の幅を広げてきました。好きな時に気軽に参加できるよう、会費や年会費はないそうです。

 

こうして築いてきた関係は、緊急事態に活かされています。

 

新型コロナウイルス感染症が拡大した際には、医療的ケアを必要とする子どもとその家族の受け皿が軒並み閉鎖してしまいました。また、日常生活でも必需品のマスクの品切れが続き、大きな不安にさらされてしまったそうです。

 

そこで孤立解消やマスクの確保などで一役買ったのが、かけはしねっとさんのネットワークでした。

 

ケアに必要なのは、道具だけでなく「頼り先」や「相談できる力」なのかなと考えさせられました。

 

現状を一つ一つ変えていくかけはしねっとさんのご活動は、未来の困っている人たちに希望を届ける「架け橋」にもなっているなと思います。

 

*「WheeLog!」とは

バリアフリーマップのプラットフォーム。アプリで車いすユーザーが利用できる設備や施設を投稿し合い、おでかけに必要な街のバリアフリー情報を共有しています。

https://wheelog.com/hp/

この記事に関するお問い合わせ先

市民部 つくば市民センター
〒305-0031 つくば市吾妻一丁目10番地1
電話:029-855-1171 ファクス:029-852-5897

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