つくば初&最大のクラフトビールイベントの軌跡
Case16. 永田 洋(ながた ひろし)さん|つくばクラフトビアフェスト実行委員会 実行委員長

つくば市内で開催された実行委員会の会合にて。一番左が永田さん
今回で12回目を迎える「つくばクラフトビアフェスト2025」。8月1日から3日の間、つくばセンター広場で開催され、全国から40のブルワリーとつくば近郊の飲食店20店が出店します。前回は1万人が市内外から訪れ、国際色も豊かな夏のつくばの風物詩となっています。つくばクラフトビアフェスト実行委員長の永田さんに、今回の意気込みやこれまでの軌跡を伺いました。
ゼロからのスタートと「原動力」
「初めて開催したのは、2012年9月のことです。当時はクラフトビールを飲みたいと思っても、つくばで手軽に入手できる場所がまだ無く、基本的には都内に出向く必要があり、学生にはかなりハードルが高かったんです。そこで自分達がつくばでクラフトビールのイベントを企画すれば、いろいろなビールが飲めるし、みんなで楽しめるのではと思って始めたのがきっかけです」と立ち上げ時は、筑波大生だった永田さんは振り返ります。

つくばクラフトビアフェスト実行委員長の 永田さん
「在学中は、イベントを企画するサークルに所属していました。当初は同級生や後輩と筑波大学の構内で開催することを考えていましたが、お酒のイベントはNGだと大学側に断られてしまいまして。別の場所を探している中で、『つくばセンター広場で開催できたら!』という話になったんです」
当時は、国内のクラフトビール醸造が本格的に盛り上がり始めた段階で、一部の愛好家を中心に、人が集まる都市部では大きなイベントが開催されていましたが、回数も少なく、地方都市で開催されることは稀でした。
2024年開催時のつくばセンター広場の会場の様子【3点とも提供写真】
「しかし、当時のつくばセンター広場は、現在ほどイベントを気軽に開催できる場所ではありませんでした。つくば市役所、つくばセンター地区活性化協議会、そしてホテルオークラ(現ホテル日航つくば)さんなど、関係がありそうな所を手探りで調べて、直接相談しながら、使わせていただくために必要なことを固めていきました。
つくばセンター広場というのは、実は法律的には「道路」で警察署に道路使用許可の届出が必要だということをその時初めて知ったり、市も前例がなかったこともあり、調整や準備は本当に大変でした。そして企画開始から4か月ほどの準備期間を経て、何とか第一回目を開催できることになりました」と苦労を語ります。
国際色豊かなつくばの新たな交流の場に【提供写真】
永田さん達は、第一回目を開催した後も、年に1回のペースで継続して開催を続け、回を追うごとに改善を重ねていったそうです。
「最初は、もうとにかくやるしかない!という感じで、イベントでは毎回、大小様々な課題や問題は起こりましたが、常に前向きな姿勢で、それを失敗だとは感じていなかったですね。
例えば、つくばセンター広場でお酒をメインとしたイベントを開催するのは市としても初めてだったんです。開催条件として参加者全員の年齢確認をしてほしいと市から指示があり、来場したお客様一人ひとりに受付で名前を手書きで帳簿に書いていただき、リストバンドを渡すことになりました。しかし、想定以上に来場があり、大行列が生じて『せっかく来たのに中々飲めないじゃないか!』とクレームをいただくような事態になりました。
今は、もちろんそのような入場システムではありませんが、このように運用しながら、いろんなことをトライアンドエラーで改善していった感じです。でもそういう感じが実は結構好きだったんですね」と語ります。
イベント名の由来、毎年異なる「テーマ」を設定する理由
「一番最初に、イベントをやろうと思った時にイメージしていたのはドイツのビールの祭典『オクトーバーフェスト』だったんです。そこで『つくばオクトーバーフェスト』という名称を考えていたのですが、商標の問題でそれは使えないということがわかりまして。
でも「つくば」というワードは絶対使いたい。ビールはクラフトビールを主に扱うので「クラフトビア」。初期衝動の『オクトーバーフェストをやりたい』という気持ちは忘れたくなかったので、一番最後は「フェスト」というドイツ語読みにして、名付けたんです」と企画当初の情熱が実はネーミングにも隠されていることを教えてくれました。

つくばクラフトビアフェスト2025のビジュアルイメージ。
イラスト:サノユカシ デザイナー:なおちゃん【提供画像】

つくばクラフトビアフェストでは、毎年「テーマ」を設定しています。今回のテーマ「New&Traditional」について意図やねらいを伺ってみました。
「いろんな形でビールを楽しんでいただけるよう、毎年その切り口となるようなテーマを第一回の開催時から設定しています。これをまず知っていただくと嬉しいですし、フェストをより一層、楽しんでいただけると思います。
6000年に及ぶビールの歴史には、麦とホップそして職人の情熱が織り込まれています。一方で、最近ではフルーツやスパイスを使った新感覚ビールやライフスタイルに寄り添う選択肢となるビールも続々登場しています。
今回のフェストでは、こうした伝統(トラディショナル)と革新(ニュー)の両方に触れながら、自分好みの1杯と出会えるよう『ビールコンシェルジュ』や好きなビールを探し出せる工夫を用意しています。もちろん、クラフトビール初心者も大歓迎です」と説明してくださいました。


実行委員のミーティング。「ビールコンシェルジュ」の説明にも活用できるよう、様々なブルワリー、スタイルのビールをテイスティングし、コメントや感想を共有します。
実行委員は、全員がボランティアで、毎年メンバーが楽しんでイベントづくりに参加できる雰囲気を大事にしているそうです。「出店者の皆さまは、全員がプロフェッショナルです。次はもう出店しない...ということがないように、主催者として信用・信頼していただけるよう、毎回真剣勝負で開催を重ねてきました。

一方で、我々は「みんな」が楽しめるということを、とても大事にしています。ブルワリーさんの売上がめちゃくちゃ上がった時や、お客さんで会場が賑わって楽しんでいる姿を観るのはとても嬉しいですが、同時に実行委員やボランティアで参加するメンバーも楽しんでいることも大切です。イベント当日はもちろん大変な場面もありますが、運営するメンバーが楽しめないような形では、続けてはいけないとも考えています」

「最初の開催当時は学生だった私や仲間も社会人になり、実行委員会の中心メンバーも世代交代しています。ボランティアベースのイベントでありながら、これほどの規模で第12回目の開催を迎えることができたのは、参加する人の好きなこと、自分がやりたいと思ったことをやれることを尊重してきたからだと思います」と学生やOB、社会人など多様なメンバーから構成されている、実行委員会のあり方や考え方についても語ってくださいました。
イベントの公式ホームページのBLOGでは、出店に関する情報に加えて、イベント当日までの活動報告も毎回、丁寧に紹介されており、つくばクラフトビアフェストが続いている背景を窺い知ることができます。
「まだ知らない」という方ほど、ぜひ楽しんで欲しい
クラフトビールをまだ飲んだことがない方、初心者に向けて永田さんは「小さいサイズでいろいろと飲み比べができるセットがおすすめです。ビールには様々なスタイルがあり、同じスタイルでもブルワリーによって味が全然異なります。試しながら、自分の好みがきっと見つかると思います。
あと、そのビールを作ったブルワリーの方々が直接出店されていますので、作り手と話すことも楽しいですよ。意外かもしれませんが、クラフトビールをあまり知らない人達とコミュニケーションすることが好きな作り手の方は多いんです」と飲むだけではないフェストの楽しみ方について、語ります。

公式ホームページ用の撮影の様子。身体に障害のあるメンバーも活躍しており、インクルーシブな視点と配慮も取り入れながら準備が進んでいく。
「出店されるブルワリーさんも、つくばはクラフトビールがまだそこまで浸透していない土地柄だと感じることが多いそうです。『つくばに来るの、楽しいよね』ということをよく伺います。クラフトビール初心者の方こそぜひ、お店の方も忙しそうにされている場面もあるかもしれませんが、一言でも話しかけていただけると、きっとアドバイスをしてくださると思いますよ」
全国各地のブルワリーさんが出店【提供写真】
「何を話せば良いかわからない...と思ったら、今回のテーマ「New&Traditional」について伺っても良いかもしれませんね。例えば、作っているビールのスタイルは伝統的なドイツビールでも新しい挑戦であったりするかも知れませんし、そのブルワリーにとって何がニューで、何がトラディショナルか、そういう切り口から飲むクラフトビールを選ぶのもアリかも知れません」と会話のきっかけについてもアドバイスをしてくれました。
地域のグルメ、子供向けのワークショップコーナーなども準備され、家族で楽しめる工夫も【提供写真】
ドイツの「オクトーバーフェスト」では会場で大勢のダンスタイムがあるのが有名です。最後に永田さんは、「毎回、ステージイベントも企画していますのでチェックしてみてください。DJブースを設置して、その周りで音楽に耳を傾けたり、自由に踊れる場を設けているのですが、年齢層も国籍も様々なお客様が楽しそうにステップを踏んでいる光景が、個人的にはこのイベントを楽しんでくださっているなと実感する瞬間だったりします。年齢関係なくぜひ、思い切って踊ってみると楽しいと思いますよ!」とビール以外の楽しみ方についても紹介してくださいました。
2024年のダンスフロアの模様【提供写真】
出店情報やスケジュールなど、イベントの詳細は公式ホームページをぜひご覧ください!
【お酒は20歳から。飲酒運転は絶対におやめください】
この記事に関するお問い合わせ先
市長公室 広報戦略課
〒305-8555 つくば市研究学園一丁目1番地1
電話:029-883-1111(代表) ファクス:029-868-7628
更新日:2025年07月17日