「まちのお豆富やさん」を未来に!東京・下町の大豆専門問屋の三代目が「つくば」を選んだ理由

更新日:2025年07月09日

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Case15. 金原 慶行(かねはら のりゆき)さん・朋子(ともこ)さん|おぼろ豆富・湯波専門店『まめ乃家』

墨田区で大豆問屋を家業として経営されている金原さん。豆富の製造と販売、在来種の国産大豆の生産など新たな事業を始める拠点として「つくば」を選び、市内マルシェなどへの出店を通じて、ファンと仲間を増やしながら、2025年6月、つくば市手代木地区に「まめ乃家」をオープンされました。そのストーリーをご紹介します。

まめのやを開業した金原さん夫婦

町のお豆富屋さんの「味」を未来に残す「決意」

1960年頃、「町のお豆富屋さん」は全国に約5万軒、現在のコンビニの数と同じくらいありましたが、日本の食文化やライフスタイルが変わり、豆富製造業の採算悪化や深刻な後継者不足が重なったことで、今は約4千軒を割るほどに激減してしまったそうです。「町のお豆富屋さん」に大豆や「にがり」など製造に必要な資材を卸してきた全国の大豆問屋さんも、廃業や事業の多角化など経営判断を迫られる状況となっています。

豆腐づくりを学ぶ金原さんの写真

同じ墨田区の「三善豆腐工房」さんから、豆富づくりを学ぶ金原さん【提供写真】

こうした環境の中、金原さん達は「自分たちでも豆富作りに挑戦して未来に残していこう」と決意します。2021年、同じ墨田区内の豆富屋さんで製造方法を学び、できたものを都内近郊のマルシェなどで出店をしながら、製造と販売ができる実店舗とその拠点を探すという挑戦を始められました。

なぜ、「つくば」に

その拠点の条件として、金原さん達が考えていたことは、「自然豊かで農業が盛んな場所、大豆問屋のある墨田区からアクセスが良いこと、都会と田舎が融合した町」だったそうです。奥さんの朋子さんが茨城県出身でなじみがあること、若手農家さんが活躍していること、そして研究学園都市として最先端の技術が集結する都市でありつつ、昔からの街並みも残っていて筑波山やその山麓の風情や自然の豊かさなどから「つくば市」を拠点の候補に動き始めます。

マルシェで金原さんのテントに行列ができている写真

つくば市内の公園で開催されているファーマーズマーケット「Village Market Tsukuba」に定期出店を続けるうちに、開店前から地元のお客様が並ぶ人気店に!【提供写真】

出店を始めた当初、つくば市内には取引先や顧客など特段の「あて」はなかったそうです。しかも、2021年当時はコロナ禍ということもあり、移動が制限される中で、インターネットやSNSで調べるだけでなく、つくば市役所の広報戦略課内にある移住定住窓口にオンラインで相談をされるなど、足を使った情報収集が難しい中で準備を進められました。

出来立てのおぼろ豆腐をスプーンですくいあげた写真

看板商品のおぼろ豆富。一口食べればファンになってしまうほどの上品な甘みと濃厚な風味の秘密は、原料として在来品種の国産大豆のみを使っていること。【提供写真】

研究学園の小野酒店さんとの出会い、Village Market Tsukuba への出店で広がった「縁」

こうした中で金原さん達が出会ったのが、研究学園の小野酒店さんです。「おしゃれで素敵な外観に惹かれ、『ここで販売させてください!』と飛び込みました。小野さんは見ず知らずの私たちの熱意を快く受け入れてくださり、軒先で販売させて頂けることになりました」と語ります。

その後、つくば市内の公園で開催を始めたばかりの「Village Market Tsukuba」というファーマーズマーケットから声がかかり、第一回目からのメンバーとして参加することになりました。

当時、つくば市はコロナ禍における「密」を避けた賑わいの創出策も兼ねて、公園など公共空間の利活用を積極的に進めていましたが、そこで、ほぼ毎週末に開催するファーマーズマーケットという新たな「場」が生まれ、出店者同士のコミュニティが育ち始めているタイミングでした。

ヴィレッジマーケットのメンバーとの記念写真

「Village Market Tsukuba」を主催するYukiさん、 Georgeさん、Emikaさん(中央看板)、出店者の皆さまとご家族、金原さん達【提供写真】

「Village Market Tsukuba」は、つくば市内だけでなく関東近郊からもこだわりをもった素晴らしい生産物や加工品を販売する様々な生産者さんが出店されていることが大きな特徴です。コロナ禍で大変な時期であったからこそ、自分たちの手で作ってきた良いものを守りたい、広めたいという思いを持った人々が集まるオアシスのような場が、つくば市内の公園に毎週末、現れるようになりました。

ブースに出店する金原さんたちの写真

「Village Market Tsukuba に出店するようになって、たくさんの若手農家さんと繋がり、大事な仲間、お客様と出会えたことで、つくば市で開業する!という想いに迷いが無くなりました」と金原さん【提供写真】

4年間の「つくば通い」を経て、テナント探しと二地域居住

都内からつくば市内のマルシェへの出店を続けながら、テナントを探し続けましたが、昨今の不動産価格の高騰や人口増のためか、中々条件に見合った物件が見つからなかったそうです。

まめのやさんが見つけたテナントの外観写真

まめ乃家さんの店舗

東京から何度も足を運び、物件探しをする日々。ある日、金原さんは普段は通っていなかった家から近所の道を走っていて、候補となる物件を偶々、クルマの窓越しに見つけます。そしてすぐに問い合わせて内見をすると、現在は空店舗で、豆富の工場兼店舗とするには大幅な改装も可能で、条件的に見合う物件がようやく見つかったとの思いから、ここにすることを決めます。店舗となる物件が決まり、二地域居住をスタートしました。

お店の入り口にあるランプと真鍮でつくられた屋号の写真

支援制度とクラファンの実施

金原さんは、具体的な拠点設置にあたって、資金的な支援制度などを墨田区の「すみだビジネスサポートセンター」(すみさぽ)に相談したところ、本社が都内にある企業が応募できる東京都の支援制度の紹介を受けます。厳しい選考審査がある制度で、申込の締切直前でしたが、金原さんは必要な事業計画書等を急いで作成し、見事採択されました。

自己資金だけでなく、経営者の視点で、地元の墨田区の担当部門にも相談しながら、適切な支援制度の情報収集や活用もしっかり行われるなど、店舗の設計だけでなく資金面等にも気を配りながら、着実に開業準備を進めていきます。

レジカウンターでにこやかに談笑する金原さん夫婦の写真

新店舗のプレオープンに駆けつけたVillage Market Tsukubaの出店仲間の皆さんと金原さん夫婦。

一方で、新しい挑戦には想定外のことが起こるのも、よくあることです。

工事が順調に進む中、保健所等の関係機関の許可手続きに苦慮し、製造設備で追加の投資が必要となる事態が生じたそうです。金原さんは「事前に入念に調べていたはずだったのに、追加の設備投資が生じた時は正直、困ったなと思いましたが、「すみさぽ」に相談してチャレンジした東京都の支援制度などあらかじめ準備をしておいたことが功を奏し、本当に助かりました」と振り返ります。

豆腐をつくる工房と店の間の窓越しに談笑する金原さんの写真

さらに、社会全般の物価高騰に伴う資材の価格改定の影響も加わり、店舗部分の改装費の一部が不足することがわかってきました。そこで、金原さんは「クラウドファンディング」でも、その部分を補うことを追加で実施することにしました。

クラウドファンディングでは、何と公開初日で目標金額を達成し、延べ156人の方が支援するなど、4年間の金原さん達の活動と新店舗への期待、お二人の人柄を慕うサポーターの皆さんの強い応援の気持ちが現れたプロジェクトとなりました。

これから「つくば」でやりたいこと

金原さんが初めて在来大豆のお豆富を食べた時、そのあまりの美味しさに感動し、「大豆屋としてこの在来大豆を無くしてしまうなんてもったいない!未来へ残していかなきゃ!」と強く思ったそうです。そして、全国各地の在来大豆を作る農家さんと直接繋がり、在来大豆に特化した、豆富屋さんを志し、その拠点としてつくばを選ばれました。

ショーケースにならぶ商品の写真

豆富の工房を併設したお店では、搾りたてのフレッシュな豆乳、出来立てのお豆富がショーケースに並びます。

金原さんは「日本の古き良き町の豆腐屋文化を、そして昔からその土地に伝わる在来大豆を未来に繋いでいきたいと思っています。ただ豆腐を作って販売するということではなくて、その豆腐ができるまでに誰がどこでどんな想いを込めて作ったのか、きちんと伝えていけるお店を作りたい」と語ります。

にこやかに豆腐スイーツとドリンクをつくるスタッフ2人の写真
お店のロゴがはいったプラカップに注がれた、ソイミルクティの写真

店内のカフェスペースでは、「ソイミルクティー」を楽しめます。台湾の豆富スウィーツである「豆花」も準備中とのことです。

消しゴムでつくられた大豆の形をしたスタンプの写真

カフェスペースでは今後、味噌作り体験などのワークショップや大豆食品や農業のことなどを学べる場としてイベントも開催される予定です。

木の枡にもられた、大豆の写真

さとうがいらないほど甘いから「さとういらず」、お酒の肴(さかな)になるほど美味しいから「肴豆」、台風が来ても水をくぐってでも育ってほしいという願いから「みずくぐり」など在来大豆は品種名もユニーク。

また、「食べ物の背景にあるものをよく見てみることで、今まで気づかなかったすばらしさ、豊かさ、大切なものが見えてくるのではないかと思っています。食べるという行為は、ただ食欲を満たすだけではなく、きっと想いや文化も一緒に自分の中に取り込むことだと思います。大切なことが見えにくくなっている今、大豆を育てる人、豆腐をつくる人、食べる人をつないでいきたいです」と豆富づくりの好循環を通じた、未来への思いも語られています。

大豆農家さんと金原さんの記念写真

オープン時に提供する豆富の原料として使う在来大豆は、筑波山周辺で育てる農家さんによるもの(黄色のシャツのお二人)。このほかにも、在来大豆を育ててくれるつくば近郊の農家さんがいらっしゃいます。

「まめ乃家」さんの、おいしい豆富づくりを通じた、つくばからの挑戦、食べて応援したいですね!

お店の概要

カウンターに立つ金原さん夫婦の写真

豆富工房とカフェスペースを併設。国産の在来大豆に特化し、しぼりたての豆乳や出来立てのおぼろ豆富を提供されています。

営業日

金・土・日 11:00〜17:00まで。
(月~木は定休日)

こちらは2025年6月オープン時の情報です。営業日は変更する可能性があります。詳細は必ず、まめ乃家さんの公式情報をお調べください

販売商品

●おぼろ月、おぼろ湯波、おつまみ大豆、まめ乃家味噌、煎り豆など

●抹茶や台湾茶と豆乳を掛け合わせた「ソイミルクティー」

(提供予定)台湾のとうふスウィーツ「豆花」と台湾茶

おしゃれな保冷バッグが大小2種類置いてある写真

持ち帰り用の保冷バッグも用意されています。

お店の場所

茨城県つくば市手代木961-9 (駐車場10台有り)

(お店からの注意事項)駐車スペースはお店専用の枠を必ずご利用ください。また駐車場が満車の場合は、申し訳ありませんが、右折での店舗駐車場のご入場はお控えください。

この記事に関するお問い合わせ先

市長公室 広報戦略課
〒305-8555 つくば市研究学園一丁目1番地1
電話:029-883-1111(代表) ファクス:029-868-7628

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