着物をもっと、気軽に楽しめるように

更新日:2024年02月22日

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Case10. 中澤 由佳(なかざわ ゆか)さん|きもの遊び ぼたん

店舗前に立つ中澤さん

つくば市北部の北条地区は、商業の中心地として栄えた周辺市街地のひとつ。風情溢れる街並みが続く「ふれあいロード(北条商店街)」の一角にある古民家を改装した多目的スペース「iriai Tempo(イリアイテンポ)」内に、つくば市の周辺市街地チャレンジショップの2軒目「北条イリアイテラス」が2023年にオープンしました。

「きもの遊び ぼたん」は、2023年11月から期間限定で営業をスタートした着物のレンタル・着付けのお店。北条の街や筑波山周辺で着物姿での記念撮影、散策コースの提案なども行われています。彩り豊かな着物に囲まれた空間で、代表の中澤由佳さんにお話を伺いました。

代表の中澤由佳さん

代表の中澤由佳さん

茨城県筑西市出身。東京の人材派遣会社に就職し、都内に転居。結婚を機に退職、茨城にUターンしたタイミングで趣味のひとつでもあった着物を生業にする挑戦をはじめる。現在、着付けの講師、ストックする着物・小物類を活用した着付けおよびレンタル事業を展開。もっとカジュアルに着物を着て、気軽に街で遊ぶライフスタイルを提案。

きもの遊び ぼたん https://www.kimonoasobi-botan.com

着物

着物との出会い、そしてなりたかった自分へ

学校を卒業して人材派遣会社に就職後、都心のオフィスで営業等の仕事に従事していた中澤さん。「仕事にやりがいを感じてバリバリ働き、社会人として順調にキャリアを積み重ねていました。しかしある時期から、日々があっという間に過ぎていき、特に自分の時間がほとんど持てていない生活に対して気持ちや考え方が変わっていきました」と語ります。

そして、結婚を機に中澤さんは退職し、都内から地元の茨城県筑西市を生活の拠点に戻すことを決めます。「好きな着物で何かやりたいことができたらいいなという気持ちから、まずは着付け教室に通い始めました。久々に何かを学ぶことや、着付けそのものがとにかく楽しく、早速、誰かに着付けをしてみたくなりました」

着付けの技術を身に付けた中澤さんは、自宅で着付け教室を始めます。さらに着付師として、結婚式場や写真スタジオ、美容室など出張で行う仕事の幅も広げていきます。一方で、「着付け教室も基本的に着物の着付けをしたい方だけがいらっしゃること、着物の仕事も慶事や行事など需要がないと仕事が発生しないことなど、仕事の間口をどのように広げたらいいのか」と悩みも出てくるようになったそうです。

着付けの様子

着物レンタルを始めて生まれた、店を持つ夢

十年前のある日、新しいことを始めるきっかけとなったのが着付け教室の生徒さんの「せっかく習ったのに、着る着物を持っていないんです」という一言。それを聞いて、中澤さんは着物のレンタルも少しずつ始めてみることにしました。

「当時は、筑波大学近くの美容室で着付けの仕事、現在も続けている水戸市にある文化デザイナー学院の着付け講師の仕事をしていました。学生さんに需要がある袴を取り扱うようになると、瞬く間に自宅が着物や小物類で溢れ、自分で買い揃えたものも相当な量がストックされていきました」

たくさんの着物が自宅にある状況が続き、中澤さんはまた新たにやりたいこと、展望が見えるようになります。「せっかくの着物も、家にしまいっぱなしではかわいそう、着物をもっとカジュアルなものにできたらといった思いも高まり、そろそろ店を構えたいと思うようになりました」

お客様と着物を選ぶ様子

専門学校の講師仲間から繋がった、つくば市北条と街並み

着付けや講師の仕事を続けながら、場所を探し始めましたが、中澤さんにとって理想的な物件が中々見つかりません。そんな時、偶然、専門学校の講師仲間との会話の中で、いい場所が見つかります。

仲間の方は、つくば市北条の「iriai Tempo」というスペースの立ち上げに関わった方でした。つくば市のチャレンジショップ「北条イリアイテラス」で出店者を募集しているという話を2023年9月の中頃、中澤さんは初めて耳にします。実はそれまで、北条地区に訪れる機会がなかったという中澤さん。「つくばについては、子供の頃から頻繁に遊びに来る場所でしたので大体知っていると思っていたのに、北条のことはその時まで全然知りませんでした。改めて訪れてみると、歴史的な文化遺産もあり、素敵なカフェや往年のファンが通うグルメの名店など、初めて知り、一瞬にして魅了されました」

「北条の街は趣があり、着物と調和する!と直感的に思い、9月末から出店できるということで、すぐに調べて申し込みました。まずは期間限定で出店費用を抑えて店舗を持ってみて、色々と試して考えたいという自分の考えが、チャレンジショップの仕組みとも合致していました。そこから、とんとん拍子に話が進み、10月末に契約、11月中旬から営業がスタートしました」

着物の衿を直す中澤さん

着物が織りなす、北条の新しい景色を

着付けや着物レンタルの拠点としてだけではなく、「古い街並みで着物を着て散策して欲しい」という新たな提案も、北条イリアイテラスでの営業を始めてから生まれてきたそうです。

「北条で、つくばでの新しい発見を特に若い世代の方に体感してもらうことで、街を盛り上げたいという気持ちが沸いてきました。着物とマッチする北条の街並みは、『SNS映え』します。営業時間は午前10時から日没までなので、着物であることを考えながら、自分の足で回り、約4時間の散策コースを考えてみました」

<モデルコース例>

10:00 きもの遊び ぼたんで、着付けやヘアメイクを楽しむ

その場で店内の着物やアクセサリーも選べます。もちろんコーディネートの相談にも乗ってくれます。

11:00 お店を出発

11:30 北条ふれあいロード沿いにある、「カフェ ポステン」さんや「釜揚げうどん店 あおやま」さんでランチ

12:15 国指定重要文化財 矢中の杜で写真撮影 (一般公開の日程は事前にホームページ等で確認)

13:00 車で筑波山神社へ移動し、お参りと写真撮影

13:50 北条商店街からすぐの「つくばワイナリー」さんに立ち寄りお土産を購入

14:00 お店に戻ってお着替え

(計4時間)

まるでプチ旅行をしたような満喫の一日を過ごせそうです。

お店に並ぶ着物は、いずれも中澤さんが様々な場面で着付けや着物の貸し出しの経験を踏まえて厳選したものです。カジュアルに着られて、現代風のアレンジも楽しめる着物、夏に楽しめる浴衣などもストックしています。特にこだわりを持っているのは、観光地の着物レンタルでは取り扱いが難しい、正絹(しょうけん)の着物、礼装として京都の西陣織(にしじんおり)のものも用意していることです。「現代にはない柄の趣を大切にしたい」という中澤さんのこだわりもあります。

着付けの様子

つくば市チャレンジショップの出店について

「チャレンジショップでの出店の大きな魅力は、やはりランニングコストの低さです。まずは小さなリスクから挑戦してみて、次のステップとして実店舗を構えるなど、初めて店舗を持ちたいと思案している方には、店舗経営の様々なことを実体験として経験できる点でもおすすめです」と中澤さんは教えてくれました。

一方で、集客に頭を悩ませているといいます。北条イリアイテラス周辺は、日本の道100選にも選ばれている「つくば道」のスタート地点をはじめ、メディアなどでもたまに紹介される観光スポットがありますが、施設付近は地域にお住まいの方が中心というロケーションで、街並みに風情があっても一般の方が観光目的で頻繁に往来している場所というわけでもありません。この場所に足を運んでいただくには、基本的に呼び込みが必要です。

中澤さんはホームページやInstagramを主体に情報を発信しています。「専門学校の生徒たちや、私の姉妹が経営しているキャスティング会社とも協働して、北条の魅力スポットで着物を着て、呼び込みにつながるような写真や動画の撮影など、色々と考えています。お客様が北条の街並みが持つ風情やゆったりとした時間の流れに共感して、今度は友達や知人と一緒に、またここで着物を着てお茶を飲んだり、写真を撮ったり。そういうことが積み重なって広がっていくといいですよね」と大切にしたい価値観をしっかり持ちながら、これまで築いてきた人々との繋がりも生かして、「きもの遊びぼたん」さんならではのプロモーションの仕方も探求されています。

インタビューを受ける中澤さん

やりたいことをじっくり、自分のペースで進めたい方に

「つくばのあそこに行けば、着物を借りて着付けしてもらえて街歩きを楽しめるとか、紅葉が綺麗だから、あそこで着物を着てから行ってみようかという感じで、地道にでも最終的にはそんな風に思い浮かべてもらえるようになりたいです。そのためには、とにかく継続することだと思っています」

「きもの遊び ぼたん」という名称は、「着物を今のトレンドに合わせて自由に遊んで欲しいという思いと、着物を着たことのない人への架け橋になるようにという思いを、花の『牡丹』と洋服の『ボタン』に掛け合わせて名づけました」と中澤さん。

「まだ始めたばかりなので、少しずつですが、つくばエクスプレス沿線の中心市街地や周辺にお住まいの若い方たちが遊びに来てくれました。期間限定の出店ではありますが、ふらっと遊びに行ってみようかな、と気軽に来ていただけると本当に嬉しいです」

笑顔がとても素敵で気さくな中澤さん。人柄を慕って中澤さんの力になりたいと応援してくださる方が、市内外からお店と北条の街を訪れられたことも伺いました。人との繋がりが形として見えてくるということも、チャレンジショップに出店して「場」を持つことで改めて実感できることかもしれません。

ぜひ、着物で北条の街をぶらりと散歩をしに、「北条イリアイテラス」に立ち寄られてみてはいかがでしょうか。

北条イリアイテラス外観

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