浦里酒造店 URAZATO SHUZO
つくば観光大使が聴く!つくばのおさけをつくる「人」
浦里酒造店 URAZATO SHUZO(日本酒)

【左から】宮﨑絵美さん(第15・16代つくば観光大使)、浦里知可良さん(浦里酒造店6代目蔵元杜氏)
明治10年創業、つくば市吉沼地区に酒蔵を構える浦里酒造店。
浦里酒造店の代表作であるつくばの地酒「霧筑波」は、つくばで楽しめるお酒として親しみのある方も多いのではないでしょうか。
28歳で6代目蔵元杜氏に就任し、代々受け継いできた伝統に科学的な視点を組み合わせ、新たな挑戦を続けている浦里知可良さんに、造り手としての想いを伺いました。
プロフィール

浦里 知可良(うらざと ちから)さん
浦里酒造店 6代目蔵元杜氏
1877年創業の浦里酒造店の長男として生まれる。県外酒蔵や酒類総合研究所で修行を積み、2019年に蔵元杜氏として6代目に就任し、2020年に新銘柄「浦里」を誕生させる。
2021年、第102回南部杜氏自醸清酒鑑評会の吟醸酒の部で首席の南部杜氏協会会長賞を受賞し、非公式ながら「最年少首席杜氏」とも呼ばれる、新進気鋭の若手杜氏の一人。
学ぶほどにのめり込む酒造り
【宮﨑大使】
家業である浦里酒造店を継ぐことはいつごろ決意されたのですか?
【浦里さん】
浦里酒造店は代々長男が継いできたことを祖父からも聞いていたので、継ぐことを真剣に考える日がいつか来るだろうと思っていました。高校2年生の頃に進路を考える中で、東京農業大学の醸造科学科という酒を学べる学科を初めて知り、いずれ継ぐなら大学から酒造りの勉強をしてその道を開拓したいと思い、醸造科に決めました。その時に酒造りの世界に入ることを決心しました。
最初は生物化学の一般教養や微生物について学び、大学3年生からは本格的に酒の勉強が始まり、初めて酒造りをしたのですが、酵母が発酵することで米と水だけでできたとは思えない、すごくフルーティーな香りの酒ができるんだ!と感動したことを覚えています。

【宮﨑大使】
酒造りにおいて、今の浦里さんの原動力となっているのはどのようなご経験でしょうか?
【浦里さん】
大学卒業後に、山形県の出羽桜酒造で2年半、栃木県の渡邉酒造で1シーズンの研修をさせていただき、酒造りの基礎を全て学ばせていただきました。3年間の修行の後、酒類総合研究所という酒の研究機関で1年半ほど勉強や研究に携わりましたが、酒蔵での現場での経験をもとに酵母菌の研究ができたこと、科学的側面からの酒造りを吸収できたことがものすごく良い学びになりました。
酒造りは、経験値のある職人の勘や技術で支えられてきた業界なのですが、今は科学が追いついてきていて、酒造りのメカニズムが明らかになりつつあるのが面白いなと、学ぶほどにのめり込んでいきましたね。

【宮﨑大使】
5年間の修行の後、すぐに6代目に就任されましたが、杜氏としての酒造り1年目はどのような年でしたか?
【浦里さん】
1年目は本当に大変でした。修行中は蔵人という立場で酒造りに携わっていたので最後は杜氏が責任を持ってくれましたが、いざ自分が杜氏になると自分が最後の砦になるわけなので、全部リカバリーしなくてはいけない。いち蔵人としてやっていた酒造りと杜氏としての酒造りというのはこんなにも違うものだということを1年目に身をもって知りました。
酒造りの杜氏は技術があれば務まるわけではなく、技術を持ってるのは当たり前で、蔵人みんなと力を合わせて同じ方向を向いてやっていかないといけないんです。チームの和が乱れるとお酒の味に出てしまうんですよ。だからこそ、チームの和を作ることも杜氏の大きな仕事なんだと、みんなをまとめていけるリーダーシップも必要なんだということを思い知りましたね。
今でも大切にしている言葉が2つありまして、1つは「向上の一路に終点なし」という言葉で、常に向上心を持って現状に満足することなく高みを目指しましょうという意味です。出羽桜酒造の社長から教わった言葉です。もう1つは「良いお酒ができるのはまぐれで、そのまぐれを引き当てるための最大限の努力とまぐれを引いた時にそれを忘れない記帳が大切」という言葉で、渡邊酒造の杜氏でもある社長から教わりました。いつもこの2つの言葉を胸に酒造りをしています。

「小川酵母」を極める酒造り
【宮﨑大使】
お酒造りの繊細なプロセスの中で、特に大切にされていることは何でしょうか?
【浦里さん】
良い酒造りは、職人としての感性とデータの積み上げ、その両方があるからこそできると思います。感性だけだと安定せず、かと言って酵母や麹菌は目に見えない微生物ですから、数値化できない微細な変化みたいものがあるんですよ。それを感じ取るのが職人としての技術です。
酒造りの業界には「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」という格言があり、酒造工程の大切さを順に表しているのですが、私は「一麹、二麹、三麹」くらい、麹でお酒は決まると思っています。麹の作り方次第でお酒の香りの立ち方、味わいの重さ軽さを全部コントロールできるので、常に麹が酒造りの肝だなと思いながら向き合っています。
今年で杜氏になって6年目ですが、年を重ねるごとに少しずつ積み重ねてきた6年分のデータを見返すことで、ピンチの時にもリカバリーができるようになりましたし、色々なチャレンジもしやすい環境が整ってきているなと感じています。
【宮﨑大使】
浦里酒造店のお酒は、浦里さんのお名前の由来にもなった小川酵母への強いこだわりが印象的です。理想とされているのはどのようなお酒ですか?
【浦里さん】
理想としているのは、日常に寄り添うような飲み飽きしないお酒です。浦里酒造店のこだわりの1つである小川酵母は、バナナやメロンのようなフルーティな香りで酸味が少ないことが特長で、お酒がとても柔らかく優しい味わいに仕上がります。毎日飲みたくなるような、香り穏やかなおいしいお酒を目指しています。
小川酵母を発見した小川知可良先生のお名前を自分の名前にいただいたこともあり、「小川酵母を極める酒造り」が私の酒造りのテーマですね。日本で一番、小川酵母をうまく醸せる造り手になりたいという想いで酒造りしています。実は、小川酵母はクラシックなタイプの酵母でコンテスト向きではないので不利なのですが、地元茨城の酵母でもありますし、何より浦里酒造店として小川酵母にプライドを持っているので、毎年のコンテストにもクラシックな小川酵母で勝負しています。

【宮﨑大使】
つくばの方々、そして浦里酒造店のファンに向けてメッセージをお願いします。
【浦里さん】
つくばの吉沼地域の酒蔵として、地域で育った米を使い、江戸時代から伝わる伝統的な製法「生酛(きもと)造り」で、酒蔵の周りの風土の力で醸す酒造りをしています。これからも地産地消の酒造り、そして地元の方に愛されるお酒を目指していきます。
筑波山やつくばセンター広場で毎年催される地酒イベントや、都内の日本酒イベントにも参加していますので、ぜひお越しいただければと思います。夏場は酒蔵見学も行っています。
発酵の世界はとても面白く奥深いものです。味噌や醤油などにも発酵の技術が使われていて、私たちにとって発酵は身近な日本の伝統文化でもあります。日本酒を通してより発酵への興味を深めていただけたらうれしいですね。
商品紹介

「霧筑波 特別純米」
淡麗辛口で食事を引き立てるスッキリとした味わいの、浦里酒造店の代表作。5代目蔵元の浦里浩司氏によって1985年に本格的にスタートした銘柄で、9割以上が茨城県内で飲まれている、地元に根差したお酒。
「浦里」
お米の旨味や甘みが引き出された奥行きのある芳醇な味わいの、6代目蔵元杜氏の浦里知可良氏が醸す新ブランド。小川酵母の特長であるバナナやメロンのようなフルーツを想わせる穏やかな香りが広がる。蔵の風土を生かす「生酛造り」で、地域性が生かされた一品。
詳細は浦里酒造店さんのホームページをご確認ください。
取材・文:宮﨑絵美(第15・16代つくば観光大使)
編集:つくば市広報戦略課
写真撮影:鈴木茂樹(白と水と糸)
企画協力:つくばのおさけ推進協議会(つくば観光コンベンション協会内)
関連リンク
【浦里酒造店公式ホームページ】
【Farm to Table つくば】つくばの食の魅力(つくば市運営)
地元を愛し、地元に愛される地酒/浦里酒造店 浦里浩司さん、浦里知可良さん
この記事に関するお問い合わせ先
市長公室 広報戦略課
〒305-8555 つくば市研究学園一丁目1番地1
電話:029-883-1111(代表) ファクス:029-868-7628