つくばブルワリー
つくば観光大使が聴く!つくばのおさけをつくる「人」
つくばブルワリー Tsukuba Brewery(クラフトビール)

【左から】延時崇幸さん(つくばブルワリー・醸造士/株式会社ペブルス 代表取締役)、宮﨑絵美さん(第15・16代つくば観光大使)
つくば市のシンボルでもある雄大な筑波山を望む、カエルのマークがひときわ目立つ建物が「つくばブルワリー」の新しい醸造所。筑波山麓の天然水から、個性あふれるクラフトビールが生まれる場所です。とびきり明るい笑顔で出迎えてくださった延時さんに、クラフトビールに出会ったストーリーや造り手としての想いを伺いました。
プロフィール

延時 崇幸(のぶとき たかゆき)さん
つくばブルワリー・醸造士/株式会社ペブルス 代表取締役
山口県生まれ、水戸市育ち。2010年につくば市で映像制作会社「株式会社ペブルス」を起業。2020年時点ではつくば市内に無かったクラフトビールのブルワリー「つくばブルワリー」を開業し、2024年春に筑波山麓に新たな醸造所をオープン。
つくばでビール造りをはじめたきっかけ

第15・16代つくば観光大使の宮﨑絵美さん(写真左)
【宮﨑大使】
延時さんは元々は、映像クリエイターでいらっしゃったそうですね。
【延時さん】
20代の頃から映像制作の仕事をしていて、日本全国や海外にも取材に行っていました。さまざまな企業と出会う中で、周りの人から長く応援されている企業は、地域の人たちと関わりながら愛されていることが多いなと感じていました。特に衣食住に関わるものですよね。
取材を通じて熱い気持ちに触れるうちに、自分がそっち側に立ったらどんな気持ちになるんだろう?と、だんだん取材をする側から生産者側に立ちたくなったんです。
映像クリエイターとして26歳から個人で仕事をやっていたので、ちょうど10年目くらいの頃、これからの10年20年をどうしていくかを考えるタイミングでした。
自分がやるなら、つくばに深く根を張って周りの人に愛される会社を目指したい。いろいろな人と関われて、みんなが喜んでくれて、つくばにないもの。そして50年100年続く事業は何だろうと探し始めたんです。
【宮﨑大使】
つくばで愛される、長く続く事業であることをイメージされていたのですね。そこからクラフトビールにどのように出会われたのでしょうか?
【延時さん】
様々な場所に出向き人に会ったりしながら、自分はつくばで何ができるだろう?と数年間は模索していました。衣食住に関わるものの中でも特に、お酒っていいなと思っていたんですよ。お酒の席は楽しいし自分も好きだし、調べていくとお酒はずっと昔からあり歴史も長くて。人にとってなくてはならないものかなと。
当時はつくば市がワイン特区に認定された頃で、つくばヴィンヤードの髙橋さんがワイン畑の手伝いを募集されていたので、行ってみよう!と思い立って参加してみました。
作業をしながら髙橋さんから「つくばのワインには可能性があるんだ、つくばのワインを広めていきたい!」というお話を聞いていたので、先に始められている先輩である髙橋さんの熱い気持ちに触れる時間でもありました。
作業の後には、ぶどう畑で集まってお酒を飲むことがあったのですが、つくばのワインと日本酒はあっても地ビールがなく、ビールだけ大手メーカーのものだったんです。「これが自分たちのお酒でぜんぶ揃ったら面白いよね~」という話をした時、ハッとして。飲みながらも調べたら、クラフトビールの原料には米やぶどう、酒粕も使えることが分かり、つくばの日本酒やつくばの農作物ともコラボできて、何よりつくば市にクラフトビールはまだないじゃん!と。これはアリだとイメージがわいてぴたりと合致しましたね。
未来が見えたのが、クラフトビールでした。
つくばヴィンヤードの髙橋さんと収穫を終えたぶどう畑
【宮﨑大使】
それまで探していたこととクラフトビールが重なった瞬間ですね。そこからどのようにして、ご自身が造りたいクラフトビールを形にしていかれたのでしょうか?
【延時さん】
関わる人たちがおいしいと言ってくれるビールを造りたい!というのがスタートです。最初は正直なところ、クラフトビールは少し飲んでいたくらいの素人だったので、それからは毎日できるだけ飲むようにして、ゼロから勉強しました。修行をしたブルワリーでは、教えてくださる方からがむしゃらに吸収しながら学びました。
ちゃんとしたブルワーだと認めてもらえるまでに、最低5年から10年。5年経って地域の人やクラフトビール業界からある程度知られていたら、まずは長く続けられるだろうと。だからこそ中途半端に格好つけてやらず、自分も職人にならないと!と思っていました。企業や写真家さんも作風が出てくるじゃないですか。じわりじわりでもいいから、「本物」になるための勉強をしようと決めました。


【宮﨑大使】
延時さんの考える「本物」とはどんなことでしょうか?
【延時さん】
ただクラフトビールが流行っているからとか、みんなが好きだからそればかり造るとかではなく「みんなが喜んでくれる味、それはなんでか?」という、見えないところの下地を知っていかないといけない。普遍的な良さと品質があり、時代の変化を超えていくものを造る。その部分をすごく意識しています。
3年間は実験をしようと決めていたので、あえておいしいねと言われたものばかり造らないようにして、いろいろなスタイルに挑戦しましたね。おいしかろうが悪かろうが、褒められようが批判を受けようが、自分の修行をしていく。今でもそうです。

【宮﨑大使】
ブルワーとなられた今、先輩ブルワーとはどのようなお話をされますか?
【延時さん】
まずは基礎を聞きますね、ルーティーンや何を大事にしているか。そこからその人の感覚を知るんです。大切にしていることは全て基礎に表れるんですよね。
クラフトビールの業界って、隠さないというか、結構オープンなんですよ。この原料を使っていて酵母はこれとか、開示し合っている人もいるくらいで。それで高めていかないと業界として長く続けていけないよねっていう思いもあるんです。年配のブルワーから20代のブルワーまで連絡を取り合ってコミュニティが出来ているというのは、入ってみてから知りましたが面白いなと思いましたね。
【宮﨑大使】
高め合うためにレシピを共有し合っているのはユニークですね。同じレシピでも造り手によって個性は出るものなのでしょうか?
【延時さん】
同じレシピでも仕上がりは全く違うんですよ。原料のモルトという麦芽は数十種類とあり、メーカーが違えば味も違う。入れる量や違う種類のモルトを混ぜることによって色も変わり、どのように入れるかで味わいも香りも全部変わります。酵母も数十種類もあって、どの温度でどのタイミングで入れるかによって香りも変化しますし、苦みや香りを加えるホップも数十種類、それに水質によっても違ってきますからね。レシピは無限大です。
人と人を繋いで幸せを創造する
【宮﨑大使】
洞峰公園近くの二の宮のお店から醸造部分を移転する形でオープンされた、筑波山麓の醸造所にはどのような思いをお持ちですか?
【延時さん】
いつか筑波山麓の天然水を使って造りたい、やるなら筑波山麓でやろう!と思っていました。いろいろな物件を探している時にこの場所を見つけて、やるんだったらこの辺でやりたいなと話していた土地でした。この場所でビールやる人なんていないよ~と不動産屋さんには言われましたが、ここがいい!とすぐに押さえてもらって。それから1か月以内に醸造場の建設をする許可申請をして、許可が出るのには6か月かかりました。
筑波山麓にこだわった理由の1つは水質です。軟水の硬度は1リットルあたり40~60mgくらいですが、筑波山の水は中硬水で、僕らが使っているここの水だと硬度が150mgくらいあるんですよ。水質を調べたらミネラルも豊富でした。だから仕上がりも全然違いますね。筑波山の水を使うことで、以前よりも僕たちが造りたいビールが造れるようになりました。
【宮﨑大使】
「つくばブルワリー」と名づけた思いを教えてください。
【延時さん】
つくば市はさまざまな人が集まってくる場所です。大学も研究所もある、筑波山という観光拠点もある。一方で離れていく人もいる。つくばの名前で造ったら、つくばから遠い海外にいても筑波山は小さい頃に行ったなと思い出したり、つくばに帰って来たりする人もいるかもしれないと思って。そうしたら本当にそういう人が現れ始めて、お店に来て「ありがとう」と言われたりして驚いています。
缶ビールの名前につくば市の伝説や場所をつけているのも、地域に昔から残されてきた物語が、名称や登場人物を含めとてもユニークで、これを風化させたくないからです。製品として存在したら新たに知る人も増え、これからも忘れ去られずに残るんじゃないかなという気持ちを込めています。
【宮﨑大使】
延時さんがこれからチャレンジしたいことはどんなことでしょうか?
【延時さん】
まずはつくば市のお土産として定着させたいですね。観光で来た方にも日常でもよく目にするようになってほしいので、全国的に流通させていきたいですね。その先で海外にも徐々に広げていくのが目標です。
「人と人を繋ぐ、幸せを創造する」が会社の理念です。僕たちの幸せもそうだし、飲み手や関わる人みんなが、その空間、時間が楽しかった、ハッピーだった!と思ってもらえるようにしたいですね。それが僕らのクラフトビールを造る精神です!

【宮﨑大使】
最後に、クラフトビールを造ってみたいと思う方にメッセージをお願いします!
【延時さん】
酒造りでも何でも、自分でやろうと思ったらまずは行動してみたら変わると思います。やりたいことがあったらすぐ行動。行動しまくったら何か変わる。あとは自分を信じるだけ!
興味があれば、ビールのイベントはたくさんあるのでまずはイベントスタッフとして関わってみてほしいですね。スタッフも募集していますのでいつでもウェルカムです!
商品紹介

持ち帰りや発送ができるように350ml缶でも販売されています。筑波大学の学生アーティストを起用したラベルデザインも素敵です。
「常陸の不死鳥 ライスセゾン」
筑波山麓で育てられた「常陸小田米」を使用したセゾンビール。お米の甘みとハーバルな香りに、すっきりとした心地よい苦みが広がる。
「金色姫 IPA」
IPAの特徴である柑橘系のフルーティさと桃のような香りが広がる。ホップを豊富に使用することで、しっかり苦みも感じられる味わい。
「弁慶の七戻り Red IPA」
深い赤色のIPAで、ベリー感のあるジューシーさと柑橘系のフルーティさに、心地よいホップの苦みもしっかりと味わえる仕上がり。
「滝夜盛姫ポーター」
ビターチョコレートのような味わいとベリー系の香りが広がる黒ビールで、いわば大人のデザートビール。
「ミヅハノメの雫」
ハチミツやバナナを思わせるフルーティさと白ワインのようなすっきりした風味のペルジャンスタイルで、華やかな甘みが特徴。
詳細はつくばブルワリーさんのホームページをご確認ください。
取材・文:宮﨑絵美(第15・16代つくば観光大使)
編集:つくば市広報戦略課
写真撮影:鈴木茂樹(白と水と糸)/つくば市広報戦略課
企画協力:つくばのおさけ推進協議会(つくば観光コンベンション協会内)
関連リンク
【つくばブルワリー公式ホームページ】
【Farm to Table つくば】つくばの食の魅力(つくば市運営)
この記事に関するお問い合わせ先
市長公室 広報戦略課
〒305-8555 つくば市研究学園一丁目1番地1
電話:029-883-1111(代表) ファクス:029-868-7628