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小辻さんのつくばライフ

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ページ番号1004259  更新日 2018年2月23日

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九州で生まれ育ち、筑波大学への進学を機につくばにやってきた小辻さん。卒業後は首都圏で就職したものの、学生時代を過ごしたつくばでの農業に魅力を感じ、イチゴ狩り農園を始められました。今回は「農業」をテーマに、つくばを選んだ理由や定住の経緯などについてお話を伺いました。

これからの理想的な農業を追求できるまち

小辻さん写真

小辻 孝輔さん(34歳)
長崎県佐世保市出身(Iターン)
職業:農業(農事組合法人つくばねファーム代表、株式会社みらいファーム代表)
家族構成:4人(本人・妻・子供2人)
2007年からつくばに移住

つくばに住み始めた経緯を教えてください。

小辻さん

高校生の時、「考古学を専門的に学びたい」と九州の地元の高校の恩師に相談したところ、筑波大学への進学を薦めてくださったのがきっかけです。ところが、当時の私は、筑波大学は九州の筑豊地方にある大学だと勘違いしていたほど、つくばのことはよく知りませんでした(笑)。
入学してからは、つくばの豊かな自然や街並みが気に入り、仲間とシェアするなどして、いろんな場所に住んだ経験があります。また、アリやミツバチなど集団で社会を作る生き物にも興味を持つようになり、生態学も勉強しました。臨床試験のバイトなど、研究学園都市ならではのアルバイトもいろいろやりましたね。

農業を始めることになった経緯は。

小辻さん

大学院に行って研究を続けたい気持ちもあったのですが、在学中に父が亡くなったこともあり、いろいろと考えた末、首都圏で就職しました。着物を販売する仕事で、営業は向いていたのか、成績も徐々にあげられるようになっていったものの、多忙を極め、この仕事を自分は一生続けられないと思うようになり、その会社は1年ほどで辞めました。
つくばには、就農した大学の先輩がおり、会社を辞めてからしばらくの間は、都内の住まいから通いながら、農作業などの手伝いをして過ごしていました。そんなある日、「つくばで後継者を探している農業法人があって、やってみないか」という誘いがありました。紹介されたのは、広さ約1,000坪の広大な温室を持つ農場でした。初めて現地を見に行った時に、何だかとてもワクワクして、「これは面白そうだから、とにかく何かやってみたい!」という衝動に駆られたことを覚えています。元々はトマト栽培をしていた温室でしたが、広くて天井が高いことを生かして、人が訪れてイチゴ狩りもできる農園を始めることにしました。

未経験から農業を始めてとくに苦労したことは。

小辻さん

当時は23歳の独身、農業は全くの未経験でしたが、住まいを再び都内からつくばへ移し、先輩の紹介で下妻市にあるイチゴ農家さんで1年ほど修行させていただいた後、2008年にイチゴ農園「つくばねファーム」をスタートしました。
しかし、初めてのイチゴ栽培は想定していた以上にデリケートで、立ち上げの数年は試行錯誤でした。研修で教わったように進めても、中々うまくいかず、この温室にあったやり方を自分なりに研究して改善する必要がありました。4年目の2011年、ようやく何かを掴んだと思った矢先に東日本大震災が発生し、軌道に乗ってきていたイチゴ狩りのキャンセルがシーズンの最中で続出した時はつらかったですね。
でも、悲観的にはならず、大変な状況でも、多くの方の支えをいただき、前向きな気持ちで仕事をすることができたので、乗り切ることができました。水や食料など、田舎は自給自足ができ、災害に強いことなどもその時、強く実感しましたし、農業をやっている仲間達との連帯感、地域のみなさんとの絆も深まり、この地が故郷になる将来世代のためにも頑張っていこうという「使命」のようなものも新たに芽生えました。

品目にいちごを選んだのはなぜですか?

小辻さん

当時、つくば市にはいちご狩りができる場所が少なく、ニッチなニーズを狙ったのと、薦めてくれた先輩や修行先の農家さんがイチゴの生産者だったことが主な理由です。問題が起きても相談がしやすいという下心もありました(笑)。また、在庫が出ても保存が効くジャムや冷凍イチゴなどにも加工でき、ロス無く、オフシーズンでも展開できる果実であることも、ポイントでした。
現在では「いばらキッス」や「紅ほっぺ」など7品目を栽培しています。修行先で最初に教わったのは「とちおとめ」です。酸味と甘さのバランスの良さが売りの品種ですが、温度管理に手間がかかる「箱入り娘」のようないちごで、1年目は奇跡的に収穫できましたが、棚によっては休眠したり、実がなりにくくなったりと安定生産が中々できませんでした。しかし、温度・湿度・水やりの調整法や、土作りにもこだわって、かにの甲羅などを含む有機質の土の配合を研究した結果、年を重ねるごとに味を格段にアップさせることができました。

イチゴ狩りビジネスについて教えてください。

小辻さん

イチゴ狩り農園への集客もゼロからのスタートでした。筑波山の山麓に位置する「北部工業団地」のエリアにあり、最寄りのつくばエクスプレスの駅からも遠く、自家用車やバスでお越しいただく必要があります。ですので、最初のお客様は近所に住むおばちゃんでした。心配していただいてか、よく買いに来てくださり、オープンから10年、毎年イチゴのシーズンが始まると真っ先に買いに来てくださいます。おばちゃんの口コミで、近所の方や知人の方もお買い求めいただくようになって、有り難かったですね。
農作業の合間を縫って、つくばの中心地に赴き、最初の就職先で徹底的に鍛えられた営業力を発揮し、道行く人に育てたイチゴを試食していただいたり、飛び込みでケーキ屋さんなどに売り込んだりもしました。季節的にも12月はイチゴのニーズが特に高く、かなりの確率で買ってくださり、それがリピート注文にも繋がっていきました。このほか、チラシを手作りして配ったり、フリーペーパーに載せてもらったりと、できることは何でもやり、少しずつ口コミでお客さんが集まるようになりました。

開業資金や収入についてお聞かせください。

資金的には、農業を始めるにあたり、自分の貯金だけでは足りませんでしたので、約600万円を貸し付けてもらいました。私の場合は、元々温室の設備があったので、一から始めるよりは低い投資で済んでいると思いますが、それでも立ち上げ時に設備投資が400万円ほどかかり、残りの200万円が当座の運転資金でした。こうした状況の中、初年度の売上は約200万円、イチゴ狩りの来場者は100名ほどでした。しびれますよね(笑)。
しかし、3年目にブログを開設してから認知度が急に上がり、シーズンになると、1日に50-60件の問合せ電話がかかってくるようになりました。電話対応が農作業に支障をきたすほどになってきたので、急遽、ITに詳しい仲間にWebの予約システムを作ってもらいました。また、ゆとりをもって多くのお客さんが受け入れられるよう、イチゴ狩りを4つの時間帯に分けて実施するシステムも考案しました。
この頃から、大学の仲間や後輩、つくばで知り合った友人やその家族の方たちがアルバイト・時にはボランティアとして、農作業、接客をはじめ、Webの運営や販促物の制作を手伝ってくれるようになりました。このように、最初は本当に厳しい感じでしたが、困難があるといろんな方が手を差し伸べ、助けていただいたおかげで、徐々にビジネスの礎が整い、軌道に乗っていきました。

遊べるファームを目指しているとお聞きました。

小辻さん

遊びに行く感覚で、農産物の収穫体験ができ、友人同士や家族同士で楽しめるスペースになればと考えています。亡くなった父が釣りや登山、ログハウス作りなど、アウトドアを本格的に楽しむ人だったので、子供の頃から山も海も川にもよく連れて行かれ、自然の中で過ごし、遊ぶことが日常的でした。その原体験を、「つくばねファーム」の場づくりに活かしています。
例えば、農園の一角には、親子のヤギと触れ合える小屋や、お客さんの休憩所兼カフェスペースも設置し、ワークショップを開催したり、オフシーズンはイチゴかき氷の販売、自分も所属していた筑波大学のジャズ愛好会による音楽会の開催など、楽しみながら仕事をしています。また、つくば市の「農産物オーナー制度」を利用して、区画に分けたイチゴ棚のオーナーになっていただき、苗植えから収穫まで体験いただくこともできるようになりました。

今後の展望を教えて下さい。

イチゴ栽培を始めて10年が経ち、おかげさまで年間約10,000名ものお客さんがいちご狩りに訪れるようになりました。リピーターも多く、さらに多くの方に来ていただきたいのですが、予約がすぐに一杯になってしまう状況です。耕作放棄地となっている農地やハウスも増えていますので、これらの農地をお借りして、新たなファームを仲間とともに増やしていきたいと考えています。ITの活用も積極的に行っていきたいですね。最初はすべて手作業でやっていた水やり、温度管理、イチゴ狩り予約なども今はITの恩恵を受けていますし、つい先日、農作業で酷使する腰をサポートするためのロボットスーツの導入試験など、つくば市ならではの先進的な取り組みにも協力したところです。
また、イチゴ農園に加えて、最近では新たに法人を立ち上げ、さつまいもの栽培も開始しました。つくばエクスプレス沿線は、駅から歩いてもいける場所に畑が結構ありまして、体験型農園など、こうした条件を活かした都市型農業にも挑戦しているところです。農産物の加工品の開発にも、力をいれていきたいですね。とにかく、やりたいことは沢山あります。単なるビジネスではなく、価値を広げていく仕事を目指しています。
さらに、自分達が進める農業に関わる人達とその家族が、将来にわたって幸せになれるような、理想的な形を追求していきたいと考えています。これからつくば周辺で農業を始めたいと思っている方にも上手く手を差し伸べていけたらと思います。

プライベートはどんな過ごし方をされていますか。

小辻さん

人と比べると仕事との境が曖昧なので、どこまでがプライベートなのか分かりませんが、休みの日には、子どもと公園に遊びにいったり、仲間達となじみのコーヒー屋さんで語らったり。自転車やスケートボードに没頭することもあります。すぐ会いにいける、いろんな場所に動けることも、つくばの魅力のひとつです。
一日は24時間ですが、「自分の中に流れる時間」をいつも大切にしたいと思っています。
自分の思いひとつが、あらゆる時間と距離を決める。そんな可能性を、つくばに住んでいると、しばしば感じられます。

このページに関するお問い合わせ

市長公室 広報戦略課
〒305-8555 つくば市研究学園一丁目1番地1
電話:029-883-1111(代表) ファクス:029-868-7628
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