生物多様性つくば戦略 令和7年(2025年)4月 〔対象期間〕 令和7年度(2025年度)から令和16年度(2034年度)まで <本戦略の構成> 第1章 本戦略の基本的事項 本戦略の基本的事項を示します 生物多様性とは 策定の背景と目的 位置づけ 対象区域 計画期間 第2章 つくば市の生物多様性 本市の生物多様性の特徴等を示します つくば市の概況 つくば市の生物多様性 ・つくば市に生息する生きもの ・つくば市の生物多様性の特徴 特徴① 多様な動植物の生息地・筑波山 特徴② 田園風景や里山でみられる生きもの 特徴③ 生物多様性に配慮している研究学園都市 ・つくば市の生物多様性に関する主な課題と現在の取組 ・市民の生物多様性に関する認識 ・つくば市の生物多様性の「強み」「弱み」「機会」「脅威」 第3章 戦略推進にあたっての考え方・将来像 戦略推進の考え方や目指す姿を示します 戦略推進にあたっての考え方 つくば市の生物多様性の目指す姿 つくば市で大切にしたい生きもの 第4章 基本戦略・施策 戦略の目指す姿を実現するための基本戦略・施策を示します 基本戦略1 つくばの生物多様性を“守りはぐくむ” 基本戦略2 つくばでは生物多様性が“当たり前”になる 基本戦略3 つくばの生物多様性を“活用する” 基本戦略4 つくばの生物多様性に“みんなで取り組む” 第5章 先導的施策 施策のうち、市の取組を先導する施策を示します 1 実行力のある推進体制の構築 2 生物多様性モニタリング 3 生物多様性配慮行動促進事業 4 生物多様性緑地管理・創出ガイドライン 5 生物多様性の情報発信・集約機能の強化 6 生物多様性に関する活動への支援 7 生物多様性保全・再生エリアの把握・活動 第6章 エリアへの展開 3つのエリアへ施策を展開する方針と主な重要地域の取組を示します 筑波山エリア 田園・里山エリア 研究学園都市エリア 第7章 推進体制・進行管理 本戦略の推進体制及び進行管理について示します 第1章 本戦略の基本的事項 生物多様性について説明するとともに、本戦略を策定する背景や目的、位置づけ、対象区域、計画期間などの基本的事項を示します。 1.生物多様性とは (1)生物多様性とは 地球上では、生命が誕生して以来、様々な環境に合わせて生きものが進化し、現在知られているだけでも約 175 万種もの生きものがいることがわかっています。発見されていない種も含めると、870 万種とも 3,000 万種とも言われる種が存在すると推定されています。これらの種は、虫が花の花粉を運ぶような助け合う関係や、鳥が虫を食べるような捕食-被食関係、同じ場所に生える様々な植物が光を求める競争関係など、生きもの同士が互いに関係し合いながら生きています。 生物多様性には、多種多様な生きものがいるという「種の多様性」だけでなく、森林や湿地、河川などの様々なタイプの生態系があるという「生態系の多様性」や同じ種類の生きものの中でも様々な遺伝子があるという「遺伝子の多様性」があるとされています。 (2)生物多様性から得られる“自然の恵み” 私たちは日々、生物多様性から様々な“自然の恵み”を受けており、この生物多様性からの恵みを“生態系サービス”*と言います。私たちの暮らしは食料や水の供給、気候の安定など、生物多様性を基盤とする生態系から得られる恵みによって支えられており、生態系サービスは「供給サービス」、「調整サービス」、「生息・生育地サービス」、「文化的サービス」の4つに分類されます。 (3)危機にさらされている生物多様性 過去にも自然現象などの影響により大量絶滅が起きていますが、現在は第6の大量絶滅と呼ばれています。人間活動による影響が主な要因で、地球上の種の絶滅のスピードは自然状態の約 100 倍~1,000 倍にも達し、たくさんの生きものたちが絶滅の危機に瀕しています。 現在、日本の生物多様性は4つの危機にさらされていると言われています。第1の危機「開発など人間活動による危機」は、開発を含む土地と海の利用の変化や乱獲といった生物の直接採取など、人が引き起こす生物多様性への負の影響のことです。第2の危機「自然に対する働きかけの縮小による危機」は、自然に対する人間の働きかけが縮小・撤退することで、里地里山の薪炭林や農用林、採草地などの生きものの生息地としての機能が減少してしまい、生物多様性が損なわれることをいいます。第3の危機「人間により持ち込まれたものによる危機」は、外来種の侵入 や化学物質による汚染など、人間が持ち込んだものによる生物多様性への負の影響です。そして、第4の危機「地球環境の変化による危機」は、地球温暖化や降水量の変化などの気候変動、海洋の酸性化など地球環境の変化による生物多様性への負の影響です。 (4)社会・経済活動を支える環境 持続可能な開発目標(SDGs)を経済・社会・自然環境の3階層に分けて示した概念図である「SDGs のウェディングケーキモデル」において、「経済」は「社会」に、「社会」は「(自然)環境」に支えられて成り立つという考え方が示されているように、生物多様性から得られる生態系サービスは人間が社会活動や経済活動を行うために必要なものです。したがって、生物多様性の損失や生態系サービスが劣化することにより、その恵みに支えられている私たちの暮らしが脅かされる可能性があります。私たち自身と将来の世代の暮らしを守るため、生物多様性の保全と持続可能な利用を進めていく必要があるといえます。 (5)ネイチャーポジティブに向けて 現在、地球上ではかつてない速さで自然が消失・劣化し、生物多様性が失われています。自然が消失・劣化していく傾向を止め、さらに回復させていくネイチャーポジティブ(自然再興)*に向けた取組が国内外で進められています。 2.生物多様性つくば戦略策定の背景と目的 令和4年(2022 年)12 月の生物多様性条約第 15 回締約国会議において、「昆明・モントリオール生物多様性枠組*」が採択されました。今、国際社会は、生物多様性を保全し、自然の恵みが持続する国づくり、地域づくりを世界各国に求めています。そのような中、我が国では、令和5年(2023 年)に生物多様性の保全と持続可能な利用に関する基本的な計画となる「生物多様性国家戦略 2023-2030*」が策定され、『ネイチャーポジティブの実現』が目指されています。 生物多様性には地域の気候風土や人々の営みの歴史に応じた地域特性があるものですので、各地域の特性に合わせた取組を実施していく必要があります。つくば市でも、令和2年(2020 年)に策定した第3次つくば市環境基本計画において「豊かな自然環境・生物多様性を未来へつなぐ」ことを基本目標として掲げており、生物多様性地域戦略の策定を重点施策の一つとして位置付けています。 本戦略は、生物多様性やその恵みを正しく理解し、必要不可欠なものであることを認識し、「豊かな自然環境・生物多様性を未来につなぐ」ため、市の生物多様性に関する施策を戦略的かつ計画的に進めていくことを目指し策定します。 3.戦略の位置づけ 本戦略は、生物多様性基本法*第 13 条 1 項に定める生物多様性地域戦略として策定します。上位計画である「つくば市未来構想・戦略プラン」及び「第3次つくば市環境基本計画」に基づき、また、その他関連計画との整合・調和を図りながら推進していきます。 4.対象区域 本戦略の対象範囲は、つくば市全域とします。 5.計画期間 本戦略の計画期間は、令和 7 年度(2025 年度)から令和 16 年度(2034 年度)までの 10 年間とします。 ただし、生物多様性国家戦略 2023-2030 は令和 12 年度(2030 年度)を目標としており、上位計画の第3次つくば市環境基本計画では令和 11 年度(2029 年度)までが計画期間であることから、それらの計画の結果検証や新たな計画等との整合を確認するため令和 13 年度(2031 年度)を目安に中間見直しを実施します。 なお、本戦略は生物多様性国家戦略 2023-2030 の長期目標年次である令和 32 年(2050 年)を見据えた戦略とします。 第2章 つくば市の生物多様性 本市の概況や生物多様性の特徴、主な課題や現在の取組、市民の生物多様性に関する認識などについて示します。 1.つくば市の概況 ●沿革 つくば市内には多くの縄文・弥生時代の遺跡があり、古くから人々が住んでいたと考えられます。また、筑波山域を除く市域の大部分が里地里山として活用され、農業生産の中心地として栄えてきた地域です。 そして、昭和 38 年(1963 年)には「筑波研究学園都市」を建設することが決まり、均衡のとれた田園都市として整備・開発が進められてきました。 本市は昭和 62 年(1987 年)に大穂町、豊里町、桜村、谷田部町が合併して誕生し、さらに昭和 63 年(1988 年)に筑波町、平成 14 年(2002 年)に茎崎町を編入し、現在の市域となりました。 ●地勢 本市は、茨城県の南西部に位置し、その面積は 283.72km2 で県内では 4 番目の広さになっています。北にある関東の名峰筑波山は水郷筑波国定公園に指定されており、南には牛久沼を擁しています。また筑波山域を除く市域の大部分は、筑波・稲敷台地と呼ばれる関東ローム層に覆われた平坦な地形であり、その多くが里地・里山として活用され、小貝川や桜川などの河川や平地林、畑地や水田が一体となり田園風景が広がっています。 ●気候 直近 20 年の平均気温は概ね 14℃前後で温暖な地域となっています。また、降雪は年 2~3 回程度と少なく、冬季に吹く「筑波おろし」と呼ばれる乾いた風は筑波山南部地域の特徴となっています。 ●人口 本市の人口は、令和6年(2024 年)10 月現在、約 25.8 万人です。令和4年(2022 年)中の市区部の人口増加率で全国 1 位となるなど、人口は増加傾向にあります。特に社会増加数(転入数―転出数)は、2000 年代前半から大きく増加傾向を示しており、つくばエクスプレス開業(平成 17 年(2005 年)8 月)の効果が大きいと考えられます。 また、本市は研究学園都市として、国の研究機関や大学等が多く存在し、およそ 2 万人の研究従事者を有する我が国最大のサイエンスシティとなっています。 ●土地利用 本市の土地利用の状況は右図のとおりで、土地利用面積は住宅用地が増加傾向、畑・山林が平成 17 年(2005 年)以降減少傾向となっています。令和 4 年(2022年)時点では田畑が約 38%と最も多くを占め、次いで宅地が約 23%であり、市内の緑地(田畑・山林・公園緑地等の合計)は約 49.9%という状況です。 2.つくば市の生物多様性 (1)つくば市に生息する生きもの つくば市に生息する生きもの 戦略の策定にあたって、つくば市に生息する生きものを把握するための動植物調査を実施しました。本項ではその調査結果を紹介します。 つくば市は、その大部分の地域が暖温帯の気候で平らな地形ですが、北部に標高 877mの筑波山を有し、その山頂付近は冷温帯の気候となっています。また、自然と人との関わり方も多様で、筑波山地域の豊かな自然、里地里山環境の存在、生きものに配慮した研究学園都市の設計などによって、市内全域に多様な生態系が存在しています。動植物調査の結果では 3,300 種を超える動植物を確認することができ、この数字は茨城県全体の25%を超える多様な動植物が生息しているという結果を示しています。 一方で、比較的多くの外来種が分布するということも分かりました。 約2年間の調査の結果、市内に生息する様々な生きものを確認することができました。 しかし、コケ植物、菌類、魚類、昆虫を除く無脊椎動物など、今回調査が実施できなかった生きものもいます。また、調査した動植物の分類群でも今回確認できなかった種がまだまだいるはずです。 今後も調査を継続して市内の生きものの状況を把握しながら本戦略を進めていきたいと考えています。 植物相の特徴 標高877mの筑波山の山麓から山頂で、暖温帯の照葉樹林から冷温帯の夏緑樹林へと植生が変化し、多様性に富んだ植物相をみることができます。筑波山の南斜面はほとんどが筑波山神社の境内として古くから保全されており、カヤラン、ヒイラギソウなどの希少種がみられます。つつじヶ丘周辺にはわずかな面積ではありますがススキ草原があり、ワレモコウやタムラソウなどがみられます。植生の管理形態の変化や遷移の進行により、草原の希少種の存続が危惧されています。 平野部には、田畑や雑木林などの里山環境が残されていますが、人の手が入らなくなった放棄水田などが増加しており、人為的なかく乱に依存する希少種が減少しています。特に水田の畔やため池などをすみかにするタコノアシなどの湿地性の希少種が絶滅の危機に瀕しており、今回確認された国や県のレッドデータブックに掲載されている植物101種のうち、40種が湿生植物となっています。 都市部の公園や研究所、ペデストリアンデッキにおいても、キンランやマヤランなどのラン科植物や湿生植物などが確認されています。都市部にも連続した緑が存在しており、鳥類をはじめ多くの動物にとって重要なすみかとなっています。 動物相の特徴 ●哺乳類 コウモリ類ではキクガシラコウモリなど少なくとも5種のコウモリ類が確認され、ネズミ類では河川敷等の一部良好な草地においてカヤネズミの生息が確認されています。筑波山地域ではニホンリスやアナグマ等の森林性の哺乳類が生息し、平野部の良好な平地林と農地環境ではキツネが、都市域近郊ではタヌキやニホンイタチが生息しています。 ●鳥類 筑波山地域ではトラツグミやコルリ、センダイムシクイ等の森林性の夏鳥が繁殖するほか、ハチクマやサシバ等の渡りを行う猛禽類の中継点となっており、アオシギ等の越冬地にもなっています。平野部には田畑が広がり、ヒバリ等の草地性鳥類が広く生息するほか、点在する平地林ではサンコウチョウやキビタキ等の夏鳥が繁殖、ヤマシギやルリビタキ等の冬鳥が越冬します。市街地に点在する公園内の水辺ではヒドリガモやマガモ等のカモ類が越冬し、身近な存在となっています。 ●爬虫類 カメ類では条件付特定外来生物*であるアカミミガメが広く分布するものの、在来種であるニホンスッポンの生息も確認されています。ヤモリやニホンカナヘビが広く生息し、ヘビ類ではヒバカリやヤマカガシ等のほか、シロマダラが複数個所で確認されています。一方、シマヘビについては本来普通種であるものの、確認地点数が少ない傾向にあり注視すべき種です。 ●両生類 筑波山には、国内希少野生動植物種や環境省レッドリストの絶滅危惧IA類、茨城県レッドデータブックの絶滅危惧Ⅰ類に指定されているツクバハコネサンショウウオが生息するとともに、タゴガエルやヤマアカガエル等の山地性のカエル類が生息します。 平野部ではアズマヒキガエルやニホンアカガエルに加え、ムカシツチガエルやトウキョウダルマガエル等の水田環境を中心としたカエル類が生息しています。一方、アカハライモリの生息が本調査では確認されず、近年の有益な生息情報もないことから、つくば市では激減している可能性が考えられます。 ●昆虫類 確認された1,803種の多様な昆虫類のうち、コウチュウ目が663種と最も多く、次いでチョウ目が438種、カメムシ目が219種でした。樹林環境の発達した筑波山や宝篋山のほか、市内に平地林が点在し、緑地の連続性が維持されていることから、市内中心部~郊外においてもノコギリクワガタやセンチコガネ等比較的多様な昆虫類が生息しています。水田や水路等の水環境も存在することから、ギンヤンマなどの多くのトンボ類が生息し、郊外ではタイコウチやシマゲンゴロウも見られます。また、クマゼミやツマグロヒョウモン、ナガサキアゲハ等暖地系昆虫が分布を北に広げており、高標高地域に生息する種への影響が懸念されます。 (2)つくば市の生物多様性の特徴 つくば市の生物多様性の成り立ち 現在の生物多様性の成り立ちは、自然条件から成立する生態系に人為的影響が加わった結果であると考えられます。 つくば市の生物多様性の成り立ちについて考えると、自然植生が今なお残る筑波山があること、人々の営みが生み出した二次的自然である田園風景や里山があること、建設された研究学園都市の中にもかつての自然が残されていることが特徴的と考えられます。 自然条件から成立した植生が残る筑波山 生物多様性の成り立ちを考える際、自然条件(気候や地形地質など)のみから成立する植生(潜在自然植生)は重要です。 つくば市の「想定される潜在自然植生」をみると、筑波山の高標高部にはミズナラ‐ブナ群集やモミ‐シキミ群集、平野部にはシラカシ群集、河川沿いなどはヨシ‐ハンノキ群集などとなることが分かります。 現在も筑波山にはブナやモミなどからなる森林が存在していることから、自然条件から成立した植生とそこに生息する生きものが守られてきた場所と考えられます。 人々の営みが生み出した二次的自然 これまでの人々の営みも生物多様性の成り立ちに大きく関係します。 つくば市では古くから農耕が営まれてきたことが分かっており、北条付近には条里制の遺構も残っています。台地上や低地では、人々の生業のため、水田・畑地・平地林・草地・集落などが組み合わさった農村景観が広がり、二次的自然となっていたと考えられます。このような田園風景や里山では、多様な生きものが人々の暮らしとともに生息していると考えられます。 筑波研究学園都市の建設 昭和 38 年(1963 年)、現在のつくば市を特徴づける「筑波研究学園都市」を建設することとなりました。研究学園都市の建設により、その区域内は、農地(多くは畑)や平地林などの農林業的土地利用から都市的土地利用へと移行することとなり、これまでの土地利用が大きく変わることとなりました。 研究学園都市の形成に際しては、既存緑地の保全や緑化率基準など、様々な生物多様性への配慮がなされました。現在も、研究学園都市内には、かつての平地林が研究・教育機関の敷地や公園内に残っています。 生物多様性の3つのエリア つくば市の自然環境や土地利用状況等を踏まえ、本戦略ではつくば市域を3つのエリアで考えていきます。 筑波山エリア 市北東部に位置する、筑波山や宝篋山などの山々を含むエリア つくば市の生物多様性の特徴① 「多様な動植物の生息地・筑波山」 田園・里山エリア 市周縁部に位置する、農地や平地林などの里地里山環境が多く存在するエリア つくば市の生物多様性の特徴② 「田園風景や里山でみられる生きもの」 研究学園都市エリア 市中心部に位置する、研究・教育機関や市街地が多く存在するエリア つくば市の生物多様性の特徴③ 「生物多様性に配慮している研究学園都市」 特徴① 多様な動植物の生息地・筑波山 筑波山は、関東平野にそびえ立つ男体山(標高871m)と女体山(標高877m)の2つの峰からなります。標高はそれほど高くないものの、平野部から急に立ち上がっているため、例えば山頂と麓では高低差による気温の違いがあります。山頂付近には冷涼な気候を好むブナやイヌブナが生育し、絶滅危惧種のツクバハコネサンショウウオも生息しています。中腹付近にはモミやアカガシ、スギなどが、山麓から筑波山神社裏にかけては暖地系の気候を好むコナラや、スダジイを中心とした常緑樹が生育しており、植物の垂直分布がみられ、動物は南方系と北方系が混在しています。 県内有数の希少な自然林 筑波山のつくば市側(南面)は、山頂のブナ林をはじめとした自然林が残されています。 茨城県の林野率が 31%で全国平均の 67%を大きく下回っていること、戦後全国に先駆けて植林が進められた結果、人工林の割合が高くなっていることを考慮すると、筑波山の自然林は茨城県内でみても非常に希少な存在で あると言えます。 山中には 1,000 種以上の植物が生育しており、県の絶滅危惧種に指定されているホシザキユキノシタや国内希少野生動植物種に指定されているツクバハコネサンショウウオなどの珍しい生きものも生息しています。 海に沈まなかった筑波山 現在の地形は気候変動による海水面の上昇・下降を経て形成されてきましたが、筑波山域は海に沈まずに陸地として長く残り続けてきた場所です。10万年ほど前の日本列島は海水面が今より約10m高いところにあり、現在のつくば市域も大部分が古東京湾と呼ばれる浅い海の底となっていました。しかし、筑波山は当時も陸地となっていたと考えられています。その後、今から6,000年ほど前に海水面が上昇した際にも、陸地のままであったと考えられています。 現在の筑波山山頂付近に生育しているブナ林は約2万年前からの生き残りであると言われています。 自然観光資源としての筑波山 筑波山は、昔から「西の富士、東の筑波」と並び称されてきた関東の名山で日本百名山のひとつとされています。その山肌は時間帯によって表情を変え、夕方には紫色に見えることから紫峰(しほう)とも呼ばれています。また、筑波山名物である「ガマの油売り口上」は、つくば市認定地域無形民俗文化財として認定され、筑波山各地で披露されています。山頂にはケーブルカー・ロープウェイを利用して登ることも可能で、関東平野を一望することができます。 市内の観光客の多くが筑波山を訪れており、令和5年度(2023年度)の観光利用者数は約220万人でした。 信仰の対象としての筑波山 筑波山の中腹には、古くから筑波山神社が祭られています。西峰に筑波男ノ神(イザナギ)、東峰に筑波女ノ神(イザナミ)を祭神とし、山そのものをご神体としていました。そのため、巨岩、巨木、清水などいたるものに神様が宿るとされており、その信仰によって古くから筑波山の自然が守られてきました。山頂付近にはブナやイヌブナをはじめとした様々な樹木が生育する社寺林が広がっています。 ジオパークとしての筑波山 筑波山や霞ケ浦を含む筑波山地域ジオパークは日本ジオパークに認定されています。筑波山や周辺の山々の地質は、過去の海洋プレートの動きや地下深部でのマグマの形成など、筑波山という地形の成り立ちを伺うことができる貴重な地質遺産となっています。ジオパークの活動においては、地質的な価値に加えて、多種多様な動植物や信仰の歴史、文化など様々な筑波山の魅力が地域資源として保全されています。またこの自然・文化的な価値の保全以外にも、その魅力を活用した教育や観光促進などの持続可能な開発を目指す取組が進められています。 特徴② 田園風景や里山でみられる生きもの つくば市には、平地林や農地、ため池などがみられる田園風景が広がっています。例えば、平地林にはカブトムシ、社寺林には樹洞を利用するムササビやフクロウ、水田にはアマガエル、芝畑にはヒバリなど、多種多様な生物が生息しています。人とともに暮らしてきた生物の多様性を維持するために、二次的自然を管理していくことが重要といえます。 平地林 市内の台地上に多くみられる平地林は、薪炭を得るために管理されてきた林であり、エビネやヤマユリなどの森林性の植物や昆虫類など、様々な生きものたちのすみかとなっています。特に、市民団体などによって適切に管理された平地林には多様な生きものが生息しています。 しかし、近年は薪炭の需要低下、所有者不明な平地林の顕在化、担い手不足などにより、管理放棄地が増加しています。また、アカマツ林におけるマツ枯れなども深刻な課題となっています。 社寺林 社寺林は、地域とともに育まれてきた大切な緑地で、巨木の樹洞はムササビやフクロウ、昆虫類など多くの生きものにとって重要な生息地となっています。 大曽根緑地環境保全地域になっている鹿島神社一帯は、ヒノキ、スダジイなどの常緑樹林並びにクヌギ、エノキなどの落葉広葉樹林及びスギの植林から構成されている樹林地であり、周辺には水田及び湿地が存在することから、多くの昆虫のほか、野鳥が生息しています。 また、香取神社の「大けやき」や念向寺の「イチョウ・シイ」など、市指定天然記念物になっている大木もあります。 農地 つくば市では生産地と消費地が隣接する都市近郊型農業が行われており、水稲、野菜、芝を中心に様々な作物が生産されています。農地は多様な野生動植物の生息地として重要な役割を担っており、例えば北部・東部地区の水田ではニホンアマガエルが生息し、西部地区の芝ではヒバリがみられます。 近年では、農業従事者の減少や高齢化の進行などにより、市内の遊休農地が年々増加しています。また、農地の開発(宅地化など)によって農地が減少しており、イノシシやアライグマなどの野生動物による農業・生活環境への被害も問題視されています。 水辺 桜川や小貝川、谷田川等の河川や池沼、湿地、ため池などの水辺環境は多くの生きものにとってなくてはならない重要な環境となっており、ジョウロウスゲやタコノアシ等の植物、豊かな水辺を指標するカヤネズミやニホンアカガエル等が確認されています。 筑波山の山裾を流れる桜川と市の西側を流れる小貝川は広大な水辺空間と河畔林などの豊かな緑を伴っており、自然に近い姿を保っている重要な環境となっています。これらの河川は、市内の自然をつなぐ移動のための空間としての役割も果たしています。 特徴③ 生物多様性に配慮している研究学園都市 研究学園都市の中には、公園やペデストリアンデッキ、研究・教育機関などの緑地があり、それらが一体となってまとまりのある緑地を形成しています。これらの緑地があることで、カワセミやノウサギをはじめ、希少な植物であるキンラン・ギンランなど、多種多様な生物の生息地となっています。 都市公園 市内には、洞峰公園や赤塚公園、松代公園など、212か所の都市公園があり(令和6年(2024年)8月時点)、その総面積は226.8haで、重要な緑地となっています。キンラン、ギンランなどの希少な植物が生育しており、オオタカなどを含む野鳥や、カモ類、カイツブリ類、サギ類などの水鳥も多くみられます。そのほかにも小動物や多くの昆虫等が観察されており、動植物の生息地として重要です。 研究学園都市における生物多様性への配慮 筑波研究学園都市は1970年代に建設されました。これは、1960年代からの「高水準の研究・教育の強化」「首都圏の人口集中緩和」及び「自然環境との調和による良好な景観形成」を目的とした国家プロジェクトとして研究学園都市構想があり、4つの候補地から最終的に筑波山麓が選ばれ進められたものです。 筑波研究学園都市の建設以降、つくば市内は緑豊かなゆとりある都市環境が形成されており、生物多様性を保全していくためにも重要な役割を担っています。生物多様性の観点から以下の3つの特徴があります。 ① 多くの研究・教育機関内で敷地緑化30%以上 「筑波研究学園都市一団地の官公庁施設建設設計計画標準」等により、市内は緑の多い環境が保たれてきました。現在は地区計画*により、緑地環境の保全が図られています。緑化率目標や樹林地・草地の維持・保全、建蔽率の最高限度などが設定されており、研究所内の緑地にはカワセミやシマヘビ、ツリガネニンジンなど様々な生きものが生息し、生物多様性を保全するために重要な場所となっています。 ② ペデストリアンデッキの設置 総延長約48㎞にもおよぶペデストリアンデッキの沿道には、公園や教育施設、研究施設などが配置されています。緑豊かなペデストリアンデッキは、多くの人々の主要動線となっていることに加え、たくさんの生きものが生息する場所となっています。 ③ 昔からある植生の保全 筑波研究学園都市建設時、計画標準等により敷地内に現存する地形や緑地は、できる限り保護することが求められていました。研究所の敷地内も研究機能を直接妨げない限り、既存の樹木はできるだけ保存緑地として計画的保護に努めることも定められていました。このため、市内には昔からある植物が今もなお多く生育し、生物多様性が豊かな場所になっています。 (3)つくば市の生物多様性に関する主な課題と現在の取組 筑波山地域の保全・活用 ブナ林の衰退 筑波山山頂部のブナ林の健全な更新が懸念されています。直径10cm以下の若いブナの個体数が少なく、稚樹もほとんどない状況であり、このままでは将来的に個体群の維持が困難になることが予想されます。 エコツーリズム推進が必要 多くの観光客が筑波山を訪れており、山頂付近での混雑等のオーバーツーリズムによる自然環境への影響が懸念されています。保全と利用を両立するエコツーリズムを推進することが重要です。また、観光客に筑波山の生物多様性の魅力を伝えるため、ガイドツアーにおける解説や看板設置等を含め、インタープリテーション*が必要と考えられます。 現在の取組 筑波山地域における保全 ●水郷筑波国定公園 筑波山・宝篋山のほぼ全域が水郷筑波国定公園に指定されており、指定区域内での自然に悪影響を与える行為の規制や、登山道の整備が行われています。 ●ブナ林の保全 筑波山の山頂部にあるブナ林は、茨城県策定の「筑波山ブナ林保全指針」に基づき育苗・植樹や外来植物の除去等の保全策が行われています。 ●環境省モニタリングサイト 1000 筑波山は「環境省モニタリングサイト 1000」事業の調査地の一つとなっており、生態系の変化状況についてのモニタリングが実施されています。 ●つくば万博の森 宝篋山では、中腹に広がる国有林(約10ha)を昭和60年(1985年)のつくば科学万博を記念して「つくば万博の森」と名付け、事業者や市民参加によって植樹活動などの森づくりが行われています。 ●筑波山地域ジオパーク 茨城県中南部に位置する「筑波山地域ジオパーク」はつくば市を含む6市からなり、筑波山や霞ケ浦など、日本を代表する大地の遺産を有しています。現在、日本ジオパークに認定されており、自然環境の保全及び観光促進の取組が進められています。 里地里山の管理 平地林の管理者不足 土地所有者の高齢化や相続などによって、管理されない森林が増加しています。生物多様性の観点に加え、近隣への悪影響予防の観点からも、平地林を適切に維持することが必要です。 環境に配慮した農業の推進が必要 乾田化や農薬・化学肥料の過剰使用などが生きもののすみかの縮小や消失につながる場合があります。自然環境と調和した持続可能な農業生産を行う、環境に配慮した農業を推進する必要があります。 農地の減少・耕作放棄 農業従事者の減少や高齢化等によって農地面積が減少するとともに、適切な維持管理がされなくなった遊休農地が増えています。農地をすみかとする多様な生きものの生息環境が失われています。 太陽光発電設備設置のための開発 太陽光発電設備の設置を目的とした、平地林の開発や農地の転用が行われており、立地選定などにおける生態系・生物多様性への配慮が求められています。 現在の取組 太陽光発電設備に関する環境配慮 再生可能エネルギー発電設備の設置や管理に関して、「つくば市再生可能エネルギー発電設備の適正な設置及び管理に関する条例」が定められています。太陽光発電設備設置については、条例内で設置を禁止する区域の設定や設置の際の届出について規定されており、良好な景観の形成や生活環境保全に関する遵守事項が定められています。 研究学園都市の緑 緑地の生物多様性への配慮が必要 多くの研究・教育機関で敷地内緑化30%以上が目標とされている等、緑地環境の保全が図られてきました。生物 多様性に配慮した管理を行うことにより、生きものの生息環境として健全な緑地の維持が求められています。 開発時の生物多様性への配慮 緑地保全の必要性 つくばエクスプレス沿線などでの開発行為において、既存緑地の減少が懸念されています。研究学園都市の建設当初の生物多様性への配慮を受け継ぎ、緑地の保全を図る必要があります。 現在の取組 地区計画における保全方針 研究教育施設地区計画では、対象となる研究・教育機関について「敷地内緑化30%以上」という方針が掲げられています。つくばエクスプレス沿線開発地域においても、地区計画の区域の整備・開発及び保全の方針として「開発地区ごとに30%以上の緑被率確保を目指す」こととされており、現存する樹林地や草地等は極力保全・活用し、その他の空地部分についても緑化を図っていくこととされています。 現在の取組 緑地保全のためのネットワーク 筑波研究学園都市にある研究機関などの敷地内緑地を将来に残していくために令和元年(2019年)に「つくば生きもの緑地ネットワーク」が立ち上げられました。研究学園都市内の研究機関や事業者、市民団体などが参加し、人と生きもののネットワークとして、生きものに配慮した緑地管理に関する情報交換や緑地の見学などの活動が行われています。 外来種 外来種の増加 本市では、既に侵入していたアライグマやセイタカアワダチソウに加え、クビアカツヤカミキリ、セアカゴケグモ等の外来生物が近年発見されています。また、周辺自治体で確認された特定外来生物*であるキョンの侵入も懸念されています。外来種の分布拡大によって、農林水産業への被害や人体への危険などだけではなく、在来種の生息を脅かし、地域の生態系がかく乱される恐れがあります。 市内で確認されている特定外来生物の例 オオキンケイギク 強靱でよく生育し、いったん定着すると在来の野草の生育場所を奪い、周囲の環境を一変させてしまう植物です。市内の河川敷や道路の法面などでよく見られます。 アライグマ 急激に個体数を増加させており、それに伴う農作物への影響や在来生態系への影響が深刻です。特に、ツクバハコネサンショウウオなど希少な野生生物の生息地への影響が指摘される等の生態系被害並びに人獣共通感染症の媒介等のおそれが懸念されています。 ウシガエル 水辺に生息するカエル類や水生昆虫類、魚類などの水辺の生態系へ大きな影響を与えています。山間地域にも入り込み、ウシガエルが生息する水辺では在来のカエル類の産卵等が確認できなくなってしまうことがあります。 クビアカツヤカミキリ 幼虫がサクラ、モモ、ウメ等の樹木の内部を食害して弱らせ、枯らせてしまう昆虫です。繁殖力が強く、一度定着してしまうと根絶が困難とされており、近年被害が広まっています。つくば市内では「茎崎こもれび六斗の森」や「高崎自然の森」をはじめとする茎崎地区内で食害が発見されています。 ツヤハダゴマダラカミキリ 様々な種類の樹木に産卵し、幼虫が樹木内を食べることで枯死させてしまいます。つくば市内ではヤナギやカツラの木での被害が確認されています。 周辺自治体で確認され、侵入が危惧されている特定外来生物 キョン 農作物の食害や、人家に侵入して樹木や花を食べるなどの被害が出ており、茨城県内では複数回確認されています。つくば市では正式な確認はされていませんが、隣接する市町村ではその侵入が確認されています。 市内で確認されている条件付特定外来生物 アカミミガメ・アメリカザリガニ 令和5年(2023年)に条件付特定外来生物に指定されました。アカミミガメとアメリカザリガニは生態系に大きな影響を与える生物である一方、ペットとして飼っている方も多い生きものであることから、他の特定外来生物に適用されている規制の一部が除外されています。市内の河川やため池、公園の水辺に生息しています。 ヌマガエル・コイ 生態系への影響が懸念されるのは、特定外来生物だけではありません。近年急速に分布拡大している国内由来の外来種ヌマガエルは、在来種であるトウキョウダルマガエル、ニホンアカガエル、ニホンアマガエルなどと生息域が重複し、生態的影響が懸念されています。また、河川や公園の池で身近なコイは、水草や水生動物など様々な生物を食べることに加え、泥を巻き上げ、水を濁らせ水質を悪化させることから、水域生態系へ大きな影響を与えています。 病害虫 病害虫による被害 つくば市内でナラ枯れやクビアカツヤカミキリによる被害が生じています。生物多様性だけではなく、観光への影響も懸念されています。 有害鳥獣 有害鳥獣による被害 農林業従事者の減少や里地里山の荒廃によって、農地や民家に野生動物が近づきやすくなっています。本市では、イノシシによる稲・野菜・イモ類などへの被害が特に多く、令和3年度(2021年度)の被害額は約1,028万円に上ります。 生物多様性情報 生きもの調査の不足 本市では筑波山をはじめ、都市公園や里地里山等の身近な環境にも生きものが生息しています。そのため、その生息状況について、継続的に調査を実施していくことが求められます。 緑地情報の把握が必要 緑地を適切に管理していくためには、市内の緑地情報をより正確に把握することが求められます。土地利用区分による緑地の把握だけでなく、研究・教育機関の敷地内緑地など、詳細な緑地情報が必要です。 情報の集約・発信ツールの不足 市内の自然環境や生物多様性に関する情報を集約、発信するためのツール・仕組みが不足しています。 現在の取組 環境教育カリキュラム 市内全小中学校で実施されているつくば市独自の教科「つくばスタイル科」ではコアカリキュラムとして「環境」が設定されています。 身近な自然の変化、自然との関わりを通して、人と環境との関係性を意識し、自然と共生するための人間生活を考え、さらに、持続可能な社会の実現に向け環境にやさしい社会づくりについて考えを深めていく活動を行っています。 野生生物の保全 野生生物の保全が不十分 市内には多種多様な生きものが生息しています。これまでより、野生生物の保護に関する取組をより充実させていく必要があります。 現在の取組 野生生物保全の取組 市内の都市公園や平地林、研究機関の一部では管理において野生生物保全のための取組が行われています。管理の際に、野生生物のすみかとするための古木残置や、下草刈りにおいて希少植物を刈り取らないためのマーキング等の配慮が行われている場所もあります。都市公園では、希少植物生育エリア周辺を柵で囲って守ることで、個体数が増えたという報告もあります。 事業者や市民団体による取組 事業活動における取組推進が必要 生物多様性国家戦略において、ネイチャーポジティブ経済は「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させることに資する経済」と定義されています。 このネイチャーポジティブ経済の実現に向け、生物多様性民間参画ガイドライン第3版の公表や、環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14001の改定、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD*)の動向などもあり、事業者の生物多様性への関心が高まっています。そのような関心を実際の取組につなげていくためには、事業者との連携や情報提供を強化する必要があります。 市民団体への活動支援が必要 市民団体等が保全活動に積極的に取り組んでおり、つくば市の生物多様性の保全や普及啓発等において重要な役割を果たしています。今後も生物多様性の保全・回復を継続的に実施していくため、市民団体等の実践する生物多様性に関する活動への支援が必要です。 現在の取組 事業者・研究機関の取組 ●希少種保全の取組 市内の事業所・研究所の一部でつくば市内や茨城県内の希少種保全を目的とした、生態学的特性の把握調査や移植・播種試験などが行われています。 ●生物多様性に配慮した緑地(自然共生サイト等) つくば市内では現在、事業所・研究所の敷地4か所が自然共生サイト*として認定されているほか、緑地を認定・認証する制度であるJHEP認証*やABINC認証*、SEGES認定*を受けている事業所等もあります(資料4:P.資-11参照)。これらの場所では、生きものモニタリングや緑地の管理が行われており、敷地内の生物多様性の保全が図られています。 (4)市民の生物多様性に関する認識 市民がつくば市の生物多様性について普段感じていることや日頃の生物多様性に配慮した取組の実施状況を把握することを目的に、市民を対象にアンケート調査を実施しました。調査期間は令和5年(2023年)9月1日~9月23日であり、郵送配布・郵送回収(WEB回答も可)で実施し、郵送数1,990件のうち651件の回答がありました(回答率:約32.7%)。 生物多様性の理解度が高い 「『生物多様性』という言葉を知っていますか。」という問いに対して、市民の42.2%が「言葉の意味も知っている」と回答しました。全国での理解度(29.4%)※と比較すると高い値であり、つくば市民の生物多様性の理解度は高いと考えられます。 重要な生きものでも認知度が低い 生きものの認知度(「この10年間で実際に見たり、鳴き声を聞いたことがある」+「どんな生きものか思い浮かべることができる」+「名前は聞いたことがある」)はフクロウ(96.0%)、ヤマユリ(91.5%)、オオタカ(90.7%)で 90%以上と高い結果となりました。一方、県のレッドデータブックに掲載されているアズマヒキガエルの認知度は約半数(50.5%)に留まり、国内希少野生動植物種であるツクバハコネサンショウウオ(32.2%)、環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されているキンラン(22.3%)の認知度は低い結果となりました。 筑波山系や身近な自然が大切 つくば市で大切だと考える自然(選択式)について、筑波山と回答した市民の割合が95.7%と最も高く、多くの市民が自然豊かな筑波山に誇りと愛着を持っていると考えられます。次いで、洞峰公園(70.4%)、畑地・水田 などの田園風景(62.4%)、街路樹(53.9%)、ホタル(53.5%)、宝篋山(50.5%)の割合が高く、都市公園や街路樹、田園風景などの身近な自然が多く挙げられました。 意欲はあるが、実際に行動することが難しい 地域の緑化活動や自然観察会など、生物多様性に関するイベント・保全活動に参加したことがある(「積極的に参加している」+「参加したことがある」の回答割合)という回答はいずれも14%以下という結果となりました。一方で、「参加したいが難しい」との回答も多く(いずれの取組でも45%以上)、生物多様性に関する取組に関心・参加意欲はあるものの、実際に行動に移すことが難しいと考える市民が多いようです。 また、普段の消費活動に関する取組については、「生物多様性に配慮したマークのある食品・商品を選んで行動する」に取り組んでいる市民の割合は少ない結果(「いつも取り組んでいる」+「時々取り組んでいる」の回答割合が18.4%)となりました。 (5)つくば市の生物多様性の「強み」「弱み」「機会」「脅威」 つくば市の生物多様性の「強み」「弱み」 強み 多様な自然環境 ・筑波山をはじめとする山々、牛久沼などの池沼や河川、里地里山などの多様な自然環境が存在する ・筑波山にはブナ林や希少種などの着目すべき自然が存在し、多様な種が生息する場所となっている ・希少種(キンラン・ツクバハコネサンショウウオなど)を含め多様な生きものが生息している ・都市空間の緑地も含めた生態系ネットワーク*が形成されている ・水郷筑波国定公園に指定された自然がある 研究学園都市としての特性 ・自然と科学が調和したまちが形成されている ・研究学園都市として多数の研究・教育機関があり、生物多様性保全の主体となる ・研究機関在籍者など市民の中にも学識経験者が多い(退職後の市在住者含む) ・研究学園都市建設当初の考えが引き継がれ、緑地が確保・管理されている ・多くの研究・教育機関において地区計画に基づき敷地内の緑化が図られているなど、都市緑地の確保に貢献している ・生垣や街路樹が植えられ緑のある街並みが形成されている ・ペデストリアンデッキ沿道に公園や施設が整備されている 生活に身近な自然 ・公園・街路樹・研究所緑地・平地林など、市民生活の身近に自然がある ・市街地や公園にもキンランやフクロウなどの生きものが生息しており、身近な場所でも豊かな自然環境が存在している ・市民緑地や自然体験施設など自然と触れ合う場所がある 市民意識・事業者の関心 ・4割以上の市民が生物多様性という言葉の意味を知っている ・約96%の市民が大切な自然として筑波山を挙げている ・生物多様性に関心を持っている事業者が存在する 生物多様性に関するこれまでの取組 ・市民団体が保全活動に積極的に取り組んでいる ・モニタリングサイト1000として筑波山では継続的な調査が行われている ・つくばスタイル科では環境にやさしい社会づくりについて子どもたちが学んでいる ・筑波山地域ジオパークの取組が進んでいる ・市や市民がSDGSに精力的に取り組んでいる ・生物多様性に関する緑地認証(ABINCやSEGES、JHEPなど)や自然共生サイトに認定された事業所・施設がある ・市民団体や研究・教育機関により、自然観察会や生物多様性に関する講演会等の普及啓発活動が実施されている 国内外の動向を踏まえた「機会」「脅威」 機会 生物多様性に関する国内外の動向 ・昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択され、自然と共生する世界を目指した取組が進んでいる ・生物多様性国家戦略2023-2030が策定され、ネイチャーポジティブの実現に向けた動きが加速している ・30by30目標*(2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標)の達成に向け、国内でも自然共生サイトの認定など、民間参画が重要となっている ・国の第6次環境基本計画において、「現在及び将来の国民一人一人の生活の質、幸福度、ウェルビーイング、経済厚生の向上」を示す『ウェルビーイング/高い生活の質』」が重視されている 企業活動における生物多様性 ・生物多様性民間参画ガイドライン、ISO14001の改定などにより企業の生物多様性への関心が高まっている ・生物多様性に関する緑地の認証など企業の取組を評価する認証制度が構築されている ・ESG投資などで企業の生物多様性に配慮した取組が評価されたり、TNFDによる企業の生物多様性に関する情報開示が求められたりしている ・外来生物法が改正された ・日本へのインバウンド(訪日外国人旅行者)需要が回復基調となっている ・SDGs達成に向けた取組が国内外で進んでいる 弱み 開発行為 ・農地や森林の宅地化等が進んでいる ・太陽光発電設備設置のための開発が進んでいる ・道路の新設、拡幅や大規模開発で生物多様性が大きく損なわれる可能性がある 保全活動の担い手不足 ・保全活動に参加したいと考える市民も多いが、活動の担い手は不足している状況となっている ・保全活動の参加者が固定化しており新たな担い手の確保・育成が必要 自然への働きかけの縮小 ・手入れ不足によって里山などの自然の質が低下している ・農地面積が減少し、遊休農地が増加している ・イノシシなど数が増えすぎた野生動物によって農業などに影響が及んでいる 外来種・病害虫の被害 ・クビアカツヤカミキリやアライグマなどの特定外来生物の侵入が確認されている ・シカ、キョン等の生息域拡大が懸念される ・ナラ枯れの被害が発生している 日々の暮らしにおける取組 ・生物多様性に配慮した商品の購入、保全活動等への参加を積極的に行っている市民の割合は少ない 生物多様性情報の不足 ・市街地での生物多様性に関する継続的な調査が実施されていない ・市内の自然環境に関する情報を集約するツール・仕組みがない ・生物多様性情報を発信するツール・仕組みがない 推進体制の欠如 ・様々な主体が連携して生物多様性保全に取り組むための体制が無い 生物多様性施策の充実が必要 ・生物多様性は比較的新しい政策課題であるため、市の施策・事業を充実させていくことが必要 脅威 生物多様性の損失 ・現在の絶滅速度は、過去の生きものの絶滅速度をはるかに上回っている ・開発行為や里地里山の管理不足などの直接的な要因による生態系への影響は依然として大きく、国内の生物多様性は現在も損失の傾向が継続している 外来種被害 ・侵略的外来種*は、単独または他の要因と複合的に、世界の動植物絶滅の約6割に影響している ・侵略的外来種による世界の経済コストは昭和45年(1970年)以降、10年ごとに少なくとも4倍ずつ膨れ上がっている ・交通網の発達・流通によって新たな外来種の侵入・定着が起きることが懸念される 気候変動 ・今後、気温上昇や激甚災害等によって生きものの生息適地が減少していくことが懸念される 第3章 戦略推進にあたっての考え方・将来像 本市の生物多様性の特徴や課題などを踏まえ、戦略を推進するにあたっての考え方や将来像を示します。 また、本戦略の推進に向けて選定した「つくば市で大切にしたい生きもの」について示します。 1.戦略推進にあたっての考え方 つくば市環境基本条例における基本理念 つくば市環境基本条例に示されているとおり、私たちは、筑波山を望む豊かな自然の恵みの下で、生命を育み、日々の暮らしを営んでいます。そして、この健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受する権利を有するとともに、その環境を将来の世代に引き継ぐことができるよう環境を保全する責務を担っています。 つくば市環境基本条例の第3条には次のような基本理念が示されており、本戦略もこの基本理念にのっとり推進していきます。 つくば市環境基本条例の基本理念(第3条) (1) 健全で恵み豊かな環境が市民の安全で快適な生活に欠くことができないものであることにかんがみ、これを将来にわたって維持し、及び向上させ、かつ、現在及び将来の世代の市民がこの恵沢を享受することができるように積極的に推進すること。 (2) 人と自然とが共生することができる恵み豊かな環境を確保するために、樹林、農地、水辺等における多様な自然環境を有効に活用しつつ保全し、環境への負荷の少ない持続的に発展することができる社会の構築を目指すこと。 (3) 市、事業者及び市民がその事業活動及び日常生活において環境の保全を優先的に配慮し、それぞれの責務に応じた役割分担の下に、協働によってこれに取り組むこと。 (4) 地球環境保全が人類共通の極めて重要な課題であることから、市、事業者及び市民が地球環境保全を自らの問題としてとらえ、国際的な連携及び協力の下に推進すること。 キャッチフレーズ 本戦略に基づき、市の生物多様性の保全及び持続可能な利用を推進していくためのキャッチフレーズを次のように設定します。 生物多様性の共創によるネイチャーポジティブの実現 3つの基本方針 本戦略は、上位計画(つくば市未来構想及び第3次つくば市環境基本計画)や市の生物多様性の特徴を鑑み、次の3つの基本方針に基づき推進していきます。 <戦略推進にあたっての3つの基本方針> 筑波山や田園・里山、研究学園都市のネイチャーポジティブ(自然再興)を目指し、生物多様性の保全に加え、回復に挑戦します 科学のまちの最先端の科学を学びながら、多様な主体が連携・協働して生物多様性に関する活動を行います 生きものとの出合いが日々の暮らしを豊かにするように、生物多様性が市の魅力の一つとなって幸せあふれる未来につなげます 重視する観点 本戦略では、つくば市の生物多様性の現状や課題、国内外の動向等を踏まえ、次の観点を重視しながら基本戦略・施策を推進します。 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと 昆明・モントリオール生物多様性枠組や生物多様性国家戦略 2023-2030 等の国内外の動向を追い風に、市の生物多様性の取組を加速させることが必要です。 重視する観点 ネイチャーポジティブの実現に向けた具体的取組を推進する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと 市には筑波山や里山などの着目すべき生態系が残されています。絶滅危惧種が生息するこれらの生態系を保 護・保全していく必要があります。 重視する観点 筑波山や里山などの着目すべき生態系を保護・保全する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと つくば市は研究学園都市として発展してきました。その設計・建設段階から生物多様性への配慮がみられ、現在も都市部において多種多様な生きものが見られます。現在も残された生物多様性を保全していくため、今後も都市緑地で形成される生態系ネットワークを維持・回復させていくことが求められます。 重視する観点 研究学園都市の考えを引き継ぎ、研究所やペデストリアンデッキ、都市公園などの緑地を適切に維持管理し、生態系ネットワークを維持・回復する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと ツクバハコネサンショウウオやサシバ、キンランなどの野生生物が生息しています。野生生物の保護に向けた取組やモニタリングを行うことが必要です。 重視する観点 野生生物の保護やモニタリングを実施する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと 侵略的外来種が市域にすでに多く侵入していることから、戦略的に外来生物対策を進めることが必要です。 重視する観点 外来生物対策を推進する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと 生物多様性に関する取組を推進するためには、生物多様性情報を発信・集約していくことが有効であることから、情報発信・集約機能を強化していきます。 重視する観点 市内の生物多様性情報を発信・集約する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと 市民一人ひとりが生物多様性の重要性や価値を認識することは不可欠であるため、生物多様性に関する普及啓発や環境教育の充実が求められます。 重視する観点 生物多様性に関する普及啓発や環境教育を推進する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと 生活・消費活動における生物多様性への配慮は、社会全体で生物多様性へ配慮していく基礎といえます。市民の生物多様性に配慮する行動の割合は高くないことから、市民の行動変容を促していくことが重要です。 重視する観点 生物多様性に配慮したライフスタイルへと市民の行動変容を促進する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと 市内の重要な生態系における生物多様性保全を継続的に実施していくためには、保全活動の担い手を確保・育成することが必要です。 重視する観点 保全活動の担い手を拡げる取組を推進する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと イノシシやアライグマなど、野生鳥獣による農業被害が発生しており、野生鳥獣との軋轢の解消が求められています。 重視する観点 野生鳥獣による被害の対策を推進する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと 生物多様性に取り組もうと考える民間企業が増えていることから、市から事業者へ働きかけることは有効と考えられます。 重視する観点 生物多様性に配慮した事業活動を推進する 現状・課題等を踏まえ本戦略に必要なこと 市内には、生物多様性に取り組む市民や事業所、市民団体、研究・教育機関等があるため、これらの多様な主体が連携・協力して取り組むことで、生物多様性に関する事業・取組を総合的に推進することが可能になります。そのため、多様な主体が連携・協力するためのプラットフォームが必要と考えられます。 重視する観点 市民や事業所、市民団体に加え、研究・教育機関も数多く存在するため、これらの多様な主体の連携する生物多様性に関する推進体制を構築する 2.つくば市の生物多様性の目指す姿 令和32年(2050年)につくば市で実現する生物多様性に関する将来像を次のように設定します。 ツクバハコネサンショウウオなど、筑波山の希少な生きものや生息地が守られています。ハイキングや登山を楽しみながら生きものや自然について学ぶことができ、筑波山地域ジオパークの人気エリアとして、国内外から多くの観光客が訪れています。利用マナーがしっかりと周知されており、多数の人が訪れる観光地でありつつ、希少な生きものが生息する場所となっています。 屋敷林や平地林は古くから残る大切な自然として維持・管理が行われています。平地林の管理には年代問わずたくさんの人が参加しています。また、茅場での採取作業が行われており、採取された茅は市内の文化財の茅葺 屋根等にも活用されています。 大学や植物園などでは希少な生きものがいなくなってしまわないように、自生地から救出された植物の保全などの取組が行われています。また、敷地内の緑地やそこに生息する生きものについて自然博士が案内してくれた り、イベントや学習プログラムを通じて生物多様性やそれを守ることの意義を深く学んだりしています。 美しい田園風景の中で多くの人々がサイクリングを楽しんでいます。筑波山の麓に広がる田んぼと里山林が一体となった風景も望むことができます。豊かな自然の中には、季節ごとに様々な生きものが暮らしています。 市民や市民団体によって、市内の生きものの状況を把握するために生きものモニタリングや里山の管理が行われています。新たな参加希望者も多く、どんどん輪が広がっています。里山は管理の手が行き届いており、子どもたちも安心して遊べる場となっています。市内だけではなく、週末には市外からも里山管理の参加者が訪れています。 生物多様性に配慮した農業が行われています。芝畑や麦畑などでは今年もヒバリが子育てをしている様子が見られます。田んぼには生きもののすみかとして冬の間も水が溜められており、水鳥がやってきました。また、化学肥料や農薬が正しく使われており、農業生産と生きもののすみかの両方が実現しています。生きものを観察したり調査したりするためにドローン等の技術も活用されています。 子どもたちが、虫取りや魚釣りなど自然の中で遊ぶ姿がよく見られます。週末には小学校の授業で知った生きものを実際に観察しています。親子で自然や生きものにふれあう機会が増えています。 野生動物が公園やペデストリアンデッキを自由に行き来し、生きもののネットワークが作られています。建物では緑地を増やすために屋上緑化などが進められており、都市部でもいきいきとした生きものの姿を見ることができます。 市内に点在する湿地などの水辺環境が守られており、希少な生きものが生息しています。住宅地では、生物多様性に配慮した緑化や庭づくりが行われており、生きものの生息地の連続性が保たれています。 事業者も生物多様性のために取り組んでいます。事業所内にビオトープを設置している事業者もあり、たくさんの生きものが生息しています。小学生なども社会見学に訪れ、環境学習の場としても活用されています。 緑豊かな公園には街中でも希少な生きものが生息しており、市民の憩いの場や自然とのふれあい・学びの場として人気です。公園内は普段から、自然の中でのウォーキングを楽しむ人や自然観察に訪れた人でにぎわっています。 研究機関では、生物多様性を守るための情報の蓄積や研究が行われています。科学の力を使って、生物多様性保全のための新しい技術が開発され、市内だけではなく様々な場所で活用されています。また、敷地内の緑地と他の公園や施設の緑地の連続性が保たれており、生きものが自由に行き来しています。 学校の授業で農業体験をしています。市産農産物は市内の小売店や飲食店に運ばれ、地産地消が実現しています。消費者も市産農産物や生物多様性についての認証を受けた商品を積極的に購入しています。 里山では、市民が自由に自然とふれあうことができます。自然観察会も開催され、つくば市で暮らす生きものについて詳しく知ることができます。 3.つくば市で大切にしたい生きもの つくば市には多種多様な動植物が生息しています。その中から、本戦略において、特に着目する種を「つくば市で大切にしたい生きもの」として選定しました。これらの種について、今後、モニタリングを継続するとともに、市民が親しむ機会をつくっていきます。 なお、「つくば市で大切にしたい生きもの」は、今後「つくば市の生物多様性に関する活動協議会(仮称)」等において議論しながら、必要に応じて見直します。 つくば市で大切にしたい生きもの 一覧 植物 ミズニラ アカマツ(アカマツ林) アマナ カタクリ ヤマユリ キンラン類(キンラン、ギンラン) ジョウロウスゲ ホシザキユキノシタ タコノアシ ワレモコウ ケヤキ(ケヤキ林) ブナ(ブナ林) スミレ カワラナデシコ ヤマツツジ トウゴクミツバツツジ フデリンドウ ヒイラギソウ ツクバキンモンソウ ツリガネニンジン コオニタビラコ タムラソウ カントウタンポポ ヨロイグサ 哺乳類 コウモリ類 ノウサギ カヤネズミ キツネ 鳥類 コガモ イカルチドリ オオタカ サシバ フクロウ カワセミ コゲラ ヒバリ セッカ ルリビタキ 爬虫類 ニホンカナヘビ シマヘビ 両生類 ツクバハコネサンショウウオ アズマヒキガエル ニホンアカガエル 昆虫類 イトトンボ類 オニヤンマ ヒガシキリギリス ニイニイゼミ シマアメンボ コオイムシ ギンイチモンジセセリ ムラサキシジミ ツマグロヒョウモン オオムラサキ オナガアゲハ ツクバクロオサムシ アオヘリアオゴミムシ シマゲンゴロウ オオヒラタシデムシ タマムシ ホタル類 アシナガバチ類 ニホンミツバチ キムネクマバチ 合計 6分類 63種 第4章 基本戦略・施策 本戦略のキャッチフレーズや基本方針などを踏まえ、将来像を実現するため、今後 10 年間で実施していく基本戦略・施策について示します。 【4つの基本戦略及び施策】 ●つくば市の生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する戦略・施策の全体像 戦略推進にあたっての考え方を鑑み、本戦略の将来像を実現するため、4つの基本戦略「つくばの生物多様性を“守りはぐくむ”」「つくばでは生物多様性が“当たり前”になる」「つくばの生物多様性を“活用する”」「つくばの生物多様性に“みんなで取り組む”」を設定した上で、その施策を実行していきます。また、市の生物多様性に関する取組を先導していく役割を果たす先導的施策を設定するとともに、基本戦略・施策の各エリアにおける展開を示します。 ●重視する観点に特に関連する基本戦略・施策 ●基本戦略に紐づく施策及び取組の一覧 基本戦略に紐づく施策及び市の推進する取組について整理します。また、各先導的施策について、特に関連する取組に番号を示します。 基本戦略1 つくばの生物多様性を “守りはぐくむ” 施策① 重要な生態系の保護 重要な生態系の保護 先導的施策7 水郷筑波国定公園等による筑波山・宝篋山の保護管理 施策② 生態系ネットワークの維持・回復 里山や農地の生態系保全・回復 水辺生態系及び水生生物の保全・回復 住宅・事業所等における生物多様性緑化の推進 先導的施策 4 施策③ 野生生物の保護 希少野生生物の保護 重要な野生生物のモニタリング 先導的施策 2 施策④ 都市緑地の維持管理・回復 都市緑地の確保及び生物多様性に配慮した緑地管理 都市公園等の緑地の適切な維持管理・回復 街路樹及びペデストリアンデッキの適切な維持管理 施策⑤ 外来生物対策等の推進 戦略的な侵略的外来種対策の検討 外来生物の防除及び侵入状況確認 市民等と連携した外来種対策の推進 外来種に関する普及啓発 病害虫対策 基本戦略2 つくばでは生物多様性が“当たり前”になる 施策① 行動変容に向けた生物多様性の理解増進 生物多様性に関する情報の発信 先導的施策5 自然観察会や講演会等による生物多様性の普及啓発 施策② 環境教育・環境学習の推進 つくばスタイル科の推進 身近な生きもの調査等による環境学習の推進 施策③ 日々の暮らしにおける行動変容の促進 生物多様性を意識したライフスタイルへの転換促進 先導的施策 3 市民の保全活動実践を後押しする仕組み構築 先導的施策 3 施策④ 保全活動の主体となる人材の育成 保全活動を担う人材育成事業の検討 里山等の管理活動体験 先導的施策 7 基本戦略3 つくばの生物多様性を“活用する” 施策① エコツーリズム等の推進 エコツーリズムの推進 市の生物多様性の魅力を発信 施策② 生態系サービスを体感できる自然体験推進 自然体験施設の活用・運営 生活の豊かさ向上につなげる自然との触れ合いを促進 施策③ 魅力的な田園風景の保全・活用 農地の保全・継承 環境に配慮した農業の推進 地産地消の推進 施策④ 野生鳥獣との軋轢の解消 有害鳥獣対策の推進 施策⑤ 気候変動対策と生物多様性保全の両立 再エネ事業における自然景観への配慮 気候変動対策における森林等の活用 施策⑥ 生物多様性に配慮した事業活動の推進 生物多様性を意識した事業活動に関する普及啓発 先導的施策3 事業活動に生物多様性を統合するための支援 先導的施策3 開発に伴う環境影響評価等へ対応 市役所における環境物品等の調達 基本戦略4 つくばの生物多様性に“みんなで取り組む” 施策① 生物多様性に関する市民活動の活性化 生物多様性マッチングシステムの活用 先導的施策6 市民団体の活性化支援 先導的施策6 市民団体の連携促進 施策② 自然共生サイト等の認定促進 自然共生サイト等の認定促進 自然共生サイト等の連携支援 生物多様性保全・再生エリア候補の把握 先導的施策 7 施策③ 継続的なモニタリング 研究機関・専門家等と連携したモニタリング 先導的施策 2 市民参加型モニタリングによる継続的調査 先導的施策 2 生物多様性関連文献の収集 施策④ 推進体制の充実 実行力のある推進体制の構築 先導的施策 1 市役所内の連携・理解醸成 基本戦略1 つくばの生物多様性を“守りはぐくむ” 【基本的考え方】 市内の重要な生態系について保護管理を進めるとともに、生きものの地域性に配慮しながら生態系ネットワークを維持・回復し、生物多様性を“守りはぐくむ”ことを目指します。また、希少野生生物に着目した保護策を実施し、重要な野生生物についてモニタリングを継続します。 つくば市の特徴の一つである都市緑地について、緑地確保及び生物多様性に配慮した管理を行います。また、生物多様性の脅威である外来生物対策や病害虫対策を推進します。 【目標値】 指標 生物多様性保全・再生エリア※ 注釈※生物多様性保全・再生エリア:生物多様性の保全・再生の観点から重要な場所であり、既に生物多様性に関する諸制度による指定や認証等のあるエリアまたは継続的な活動を確認できるエリア。 なお、世界・国では30by30目標として、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全することを目指している。つくば市においては令和6年(2024年)時点の保護地域及びOECM*が約7.25%であり面積を指標とすることは現実的ではないが、保護地域・OECMを増やしていくことは重要であることから、「生物多様性保全・再生エリア」の箇所数を増やす目標を掲げる。 現状値 27か所(2024年9月時点) 2030年度 45か所 2034年度 75か所 目標達成に必要なこと ・現状の保全・再生活動を継続すること ・事業者等の取組を促進すること ・候補地の把握及び保全・再生活動の実施 指標 つくば市で大切にしたい生きものの生息が回復した地点 (例:アズマヒキガエル、キンラン、カヤネズミ、オオムラサキ等) 2030年度 5か所 2034年度 10か所 目標達成に必要なこと ・生息地となりうる箇所の保全活動 指標 戦略的な侵略的外来種対策ロードマップ 2030年度 策定 2034年度 ロードマップに則り対策を推進 目標達成に必要なこと ・ロードマップの作成(侵略的外来種による影響を軽減するための検討) 施策① 重要な生態系の保護 重要な生態系の保護 市内の重要な生態系の保護・保全・管理を行います。また、今後も、重要な生態系のモニタリングを継続的に実施するとともに、市内の重要地域を網羅的に把握するよう努めます。 水郷筑波国定公園等による筑波山・宝篋山の保護管理 水郷筑波国定公園の管理運営及び筑波山鳥獣保護区特別保護地区の管理を通じて、筑波山及び宝篋山の保護管理を行います。また、『筑波山ブナ林保全指針』に基づき、ブナ林の保全管理を行うとともに、筑波山由来ブナの生育域外保全を進めます。 施策② 生態系ネットワークの維持・回復 里山や農地の生態系保全・回復 森林生態系の保全・回復を推進するため、森林所有者や市民団体等と連携しながら、里山林の管理を実施します。市有林の適正管理に加え、私有林の適切な管理について啓発を図るとともに、森林管理を適切に行う必要のある里山林(平地林を含む)の管理を支援します。また、既に指定されている保安林の維持に努めます。宝篋山ふるさとの山づくり事業(植樹事業)により、採石場跡地の森林回復を進めます。 森林所有者と森林を活用したい人を結びつけることで持続可能な森林の維持管理を促し、森林を市民等の交流や活動を行う「たまり場」として機能させるための制度を実施します(令和7年度(2025 年度)より実施予定)。 数多くの生きものが生息している農地を維持していくため、市民団体等と連携しながら、保全活動を推進します。また、農地の維持・活用を図るとともに、生物多様性に配慮した農業に取り組むことで、農地環境を好む生きものの生息場所を保全します。 水辺生態系及び水生生物の保全・回復 小貝川や桜川などの河川、牛久沼、ため池、湿地、湧水などの現状を把握する とともに、必要に応じ河川管理者へ働きかけることで、水辺環境を維持・改善し、 水辺に生息する生きものの保全・回復を図ります。 住宅・事業所等における生物多様性緑化の推進 市街地の住宅や事業所等において、生物多様性に配慮した緑化を推進することで、飛翔性動物の移動経路や採餌・吸蜜等のスポットを創出します。そのため、つくばらしい緑地の考え方や、つくばに適した植栽種、生物多様性に配慮した緑地管理方法などについて検討し、「つくば生物多様性緑地 管理・創出ガイドライン(仮称)」としてまとめます。 施策③ 野生生物の保護 希少野生生物の保護 つくば市にはツクバハコネサンショウウオなどの希少野生生物が生息しています。関係機関と連携しながら、これらの希少野生生物の保護(域内保全)を進めるとともに、必要に応じ、希少野生生物の域外保全に取り組みます。 重要な野生生物のモニタリング つくば市において重要な野生生物のモニタリングを実施します。モニタリングの実施にあたっては、関係機関や市民団体との連携や市民参加型イベントとしての実施など、効果的な手法を採用します。 施策④ 都市緑地の維持管理・回復 都市緑地の確保及び生物多様性に配慮した緑地管理 研究学園都市の建設段階から考慮されてきた緑豊かな街並みを維持するため、地区計画制度等を活用して、研究・教育機関内の緑地や、工業団地や住宅地等の民有地などにおける緑地を維持するとともに、学校の校庭芝生化や公共施設の植栽・花壇の整備等を進めます。また、つくばエクスプレス沿線地区などの開発に伴う緑地の減少を抑制し、緑地の確保に努めます。 都市緑地の確保及び管理にあたっては、生物多様性に配慮した管理手法について周知・実施することで、市域の緑地管理が生物多様性に配慮したものとなることを促し、日々の暮らしで生きものと出合える機会を増やします。 都市公園等の緑地の適切な維持管理・回復 都市公園や市民緑地などの都市緑地の新規整備・再整備・維持管理を適切に行います。また、可能な場合には、生物多様性に配慮した維持管理になるようエリア区分ごとに管理方針を設定したり、草刈り頻度を工夫したり、公園里親制度であるアダプト・ア・パーク*等を活用して市民と連携しながら、希少種に配慮した植栽管理を行ったり、外来種の防除、植栽植え替え時に在来種の植栽にしたりするなど、生物多様性緑化に努め、生態系維持・回復を目指します。 街路樹及びペデストリアンデッキの適切な維持管理 多様な樹種で構成される街路樹を適切に管理します。また、ペデストリアンデッキの街路樹は、季節による様々な姿が街に彩りを与え、都市の景観を形成しています。一方で、植栽後 40 年以上が経過しており、老木化による樹勢の低下や腐朽による枝折れや倒木などの課題もありますが、街路樹を貴重な財産と位置づけ、街路樹の維持管理指針に基づき適切な維持管理に努めます。 施策⑤ 外来生物対策等の推進 戦略的な侵略的外来種対策の検討 侵略的外来種の防除や被害軽減、侵入未然防止を効果的に推進するため、「入れない、捨てない、拡げない」の外来種被害予防三原則に基づき、侵略的外来種対策を戦略的に行うためのロードマップを検討します。 外来生物の防除及び侵入状況確認 アライグマや外来カミキリムシ(クビアカツヤカミキリ及びツヤハダゴマダラカミキリ)、アカミミガメ、アメリカザリガニ、オオキンケイギクなどの特定外来生物やその他の外来植物等の防除を推進するとともに、外来種の侵入状況に関する情報収集を行います。 市民等と連携した外来種対策の推進 侵略的外来種対策を推進するため、市民や機関・団体、県や周辺市町村等と連携して侵略的外来種の防除活動や侵入状況の監視体制を構築します。 外来種に関する普及啓発 外来種問題について市民や市職員が正しい情報を持ち、新たに外来種が広がらないようにするため、外来種の特徴や識別ポイント、対策の方法、気をつけるポイントなどの外来種に関する情報を発信するとともに、講習会・勉強会等を開催します。 病害虫対策 カシノナガキクイムシの媒介するナラ枯れやクビアカツヤカミキリによるバラ科樹木(サクラ等)の被害などを抑制・抑止するため、病害虫対策を進めます。 基本戦略2 つくばでは生物多様性が“当たり前”になる 【基本的考え方】 市民一人ひとりが生物多様性の重要性や価値を認識し、生物多様性に配慮したライフスタイルに転換することが重要です。そのため、SDGsやジオパークに関する取組と連携を図りながら、生物多様性に関する情報発信・普及啓発や自然観察会、環境教育等を実施するとともに、日々の暮らしにおける行動変容や人材育成に関する施策を推進し、生物多様性を意識した暮らしや生きものとの出合いが“当たり前”になることを目指します。 【目標値】 指標 生物多様性理解度 現状値(2023 年度) 42.2% 2030年度 55% 2034年度 70% 目標達成に必要なこと 生物多様性に関する情報発信及び普及啓発の強化 指標 生物多様性に配慮した食品・商品購入の割合 現状値(2023 年度) 18.4% 2030年度 30% 2034年度 40% 目標達成に必要なこと 生物多様性に関する情報発信及び普及啓発の強化 指標 ツクバハコネサンショウウオの認知度 現状値(2023 年度) 32.2% 2030年度 55% 2034年度 70% 目標達成に必要なこと ツクバハコネサンショウウオに関する情報発信・環境教育 指標 ヤマユリを見たことがある市民 現状値(2023 年度) 39.5% 2030年度 55% 2034年度 70% 目標達成に必要なことヤマユリに関する情報発信やヤマユリ生育地における自然体験会の開催 指標 自然観察会や講演会等の参加者数 (つくば市生物多様性センターが関与するイベント) 2030年度 300人/年 2034年度 300人/年 目標達成に必要なこと 自然観察会や講演会等を毎年着実に開催していくこと 施策① 行動変容に向けた生物多様性の理解増進 生物多様性に関する情報の発信 生物多様性や生態系サービスに関する情報発信を行い、市民一人ひとりが生物多様性に関して理解することを目指します。具体的には、市HPやSNS、メール配信等における生物多様性情報の掲載を継続するとともに、つくば市の生物多様性情報を発信するHPの検討や生きものマップの制作等を行います。 自然観察会や講演会等による生物多様性の普及啓発 生物多様性に関する普及啓発を図るため、生きものと触れ合う自然観察会や、専門家から生きものについて学ぶ講演会・勉強会、生物多様性について語り合う地域ワークショップ、つくば生物多様性フェスティバル(仮称)、木育関連イベント等を開催・支援します。 施策② 環境教育・環境学習の推進 つくばスタイル科の推進 つくば市ならではの9年間を貫く次世代カリキュラムである「つくばスタイル科」を推進し、生物多様性に関する環境教育の充実を図るとともに、自然体験活動を伴う環境教育を進め、生物多様性に関する理解を深めます。実施にあたっては、教員や専門家、市民団体等と連携しながら、学校全体の生物多様性に関する意識醸成を図ることを目指します。 身近な生きもの調査等による環境学習の推進 身近な自然で生きものを調査するイベントや生きもの観察会、出前講座などを事業者や研究・教育機関等と連携して開催し、大人も子どもも一緒に生きものの楽しみ方を学ぶ多世代参加の環境学習を推進します。 施策③ 日々の暮らしにおける行動変容の促進 生物多様性を意識したライフスタイルへの転換促進 市民が生物多様性に配慮した物品やサービスを選択することができるよう、関連する情報(生物多様性認証等に関する情報)について発信するなど、普及啓発を図ります。 市民の保全活動実践を後押しする仕組み構築 日々の暮らしの中で市民が保全活動を実践する意欲を高めるため、インセンティブとなるような仕組みを検討・構築します。 施策④ 保全活動の主体となる人材の育成 保全活動を担う人材育成事業の検討 生物多様性に関する深い知識や技能を身に付け、保全活動の主体的役割を担えるような市民を育成することを目的とする人材育成事業を検討します。また、市民団体や事業者などの里山管理活動等を市が表彰する制度を検討し、保全活動を担う人材の育成につなげます。 里山等の管理活動体験 里山などの管理活動に、市民や事業者、市民団体、研究・教育機関等が日常的に参加することを促進するため、管理活動体験会等を開催します。 基本戦略3 つくばの生物多様性を“活用する” 【基本的考え方】 自然の恵み(生態系サービス)を活用してエコツーリズムや市民の自然体験を推進することで、自然を活かした地域づくりを行います。自然の恵みの持続的利用を推進するため、持続可能な農業を営むとともに、農林業に被害を及ぼす野生鳥獣を適切に管理します。また、事業活動における生物多様性への配慮を促すとともに、気候変動対策と生物多様性の保全・活用の両立を図ります。このように、市の生物多様性を“活用”した取組を推進することで、多様な社会課題の解決を目指します。 【目標値】 指標 自然体験施設利用者数 現状値(2023年度) 宿泊者数49,155 人 イベント体験者数3,529 人 2030年度 宿泊者数55,000 人 イベント体験者数4,000 人 2034年度 宿泊者数60,000 人 イベント体験者数5,000 人 目標達成に必要なこと自然体験施設の利用促進 指標 有機栽培圃場面積 現状値(2023年度末) 88.7ha 2030年度(2029年度末) 106.2ha 2034年度(2034年度末) 123.7ha 目標達成に必要なこと 環境に配慮した農業の推進 指標 地場産物の学校給食における地産地消率 現状値 金額ベース35.7% 食品数ベース15.4% 2030年度 金額ベース60.0% 食品数ベース25.0% 「つくば市の学校給食における地産地消推進ガイドライン」における 2028 年度の目標値 2034年度 「つくば市の学校給食における地産地消推進ガイドライン」に準ずる 目標達成に必要なこと 「つくば市の学校給食における地産地消推進ガイドライン」に基づいた、地場産物の学校給食への活用推進 指標 本戦略策定後にネイチャーポジティブ宣言を行った団体数 2030年度 100団体 (累計) 2034年度 200団体 (累計) 目標達成に必要なこと 生物多様性を意識した事業活動に関する普及啓発を推進 施策① エコツーリズム等の推進 エコツーリズムの推進 筑波山をはじめとする自然観光資源を活用したエコツーリズムを推進し、自然を活かした地域づくりにつなげます。エコツーリズムの推進にあたっては、筑波山地域ジオパークと緊密に連携し、自然体験型ツアーの造成やインタープリテーションを強化し、自然の魅力をより強く感じられるように工夫するとともに、観光による自然への影響把握を行います。 市の生物多様性の魅力を発信 つくば市の生物多様性の魅力や“面白さ”について、市内外向けに発信します。例えば、筑波山の観光PRの際に、市の生きものの写真や魅力を掲載することで、生物多様性についても情報発信します。 施策② 生態系サービスを体感できる自然体験推進 自然体験施設の活用・運営 市民の憩いの場や観光客が自然と触れ合う場として、筑波ふれあいの里や豊里ゆかりの森、高崎自然の森、茎崎こもれび六斗の森などの自然体験施設の適切な管理・運営や良好な自然の保全をします。また、自然観察会や森の手入れ体験、収穫体験などの体験型余暇活動を実施し、自然の恵み(生態系サービス)を体感したり、自然への理解を深めたりする機会を増やします。 生活の豊かさ向上につなげる自然との触れ合いを促進 自然の風景や生きものとの触れ合いは、それ自体が魅力的な体験であるとともに、例えば豊かな感受性を育み、ストレスを緩和するなどの利点があると言われています。自然体験イベントの開催や自然体験の場の確保により、市民が自然と触れ合う機会を増やしていくことで、市民生活の豊かさを向上させ、市の魅力向上につなげていきます。 施策③ 魅力的な田園風景の保全・活用 農地の保全・継承 魅力的な田園風景の景観要素である農地の保全を図ります。農地を次世代に引き継ぐための地域計画に基づき、農業を守ることで農地の保全を進めます。 環境に配慮した農業の推進 有機農業への参入・拡大支援や栽培技術の習得支援に加え、環境保全型農業直接支払交付金を活用し、生物多様性保全に効果の高い営農活動の推進を図ります。また、被覆植物の種子配布(カバークロップ事業)や、特別栽培農産物及び有機JAS 認証*に関する有機資材購入費の補助等を行います。 農薬の適正使用に関する情報を市 HP、広報つくばへ掲載し、周知します。また、農薬の適正使用についてのチラシを、JAや農薬販売店、ホームセンター等に配布します。 地産地消の推進 市産の農産物・農産加工品等を味わったり、農業体験を行ったりする場を提供し、市民が自然の恵みを感じられる機会を創出するとともに、市産農産物を使用した市内飲食店等を地産地消店として認定し、市産農産物の消費拡大を図ります。また、学校給食で積極的に市産農産物を利用するとともに、生産者と直接交流する機会を設け、児童・生徒の地産地消や農業への関心を高めます。 つくばの食の魅力を発信するウェブサイト「Farm to Table つくば ーつくばの食の魅力ー」を活用し、つくばの大地からの贈り物である「農産物(Farm)」、農産物を料理して提供する「レストラン(Table)」、つくばの農産物を活用したグルメなど、つくばの食を総合的に発信していきます。 施策④ 野生鳥獣との軋轢の解消 有害鳥獣対策の推進 つくば市鳥獣被害防止計画に基づき、農作物の被害を防止します。例えば、イノシシ、アライグマ、ハクビシンなどによる農業被害又は生活環境被害の防止を図ることを目的として柵の設置や草刈りについて補助金を交付するとともに、イノシシの捕獲を実施します。また、アライグマについては問合せ・相談への対応、捕獲罠の貸出、アライグマ回収・運搬等を行います。これらにより、外来種であるアライグマやハクビシンによる生態系被害を軽減するとともに、野生鳥獣による農作物等への被害を減らすことで農地を保全・継承することに繋げます。 施策⑤ 気候変動対策と生物多様性保全の両立 再エネ事業における自然景観への配慮 「つくば市再生可能エネルギー発電設備の適正な設置及び管理に関する条例」に基づき、再エネ事業における筑波山への眺望景観や水辺空間の景観への配慮を促します。 気候変動対策における森林等の活用 二酸化炭素の吸収源として大きな役割を果たす森林を適切に管理し、炭素固定を続けることで、気候変動対策に貢献します。また、森林をはじめとする生態系の気候調整機能を活用し、急激な気候変化を軽減します。 施策⑥ 生物多様性に配慮した事業活動の推進 生物多様性を意識した事業活動に関する普及啓発 生物多様性に関心のある市内事業者に向け、事業活動における生物多様性への配慮を促すための普及啓発を行います。『生物多様性民間参画ガイドライン』(環境省)の周知をはじめ、生物多様性と事業活動に関するセミナーを開催するなど、市内事業者(従業員向け)の意識向上を促進します。 事業活動に生物多様性を統合するための支援 市内事業者の事業活動に生物多様性の観点を統合するための支援を行います。例えば、生物多様性への負荷が少ない持続可能なサプライチェーンを構築するため生物多様性に配慮した物品等について情報提供を行ったり、ネイチャーポジティブ経済(TNFDを含む)に関する経営層向け講座を開催したりするなどにより、事業者の生物多様性への負荷低減を促します。 開発に伴う環境影響評価等へ対応 環境影響評価法及び茨城県環境影響評価条例に基づき、市内で一定規模の開発事業を行う事業者は環境影響評価を行います。そのプロセスにおいて、必要に応じ、生物多様性への配慮を十分に行うよう促すため、適切に市長意見を提出します。また、その他の法令や市の要綱等に基づく開発時の手続きにおいて、必要に応じ、生物多様性への配慮を促す意見を提出します。 市役所における環境物品等の調達 「つくば市役所グリーン購入推進方針」にのっとり、ライフサイクル全体で資源やエネルギーの消費が少ないことや天然資源を持続可能な方法で採取し有効利用しているなど、生物多様性への影響を含め、環境負荷ができる限り低減された環境物品等の優先的な調達を推進します。 基本戦略4 つくばの生物多様性に“みんなで取り組む” 【基本的考え方】 生物多様性の保全・活用には、市民や事業者、市民団体、研究・教育機関等の多様な主体が関わり、“みんなで取り組む”ことが重要です。そのため、生物多様性に関する市民活動の活性化に取り組むとともに、民間事業者等による自然共生サイトの認定を促進したり、継続的にモニタリングを実施したり、生物多様性の保全・活用を推進する体制の充実を図ったりしていきます。 【目標値】 指標 生物多様性マッチングシステムの活用 2030年度 5件 (累計) 2034年度 20件 (累計) 目標達成に必要なこと 市以外の生物多様性マッチングシステムの活用促進及び市独自システムの構築・活用促進 指標 自然共生サイト認定数 現状値 5か所 (2024年度) 2030年度 20か所 (累計) 2034年度 40 か所 (累計) 目標達成に必要なこと 自然共生サイト認定に関する公有地の取組推進及び事業所等への働きかけ 指標 モニタリング実施回数 (つくば市生物多様性センターが関与するモニタリング) 2030年度 15回/年 2034年度 15回/年 目標達成に必要なこと モニタリングを継続的に実施すること 指標 つくば市生物多様性センター(仮称)及びつくば市の生物多様性に関する活動協議会(仮称)設置 2030年度 設置・継続的運用 2034年度 継続的運用 施策① 生物多様性に関する市民活動の活性化 生物多様性マッチングシステムの活用 本市における生物多様性に関する市民活動を活性化するため、生物多様性マッチングシステムの構築を検討します。例えば、市民活動を行っている団体と、生物多様性保全活動に関心のある事業者や市民をつなぐ仕組みを検討するとともに、市以外が実施しているマッチングシステムの活用を促進します。 市民団体の活性化支援 生物多様性に取り組む市民団体等の活動を活性化するための支援を行います(事業の委託等を含む)。また、市HPやFacebook「つくば市民活動のひろば」などを用いて市民団体活動の紹介やイベントの周知を図ります。 市民団体の連携促進 生物多様性に関する活動を行っている市民団体の連携を図るため、生物多様性市民団体ミーティング等を定期的に開催します。 施策② 自然共生サイト等の認定促進 自然共生サイト等の認定促進 環境省や県とも連携協力しながら、市内で自然共生サイト等に関する情報提供を行い、必要に応じて有識者派遣等を行うことで、公有地や事業所緑地、農地などの自然共生サイト等の認定を推進・促進します。 自然共生サイト等の連携支援 自然共生サイト等に認定されているサイトの連携を図るため、意見交換会や共同イベント等を開催します。 生物多様性保全・再生エリア候補の把握 生物多様性の観点から、市内でつくばらしい緑化を行っている民間緑地や自然再生の場として望ましい平地林などに関する情報を収集・整理し、生物多様性保全・再生エリアの候補地となり得るエリアを把握します。 施策③ 継続的なモニタリング 研究機関・専門家等と連携したモニタリング 野生動植物の生息状況の変化を速やかに把握するため、モニタリングを実施します。モニタリングにあたっては、研究機関・専門家等と連携しながら調査を実施するとともに、調査を担う市民団体の支援も行います。 市民参加型モニタリングによる継続的調査 研究者だけでなく一般市民が参加して科学的な調査を行うシチズンサイエンス(市民科学)として、市内の生物多様性情報を継続的に収集する市民参加型モニタリングを行います。 生物多様性関連文献の収集 市の生物多様性に関連する文献を集約するデータベースの構築を進めます。特に、自然愛好家等が過去に市内で調査を行った結果をまとめた文献等の書誌情報の収集を行います。 施策④ 推進体制の充実 実行力のある推進体制の構築 本戦略に基づく施策を円滑に推進するため、「つくば市生物多様性センター(仮称)」を設置します。つくば市生物多様性センター(仮称)は、生物多様性保全の取組を推進するための連携促進やネットワーク構築を行うとともに、生物多様性情報の発信及び普及啓発を行います。 また、「つくば市の生物多様性に関する活動協議会(仮称)」(事務局:つくば市生物多様性センターを想定)を設置します。活動協議会は、生物多様性の保全・活用を主体的に実施する機関・団体により構成し、市域の生物多様性情報の共有を行います。また、モニタリングや分析、保全活動、次世代の担い手づくり、市民の行動変容に向けた取組などに協働しながら主体となって取り組みます。 市役所内の連携・理解醸成 市役所内の各部局が連携を図りながら生物多様性に関する施策を推進するため、「生物多様性つくば戦略庁内連絡会議(仮称)」を開催します。また、市職員の生物多様性に関する理解醸成を促すため職員向けセミナーを定期的に開催します。 第5章 先導的施策 各基本戦略に紐づく施策のうち、今後6年間で実施し、市の生物多様性に関する取組を先導していく役割を果たす先導的施策を設定しました。これらの先導的施策について、その目的や内容、具体的なロードマップなどを示します。 先導的施策1:実行力のある推進体制の構築 【目的】 自然の恵みを将来にわたり享受しながら生物多様性を保全していくためには、本戦略の実効性を高め、施策を着実に実行していくことが求められます。そのため、つくば市の生物多様性の保全及び活用を円滑に推進し、実行していく推進体制を構築します。 【具体的内容】 〇実行力のある推進体制の構築 「つくば市生物多様性センター(仮称)」及び「つくば市の生物多様性に関する活動協議会(仮称)」を設置し、市の生物多様性の保全及び活用を推進します。 「つくば市生物多様性センター(仮称)」は、市内で生物多様性に関する取組を進めている市民団体や事業者、研究・教育機関等の連携促進や庁内の生物多様性施策・事業を円滑に推進するためのコーディネート機能を発揮します。また、市民や専門家と協働した調査を継続的に行うとともに、生物多様性に関する情報発信・普及啓発を行います。 「つくば市の生物多様性に関する活動協議会(仮称)」は、生物多様性保全に取り組んでいる市民団体、事業者、研究・教育機関による協働のプラットフォームとして設置します。つくば市の生物多様性のモニタリングを市と協働しながら実施するとともに、その保護・保全活動を実践する主体となります。なお、活動協議会の事務局は「つくば市生物多様性センター(仮称)」が担うことを想定します。 【特に関連する施策・取組】 基本戦略4‐施策④「実行力のある推進体制の構築」 先導的施策2:生物多様性モニタリング 【目的】 生物多様性に関する取組を進める基礎的情報として、市内の生物多様性の状態や変化を把握することが必要です。市民団体や専門家等と協働しながら野生動植物の生息状況のモニタリングを行うとともに、市民参加型モニタリングを開催します。 【具体的内容】 〇市内各所で市民団体・専門家モニタリング 市民団体や専門家等と連携・協働し、市内各所で野生動植物のモニタリングを継続的に実施します。それぞれの活動場所や調査地において、「つくば市で大切にしたい種」等の生息状況を毎年確認し、活動協議会に報告することで、生物多様性データを蓄積します。 〇市民参加型モニタリングの開催 シチズンサイエンス(市民科学)として、市内の生物多様性情報を継続的に収集する市民参加型モニタリングを実施します。モニタリング活動に市民が参加することにより、地域に生息する動植物について市民が把握・体感することを促します。 【特に関連する施策・取組】 基本戦略1‐施策③「重要な野生生物のモニタリング」 基本戦略4‐施策③「研究機関・専門家等と連携したモニタリング」 基本戦略4‐施策③「市民参加型モニタリングによる継続的調査」 先導的施策3:生物多様性配慮行動促進事業 【目的】 ネイチャーポジティブを実現していくためには、個人や事業者が日々の暮らしや事業活動において生物多様性に配慮していく必要があります。生物多様性に配慮した行動を促すため、普及啓発活動を促進するとともに、行動変容につながる仕組みを検討します。 【具体的内容】 〇市民による保全活動の実践を後押しする仕組み構築 日々の暮らしにおいて、市民の保全活動への参加意欲を高めるための仕組みを検討します。例えば、「つくば生物多様性サポーター制度(仮称)」を創設し、保全活動を相当回数実践したサポーターにつくばの生きものを模したバッチ等を配布するなどにより、保全活動の推進を進めます。 〇“気づき”を促す普及啓発事業 市民向けや事業者向けに、生物多様性に関する普及啓発活動を行い、ライフスタイルや事業活動の転換を促します。普及啓発にあたっては、体験活動を通じて“気づき”を促すとともに、普及啓発イベントの対象に合わせて生物多様性情報を提供するなど行い、市民・事業者の行動変容につなげます。 【特に関連する施策・取組】 基本戦略2‐施策③「生物多様性を意識したライフスタイルへの転換促進」 基本戦略2‐施策③「市民の保全活動実践を後押しする仕組み構築」 基本戦略3‐施策⑥「生物多様性を意識した事業活動に関する普及啓発」 基本戦略3‐施策⑥「事業活動に生物多様性を統合するための支援」 先導的施策4:生物多様性緑地管理・創出ガイドライン 【目的】 つくば市における緑地の管理・創出において、生物多様性の観点を考慮することは重要です。生物多様性の観点から“つくばらしい”緑地とするための考え方や手法を検討し、生物多様性緑化を促します。 【具体的内容】 〇生物多様性に配慮した緑地の管理・創出ガイドライン つくば市における緑地の管理・創出の際に、生物多様性に配慮した緑地とするための基本的考え方や、つくば市に適した植栽種の抽出、生物多様性に配慮した植栽管理方法などを検討し、「つくば生物多様性緑地管理・創出ガイドライン(仮称)」として整理します。また、同ガイドラインを市内で周知することで生物多様性緑化を促進するとともに、地域性種苗*の育成についても検討します。 【特に関連する施策・取組】 基本戦略1‐施策②「住宅・事業所等における生物多様性緑化の推進」 先導的施策5:生物多様性の情報発信・集約機能の強化 【目的】 生物多様性に関する取組を推進するにあたり、生物多様性に関する情報を発信・集約していくツールや手段があることは有効です。そのため、つくば市の生物多様性に関する情報の発信・集約機能を強化するための検討を行います。 【具体的内容】 〇生物多様性に関する情報発信・集約機能の強化 つくば市の生物多様性に関する情報について効果的に発信・集約を行うツールや手段の検討を行うとともに、必要に応じて、情報発信・集約を行う HP の構築・運用を行います。 〇つくば生きものマップの制作 普及啓発資料として、市内の生きものの解説や分布等を掲載し、フィールドでも活用できる冊子「つくば生きものマップ(仮称)」を制作します。 【特に関連する施策・取組】 基本戦略2‐施策①「生物多様性に関する情報の発信」 先導的施策6:生物多様性に関する活動への支援 【目的】 生物多様性の保全・回復を継続的に実施していくため、市民団体等の実践する里山管理や体験型イベントなどの生物多様性に関する活動への支援が必要となっています。一方、最近では、生物多様性に関心を持つ事業者や教育機関が増えていることから、生物多様性に関して取組を行いたい事業者や教育機関等と、主体的に活動に取り組んでくれる方を探している市民団体をつなぐ仕組みは有効と考えられます。 これらのことを踏まえ、市民団体等による生物多様性に関する活動を支援するとともに、生物多様性マッチングシステムの活用・検討を行います。 【具体的内容】 〇市民団体等による生物多様性に関する活動への支援 生物多様性に関する市民活動を活性化するため、市民団体等の実施する里山管理や体験型イベントの開催等を支援します。具体的には、生物多様性に関する活動を委託業務等で実施するとともに、イベント周知への協力や専門家のあっせん等を行います。 〇生物多様性マッチングシステムの活用・検討 国等が構築している生物多様性マッチングシステムに関する情報収集を継続的に行い、その活用を図ります。 生物多様性に関する取組をしようと考えている事業者や教育機関等と、生物多様性保全を実践している市民団体等を結びつける「生物多様性マッチングシステム」を検討します。 【特に関連する施策・取組】 基本戦略4‐施策①「生物多様性マッチングシステムの活用」 基本戦略4‐施策①「市民団体の活性化支援」 先導的施策7:生物多様性保全・再生エリアの把握・活動 【目的】 生物多様性保全・再生エリアを増やすことで絶滅危惧種や希少種をはじめとする野生生物を保全していくため、候補となり得る場所について情報収集・整理を行います。また、市民や事業者、市民団体、研究・教育機関等の多様な主体が参加しながら里山づくりや湿地再生を行う取組を推進します。 【具体的内容】 〇生物多様性保全・再生エリアの把握 生物多様性保全・再生エリアの候補地となり得るエリア(自然共生サイト等の認定を目指し得るエリアや自然再生の場として望ましいエリア等)の把握を進めるとともに、有力な候補地について情報収集・個票整理等を行います。 また、つくば市内の自然共生サイト、生物多様性緑地認証取得地、生物多様性の保全活動を進めている市民団体・事業者の活動地、その他の生物多様性保全の活動を進めているエリアについて把握を継続します。 〇市民参加による里山等の再生 市民の里山管理への関心を高めるため、まずは里山管理を体験するイベントを開催し、里山の価値やその管理方法について伝えます。 その上で、様々な主体が連携・協力しながら、里山をはじめとする緑地の管理や湿地再生を身近に楽しむ、市民参加での里山づくり等を実施します。里山等の保全活動を楽しみながら実践できるようなモデル的な取組を試行します。 【特に関連する施策・取組】 基本戦略1‐施策①「重要な生態系の保護」 基本戦略2‐施策④「里山等の管理活動体験」 基本戦略4‐施策②「生物多様性保全・再生エリア候補の把握」 第6章 エリアへの展開 基本戦略に基づき、各エリアで生物多様性に関する施策・取組を具体的に推進していくため、「筑波山エリア」「田園・里山エリア」「研究学園都市エリア」における基本的方針を示します。また、各エリアにおける「主な重要地域」について、指定・認証状況等や取組、スケジュール(予定)などについて示します。 【筑波山エリアにおける基本的方針】 筑波山エリアにおいて生物多様性の保全と持続可能な利用を推進するための基本的方針は次の通りです。 戦略 基本的方針 基本戦略1 つくばの生物多様性を“守りはぐくむ” ○「筑波山の植生」は特定植物群落に選定されている重要な生態系であり、数多くの動植物が生息しています。筑波山は水郷筑波国定公園(筑波地域)及び鳥獣保護区等に指定されていることから、公園計画書や保護管理指針などに則り、それぞれの行為規制等により保護を図ります。 ○また、筑波山ブナ林保全指針が「筑波山のブナ林を中心とする自然林を天然更新によって存続させていくこと、また、一般の利用者にブナ林保全を通して、自然環境の重要性や、環境保全活動への理解を深めてもらい、ブナ林を中心とした筑波山の貴重な自然環境を次の世代へ引き継いでいくこと」を目標としていることを踏まえつつ、同指針に基づき、ブナの育苗と若木の植栽、ロープ柵の設置とアズマネザサの刈り払い、外来植物の除去、継続的なモニタリングの実施、ブナ林保全に関する啓発と普及を進めます。 ○種の保存法により、国内希少野生動植物種であるツクバハコネサンショウウオの保護を図ります。 ○外来生物による重要な生態系への影響を軽減するため、外来生物防除を強化していくとともに、未侵入外来生物の監視を継続します。 基本戦略2 つくばでは生物多様性が“当たり前”になる ○筑波山登山道や筑波ふれあいの里などにおいて、生きものとの出合いを楽しむ自然観察会を開催し、筑波山の生物多様性に関する普及啓発を進めます。 ○筑波山を舞台にした環境学習の機会を設け、植生の垂直分布やつくばにゆかりのある野生生物について市民が体感します。 基本戦略3 つくばの生物多様性を“活用する” ○筑波山地域ジオパークと緊密に連携し、自然体験型ツアーの造成やインタープリテーションの強化を図り、筑波山のエコツーリズムを推進します。 ○入山者による登山道以外への侵入や植生破壊を防止するため、筑波山や宝篋山の環境保全活動や登山マナーなどを分かりやすく PR し、自然と共生する持続可能な観光地の構築を図ります。 ○筑波ふれあいの里などの自然体験施設の管理・運営を適切に行い、自然体験型余暇活動を通じて、楽しみながら自然への理解を深める機会を増やします。 ○「つくば市再生可能エネルギー発電設備の適正な設置及び管理に関する条例」に基づき、再生可能エネルギーの設置を禁止します。 基本戦略4 つくばの生物多様性に“みんなで取り組む” ○筑波山の野生生物モニタリングを研究機関や専門家等と連携し、継続的に実施します。 【主な重要地域における取組】 ※取組の実施主体(市以外)を<>で示す 筑波山エリアの主な重要地域における保全上の課題・リスク及び取組の概要を整理しました。 重要地域の名称 筑波山の植生 指定・認証状況等 水郷筑波国定公園、鳥獣保護区、特定植物群落、巨樹・巨木林 保全上の課題・リスク ・ブナ林の後継樹が欠如していること ・入山者の踏みつけによる植生の劣化・破壊 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 水郷筑波国定公園の保護規制計画 <茨城県> 自然公園法の行為規制により開発抑止を図る 筑波山鳥獣保護区(特別保護地区含む)における規制 <茨城県> 鳥獣保護管理法により鳥獣の保護及びその生息地の保護を図る 筑波山ブナ林保全指針による保護<茨城県> (ブナの育苗と若木の植栽/ロープ柵の設置とアズマネザサの刈り払い/外来植物の除去/継続的なモニタリングの実施/ブナ林保全に関する啓発と普及、情報提供・公開) ・ブナ林を中心とする自然林を天然更新によって存続させていくこと ・ブナ林を中心とした筑波山の貴重な自然環境を次の世代へ引き継いでいくこと モニタリングサイト1000(筑波山、北筑波登山道)における調査<森林総研> サイトを長期にわたり調査し、自然環境の質的・量的な劣化を早期に把握すること 周遊観光促進事業(筑波山や宝篋山の入山者に環境保全活動や登山マナー等を周知) 環境保全活動や登山マナーなどを入山者にPRし、持続可能な観光地の構築を図る 目標:2026 年頃までにマナー周知等を6件実施 重要地域の名称 筑波ふれあいの里 指定・認証状況等 水郷筑波国定公園、鳥獣保護区 保全上の課題・リスク (特になし) 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 樹林・草本管理の継続 施設内の樹林・草本管理を適切に実施すること 「筑波山麓自然学校」の継続的実施 筑波ふれあいの里を拠点として、筑波山の自然に親しみ、自然や里の暮らしを楽しく学ぶ体験活動や講座を年間通して実施するもの 重要地域の名称 つくば万博の森 指定・認証状況等 水郷筑波国定公園、自然共生サイト 保全上の課題・リスク (特になし) 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 分収造林契約に基づく森林管理 <公益財団法人 森林文化協会> ヒノキ人工林の定期的間伐を継続するとともに、林の辺縁部に広がるやぶや広場も適切に維持管理し、鳥類をはじめとする動植物の生息環境を保つ 森林生態系の継続的調査 <公益財団法人 森林文化協会> 森林内の生物多様性の状況を把握するため、生態系調査を継続する 【田園・里山エリアにおける基本的方針】 田園・里山エリアにおいて生物多様性の保全と持続可能な利用を推進するための基本的方針は次の通りです。 戦略 基本的方針 基本戦略1 つくばの生物多様性を“守りはぐくむ” ○平地林や湿地等の特に重要な生態系の把握に努め、その保全管理・回復を図ることで、生態系ネットワーク構築を進めます。 ○「すそみの田んぼ」や大曽根緑地環境保全地域、おぐろくの森などにおいて、市民団体や土地所有者と連携しながら農地や平地林等の保全・管理を推進します。 ○桜川や小貝川などの河川やため池、湿地(都市公園にあるものを含む)等において、継続的なモニタリングや外来種の防除等の取組を進め、水辺に生息する生きものの保全・回復を図ります。 ○外来生物による重要な生態系への影響を軽減するため、外来生物防除を強化していきます。 基本戦略2 つくばでは生物多様性が“当たり前”になる ○市民の生物多様性への理解増進及び行動変容を促進するため、田園・里山をすみかとする身近な生きものを調査するイベントや自然観察会など環境学習の機会を増やしていきます。 ○市民が里山管理活動等を体験できる機会を増やすことなどにより、保全活動の主体となる人材の育成を図ります。 基本戦略3 つくばの生物多様性を“活用する” ○茎崎こもれび六斗の森などの自然体験施設の管理・運営を適切に行い、自然体験型余暇活動を通じて、楽しみながら自然への理解を深める機会を増やします。 ○魅力的な田園風景を維持していくため、農業に関する地域計画に基づく取組を実施します。また、農地における生物多様性保全に効果の高い営農活動の推進を図ります。 ○農業体験の場として農地を活用し、自然の恵み(生態系サービス等)を享受しながら生物多様性への理解醸成を図ります。 ○市産農産物や特産品を市内へ供給し、地産地消を推進します。 ○イノシシやアライグマなどの有害鳥獣対策を推進し、野生鳥獣との軋轢の解消を図ります。 ○再生可能エネルギー施設が設置される際には、事業者に地域住民への周知及び理解醸成を促したり、生物多様性の観点から重要な地域を事業者へ伝達するなど、事業者と調整を図ります。 基本戦略4 つくばの生物多様性に“みんなで取り組む” ○生物多様性保全に取り組む市民団体の活動への事業者や市民の主体的参加を促し、市民活動の活発化を図ります。 ○生物多様性を意識した緑地等の把握を進め、自然共生サイト等への認定を推進・促進します。 ○研究・教育機関や市民団体等による重要地域モニタリングを継続するとともに、普及啓発につながる市民参加型モニタリングも実施します。 【主な重要地域における取組】 田園・里山エリアの主な重要地域における保全上の課題・リスク及び取組の概要を整理しました。 重要地域の名称 大曽根緑地環境保全地域 指定・認証状況等 緑地環境保全地域 保全上の課題・リスク (特になし) 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 茨城県自然環境保全条例の規定による自然環境保全のための規制<茨城県> 緑地環境保全地域の保全を図ること 樹林・草本管理の継続<鹿島神社> 緑地環境保全地域内の樹林・草本管理を適切に実施すること 備考 (「大曽根緑地環境保全地域」の保全すべき自然環境の特質) 本地域は、鹿島神社を中心としたヒノキ、スダジイ等の常緑樹林並びに神社周辺のクヌギ、エノキ等の落葉広葉樹林及びスギの植林から構成されている樹林地であり、この林床にはビナンカズラ、ヤツデ、シュンラン等が生育している。 また、オオムラサキ等の多くの昆虫類のほか、は虫類及び鳥類が生息する等良好な自然環境を形成している。 重要地域の名称 筑波山麓「すそみの田んぼ」と周辺谷津田 指定・認証状況等 生物多様性保全上重要な里地里山 保全上の課題・リスク (特になし) 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 筑波山麓谷津田再生事業 <NPO 法人つくば環境フォーラム> (谷津田管理/自然観察会 など) 黄金色に実った田んぼ、囲む雑木林、沢の清流など、たくさんの生きものがいる豊かな自然環境や自然と共にある文化を未来へ持続させること 備考 (「生物多様性保全上重要な里地里山」の選定理由) 筑波山麓に位置する谷津田であり、田んぼやため池、里山林、谷川などからなる農村風景が広がっている。環境保全型農業等による谷津田の保全・再生、周辺の里山林の整備により、良好な水田・湿地環境、水辺環境、森林環境が残されており、オオムラサキやホトケドジョウなど里地里山に特徴的な種が生息し、絶滅危惧種も多く確認されている。また、豊かな里地里山生態系のシンボルであるサシバも繁殖している。 重要地域の名称 せせらぎ公園、大池公園 指定・認証状況等 都市公園 保全上の課題・リスク ・侵略的外来種の侵入 ・生物多様性に配慮した緑地管理が求められることがある 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 樹林・草地・湿地等の管理継続 公園内の樹林や草地、湿地等の管理を適切に実施し、市民の憩いの場の提供や都市環境の改善に資すること 特定外来生物の防除の試行・実施 外来種に応じた適切な防除活動を実施し、在来種への影響を低減すること 重要地域の名称 桜川下流域、天王池 指定・認証状況等 (特になし) 保全上の課題・リスク 重要な生態系であるにも関わらず、注目されていないこと 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 市民参加型のモニタリングイベントを開催 モニタリングイベントを通じて、天王池や桜川流域に関心を持つ市民を増やすこと 重要地域の名称 おぐろくの森 指定・認証状況等 (特になし) 保全上の課題・リスク ナラ枯れ調査・大径木枯れ木対応 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 平地林・里山林の保全と整備 <つくばフォレストクラブ> 希少植物の保護管理と地域住民が安心して散策できる里山林を維持すること 重要地域の名称 茎崎こもれび六斗の森(キャンプ、バーベキュー等の自然体験施設) 指定・認証状況等 (特になし) 保全上の課題・リスク クビアカツヤカミキリの侵入 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 場内施設管理の継続 場内の施設管理を行う範囲内でクビアカツヤカミキリ伐倒駆除を行う クビアカツヤカミキリの被害を受けたサクラの伐倒駆除 場内の被害サクラについては可能な範囲内で伐倒駆除を行う 重要地域の名称 奥村組技術研究所など、事業所内の緑地 指定・認証状況等 (特になし) 保全上の課題・リスク 民間企業の事業所において、生物多様性に配慮した緑地創出や維持管理を推進すること 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 生物多様性に配慮した緑地・ビオトープの管理を継続<各事業所> 市域で生物多様性に配慮した緑地を増やし、生態系ネットワーク形成に寄与すること 【研究学園都市エリアにおける基本的方針】 研究学園都市エリアにおいて生物多様性の保全と持続可能な利用を推進するための基本的方針は次の通りです。 戦略 基本的方針 基本戦略1 つくばの生物多様性を“守りはぐくむ” ○平地林や湿地、希少種の生息地等の特に重要な生態系の把握に努め、その保全管理・回復を図ることで、生態系ネットワーク構築を進めます。 ○さくらの森歴史緑空間(金田台)や洞峰公園、松代公園などにおいて、市民団体と連携しながら自然環境の保全・管理を推進します。 ○住宅や事業所、公共施設等において、周囲の生物多様性に配慮した緑化を推進することで、生きものの移動経路や採餌・吸蜜等のスポットを創出します。 ○研究学園都市の建設段階から考慮されてきた緑豊かな街並みを維持するため、地区計画制度等を活用して研究・教育機関やその他民有地の緑地を維持していきます。また、緑地の維持管理において、草刈り頻度を工夫したり、外来種の防除を実施するなど、生物多様性への配慮を促進します。 ○都市公園や街路樹について、アダプト・ア・パーク等により市民と連携しながら、希少種の保全や外来種の防除を実施するなど、緑地や植物の維持管理や再整備において生物多様性に配慮した方法を採用・実施するように努めます。 ○外来生物による重要な生態系への影響を軽減するため、外来生物防除を強化していきます。 基本戦略2 つくばでは生物多様性が“当たり前”になる ○市民の生物多様性への理解増進及び行動変容を促進するため、自然観察会や講演会等を多数開催し、普及啓発に努めます。 ○特に、主な重要地域となっている研究・教育機関や事業者等と連携しながら、身近な自然の生きものを調査するイベントや自然観察会など環境学習の機会を増やしていきます。 ○市民が公園や緑地での里山管理活動等を体験できる機会を増やすなどにより、保全活動の主体となる人材の育成を図ります。 基本戦略3 つくばの生物多様性を“活用する” ○豊里ゆかりの森や高崎自然の森などの自然体験施設の管理・運営を適切に行い、自然体験型余暇活動を通じて、楽しみながら自然への理解を深める機会を増やします。 ○農業体験の場として農地を活用し、自然の恵み(生態系サービス等)や生物多様性への理解醸成を図ります。 ○生物多様性に関心のある市内事業者に向け、事業活動における生物多様性への配慮を促すための普及啓発及び支援を行い、事業者の生物多様性への負荷低減を図ります。 ○再生可能エネルギー施設が設置される際には、事業者に地域住民への周知及び理解醸成を促したり、生物多様性の観点から重要な地域を事業者へ伝達するなど、事業者と調整を図ります。 基本戦略4 つくばの生物多様性に“みんなで取り組む” ○生物多様性保全に取り組む市民団体の活動への事業者や市民の主体的参加を促し、市民活動の活発化を図ります。 ○生物多様性を意識した緑地等の把握を進め、自然共生サイト等への認定を推進・促進します。 ○研究・教育機関や市民団体等による重要地域モニタリングを継続するとともに、学校や都市公園などの緑地において普及啓発につながる市民参加型モニタリングも実施します。 【主な重要地域における取組】 研究学園都市エリアの主な重要地域における保全上の課題・リスク及び取組の概要を整理しました。 重要地域の名称 国立環境研究所や筑波大学、国立科学博物館筑波実験植物園、高エネルギー加速器研究機構などの研究・教育機関 指定・認証状況等 自然共生サイト(国立環境研究所) ふるさと文化財の森(高エネルギー加速器研究機構) 保全上の課題・リスク 各機関の構内緑地において生物多様性に配慮した緑地管理を実施していくことが必要 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 生物多様性保全に配慮した緑地等管理<国立環境研究所> ・生育する種に応じて区域ごとに異なる頻度で草刈りを実施し、適度に明るい林床を維持 ・開放水面と抽水植物群落の面積比率を維持するためガマ類の定期的な抜き取りを実施 研究所構内の緑地等について、生物多様性保全にも配慮した緑地等管理 生物多様性保全に配慮した緑地等管理 <筑波大学> 大学構内の緑地等について、生物多様性保全にも配慮した緑地等管理 生物多様性保全に配慮した緑地等管理及びつくば市内の植物の域外保全の実践 <国立科学博物館筑波実験植物園> 筑波実験植物園の緑地等について、生物多様性保全にも配慮した緑地等管理を行うとともに、つくば市産植物の域外保全を行い種の絶滅を回避すること 研究教育施設地区計画に基づく緑地の保全及び適切な維持管理 今後も、研究教育施設における豊かな緑地を維持・保全すること 重要な茅場の維持 <高エネルギー加速器研究機構> 構内に自生している茅場の維持を図ること 重要地域の名称 洞峰公園、二の宮公園、まつぼっくり公園 指定・認証状況等 都市公園 保全上の課題・リスク ・侵略的外来種の侵入 ・生物多様性保全が必要と判断される緑地・水辺等への新たな管理手法の導入 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 生物多様性に配慮した樹林地・草地・沼・湿地管理 有識者の意見を取り入れ、生物多様性保全が必要と判断されるエリアに対して、適切な管理手法を導入し、つくば市と市民団体が協力して、本地域の生物多様性保全活動を実施する 外来動植物の調査・防除の実施 外来種の侵入程度の調査を行い、在来種への影響を考慮し、生物多様性保全に必要な対策を実施する 生物多様性に関連した自然環境教育の拠点化 つくば市内外から多くの利用者が、生物多様性保全の意義やつくば市の生物多様性を認知するような観察会やイベントを行う 研究学園都市の生物多様性のモニタリング拠点とする 本戦略の「つくば市で大切にしたい生きもの」などを定期的にモニタリングする 生物多様性保全に関する市民ボランティア活動の場とする 気軽に市民が生物多様性保全活動や生物多様性調査活動に参加できる仕組みを導入する 重要地域の名称 赤塚公園、松代公園、仲島緑地公園、源流の森公園、つくば公園通り 指定・認証状況等 都市公園(一部) 保全上の課題・リスク ・侵略的外来種の侵入 ・生物多様性に配慮した緑地管理が求められることがある 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 樹林・草地・湿地等の管理継続 公園内の樹林や草地、湿地等の管理を適切に実施し、市民の憩いの場の提供や都市環境の改善に資すること 市民と連携した生物多様性に配慮した緑地管理(希少種に配慮した植栽管理、外来種の防除等) 可能な範囲で、市民と連携しながら生物多様性に配慮した都市公園等の緑地管理を実施することで、市民の公園等への愛着を高めること 特定外来生物の防除の試行・実施 外来種に応じた適切な防除活動を実施し、在来種への影響を低減すること 重要地域の名称 豊里ゆかりの森 指定・認証状況等 (特になし) 保全上の課題・リスク (特になし) 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 樹林・湿地等の管理継続 施設内の樹林・湿地等の管理を適切に実施すること 重要地域の名称 高崎自然の森 指定・認証状況等 (特になし) 保全上の課題・リスク ・外来カミキリムシなどの侵略的外来種の侵入 ・人の手を入れすぎない森林管理 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 樹林・草地・湿地等の管理継続 施設内の樹林や草地、湿地等の管理を適切に実施すること 森林ボランティアによる森林保全活動推進 市民団体による森林保全活動(間伐や下草刈り等)を実施し、森林管理の担い手を育成する 外来カミキリムシ対策の推進(侵入予防のための普及啓発及び防除) 施設内のサクラ等への外来カミキリムシによる被害を防止すること 里山体験事業(つくば里山たのしみ隊) 里山の平地林の価値や里山管理について伝える 重要地域の名称 さくらの森歴史緑空間 指定・認証状況等 (特になし) 保全上の課題・リスク ・ゴミのポイ捨て、不法投棄 ・開発による森林面積の減少 ・放置された森林 ・外来種問題 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 管理ゾーン区分に応じた緑地管理 オオタカや希少植物などに配慮した緑地管理を継続 自然観察会、動植物モニタリング、森林整備活動等<金田台の生態系を守る会> 金田台の魅力的な自然環境を保全し、次世代へ継承すること 重要地域の名称 葛城大規模緑地、島名・福田坪大規模緑地 指定・認証状況等 (特になし) 保全上の課題・リスク (特になし) 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 大規模緑地利活用の検討 <茨城県> 官民協働で自然環境を保全しながら、利活用することを検討する 重要地域の名称 安藤ハザマ技術研究所、応用地質株式会社つくばオフィス、戸田建設筑波技術研究所、つくばこどもの森保育園、佐藤工業株式会社技術センター SOU つくばのみどりなど、事業所内の緑地 指定・認証状況等 ・自然共生サイト(応用地質株式会社つくばオフィス、戸田建設筑波技術研究所、つくばこどもの森保育園) ・ABINC認証(安藤ハザマ技術研究所) ・SEGES認定サイト(戸田建設筑波技術研究所) ・JHEP認証(佐藤工業株式会社技術センター SOU つくばのみどり) 保全上の課題・リスク 民間企業の事業所において、生物多様性に配慮した緑地創出や維持管理を推進すること 保全上の課題・リスクを踏まえた取組 取組の概要 目的・達成目標 既に指定・認証されている生物多様性に配慮した緑地の管理を継続<各事業所> 市域で生物多様性に配慮した緑地を増やし、生態系ネットワーク形成に寄与すること 第 7 章 推進体制・進行管理 本戦略の推進体制及び進行管理の考え方について示します。 1.推進体制 本戦略の推進にあたっては、市だけでなく、市民や市民団体、事業者、研究・教育機関などが主体的に取組・活動を進めていくとともに、相互に連携・協力して生物多様性に関する活動を推進することが重要です。 市は、本戦略の施策・事業を円滑に推進するため、生物多様性保全の取組を推進するための連携促進やネットワーク構築、生物多様性情報の発信及び普及啓発を担い、コーディネート機能を有する「つくば市生物多様性センター(仮称)」を設置します。 あわせて、市内で生物多様性に関する活動に取り組む研究・教育機関や市民団体、事業者等から構成する「つくば市の生物多様性に関する活動協議会(仮称)」を設置します。活動協議会において生物多様性情報の共有を図るとともに、構成員が協働しながら、モニタリングや分析、保全活動、普及啓発活動などに主体となって取り組みます。 このような市内の推進体制を構築していくとともに、国や茨城県、近隣自治体との連携を強化しながら、本戦略を推進していきます。 【市の役割】 ・本戦略を推進すること ・戦略の進捗状況を点検・評価し、施策等を着実に実行していくこと ・生物多様性の保全・回復を積極的に進めること ・外来生物対策等を推進すること ・市有地の自然共生サイト等への認定を推進すること ・様々な分野で生物多様性の観点を取り入れた施策を推進すること ・つくば市における生物多様性に配慮した緑地やその管理に関する基本的な考え方や指針を示すこと ・市民が生物多様性を感じたり、認識したり、考える場を提供すること ・広報物の配布や講演会の開催などにより、生物多様性情報を市民へ発信すること ・生物多様性に配慮した暮らしや保全活動に関する市民の取組意欲を高めるための仕組みを検討・構築すること ・生物多様性の保全活動を推進する市民団体等の支援を行うこと ・事業者が生物多様性に配慮した事業活動を進めることを奨励すること ・生物多様性に関する調査を継続的に実施し、生物多様性の現状を把握すること ・様々な保全活動に取り組む主体が連携・協働する場を確保すること ・生物多様性の保全と持続可能な利用を推進するため、国、県、周辺市町村と連携すること ・30by30 アライアンスへの参加や生物多様性自治体ネットワークへの参画、ネイチャーポジティブ宣言の発出などを検討すること ・生物多様性に関する取組を持続可能なものとするため、資金調達方法を検討すること 【市民に期待されること】 ・身近な自然について関心を持ち、日々の暮らしとのつながりを認識し、生物多様性がもたらす自然の恵みについて理解すること ・日々の暮らしで生物多様性の保全につながる取組について一人ひとりが考え、行動に移していくこと ・自然環境や生きもの、生物多様性に実際にふれる機会をもつこと ・市や市民団体などが主催する自然環境調査や保全活動などに積極的に参加すること ・市が発信している生物多様性情報に関心をもち、学習すること ・生物多様性に配慮した商品を積極的に購入すること ・庭やベランダ等で、生物多様性に配慮した緑地や水辺を増やすこと ・アカミミガメやアメリカザリガニなどの外来生物を野外に放さないこと ・ペット販売店で販売されている動物あるいは園芸店等で販売されている植物を公園・緑地・河川・池等に放さないこと ・地元でとれる旬の農産物などを食べること ・自宅から出るごみや汚水を減らし、生物多様性への負荷を軽減すること ・土地を所有している場合には、生物多様性に配慮した管理を行ったり、生きものが好む緑地を保全・創出したりすること 【市民団体に期待されること】 ・生物多様性の保全・回復に関する取組を実施・継続すること ・市と協業して生物多様性の保全・回復を推進すること ・市民参加型の調査や保全活動、自然体験会などを主催すること ・活動地の自然共生サイト等への認定を推進すること ・市民向けに生物多様性に関する発信を行っていくこと ・活動地における生物多様性関連情報(モニタリング結果等)を市と共有すること ・市の生物多様性に関する取組に参加・協力すること ・つくば市の生物多様性に関する活動協議会(仮称)へ参画すること 【事業者に期待されること】 ・自社の事業活動の生物多様性への良い影響と悪い影響を把握し、事業活動が生物多様性に与える影響をできる限り小さくすること ・職員研修で生物多様性と事業活動の関連を説明すること ・サプライチェーン全体で生物多様性を意識し、仕入れる原料や資材、商品などについて生物多様性に配慮したものを優先すること ・事業所の敷地内で生きものが好む緑地を保全・創出し、生物多様性緑化を行うこと ・事業所内及び周辺において侵略的外来種の防除を積極的に行うこと ・事業活動や事業所緑地での生物多様性に配慮した取組について、積極的に情報発信すること ・事業所内の緑地を学びや教育の場として提供したり、自然体験会の場として提供したりすること ・事業所内の緑地を生息域外保全等の場とすること ・事業所内緑地の自然共生サイト・ABINC・SEGES・JHEP等への認定・認証を目指すこと ・生物多様性の保全につながる新しい技術の開発や普及に努めること ・専門的知識・技術などの観点で支援を行うこと ・業界内や地域で生物多様性に関するリーダーシップを発揮すること ・周辺の企業等へ生物多様性への配慮について働きかけ、生態系ネットワークの形成に貢献すること ・生物多様性保全活動を進める市民団体や事業者、市などと連携すること ・市の生物多様性に関する取組に参加・協力すること(モニタリング等) ・事業所における生物多様性関連情報(モニタリング結果等)を市と共有すること ・市や市民団体が主催する保全活動に参加・協力すること ・市が発信している生物多様性情報に関心をもつこと ・つくば市の生物多様性に関する活動協議会(仮称)へ参画すること 【研究・教育機関に期待されること】 ・敷地内で生きものが好む緑地を保全・創出し、生物多様性緑化を行い、敷地内及び周辺において侵略的外来種の防除を積極的に行うこと ・生物多様性に配慮した取組について、積極的に情報発信すること ・敷地内の緑地を学びや教育の場として提供したり、自然体験会の場として提供したりすること ・敷地内の緑地を生息域外保全や育苗の場とすること ・敷地内の緑地の自然共生サイト等への認定を目指すこと ・生物多様性保全活動を進める市民団体や事業者、市などと連携すること ・生物多様性の保全活動や自然体験に積極的に参加すること ・生物多様性保全活動に対して、専門的な立場から助言・指導を行うこと ・生物多様性の保全につながる新しい技術の開発や普及に努めること ・保全活動に取り組む人材や市の生物多様性に関する専門家を育成すること ・身近な自然や生きものに対する子どもや学生の興味・関心を高めること ・日々の教育の中で生物多様性の大切さを伝えること ・自然体験を取り入れた教育を行うこと ・市の生物多様性に関する調査や情報発信を行うこと ・つくば市の生物多様性に関する活動協議会(仮称)へ参画すること 2.進行管理の考え方 戦略の実効性を高め、施策等を着実に実行し、つくば市の生物多様性を守り育んでいくためには、施策等の進捗を毎年点検し、次年度の取組へとフィードバックさせていく仕組みが必要です。本戦略では、PDCAのサイクルを確立し、施策に紐づく事業や取組を改善していくことで、継続的に進行管理を行います。なお、「生物多様性つくば戦略推進委員会(仮称)」において事業・取組の進捗状況の点検・評価を行います。 本戦略の中間見直し及び改定時においては、各基本戦略の達成目標(目標値)の達成状況を踏まえながら行います。また、可能な項目については、目標値の達成状況を「つくば市環境白書」において毎年公表します。